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ぞうきんの絞り方、知っていますか? 実は深かった、学校の掃除の話

「学校で使う掃除用具は、家庭で使っているものとはまったく違うんです」

小学校における掃除の時間は、毎日約15分。1年間で、なんと約60時限分の授業に匹敵します。

しかし、学校にある掃除用具は、昔からほとんど変わっていません。家庭にはロボット掃除機が登場している時代だというのにーー。

「今の子どもたちは、学校で初めてホウキを使ったり、ぞうきんを絞ったりする子もいるんです」

そう話すのは、ダスキンお掃除教育研究所 所長の藤原玲子さん。2012年から学校教育支援活動として、全国の小学校で「キレイのタネまき教室」の出前授業を行っています。

一体、どんな授業をしているのでしょうか? 藤原さんに実演してもらいました。

正しくぞうきんを絞れますか?

まず、子どもたちが苦手なのがぞうきん絞りです。手が濡れるし、冬の寒いときなんかは嫌がりますよね。

だから掛け声をかけながら、リズムに合わせてぞうきんを絞るんです。そうすると「楽しい〜」って子どもたちはいうんですよ。

——え、掛け声に合わせてぞうきん絞りですか。 どうやって?

じゃあ、やってみますか。

「みんなぞうきん、今から洗ってみるよー。今から私がリズムをつけて、声を出しながら絞るので、みんなも私と同じように声を出して、絞って下さい! いいですかー? 」

——「はーい!」

「じゃあいくよー。ぞうきん持ってー。(水の入っているバケツの)中に入れますよ。『ちゃぽーん』」

「『振り洗ーい!』 これだけじゃ汚れは落ちないね。ぞうきんの両端を持ってゴシゴシこすって洗うよ」

「『こすり洗ーい!』 振り洗いとこすり洗いを合わせて、綺麗になるまで洗います」

「さあ綺麗になったよ。このまま絞ると、周りに水が飛び散っちゃうので、『ぞうきん持って、半分に折って。もう半分に折って、片方の手で持って、オッケー!』」

「水を落とします。ぞうきんを指ではさんで『パクッ! キュー』」

「半分に折ります。『パッタン』 下から持ってー」

——下から...!?

「よこしぼり」する子が多いんですけど、子どもの力じゃ絞れないんですよ。

子どもにぞうきんを持たせるときは、途中で一度ストップして持ち方を確認します。

——実践型の授業ですね。

「少しひじを曲げて、伸ばす時に内側にひねります。『せーの、ぎゅー。せーの、ぎゅー。最後に、ぎゅー!』」

「この絞り方を『たてしぼり』と言います。さん、はい! 『た・て・し・ぼ・り!』」

——すごい(目からウロコ)!

実際に水の入ったバケツを用意して、子どもたち全員が自分たちの掛け声で、ぞうきんを絞ります

掛け声でリズムをとりながら行うので、子どもたちは楽しくて「またやりたーい」と言いますね。

先生も、「おー」って言いながら目が丸くなってます(笑)。

今後はあれこれしてって言わなくても、「たてしぼり」の一言で、子どもたちは全部やれるようになります。楽しく、みんなの共通理解ができるんです。

先生もよく知らない、掃除の仕方

——ぞうきん絞りはその一例ですが、「出前授業」はどんな内容なのでしょうか。

「キレイのタネまき教室」として始めたのは2012年になります。

45分の授業で、前半は「どうして掃除をするのか」について、「快適」「長持ち」「健康」という3つのキーワードをもとに、子どもたちとコミュニケーションを取りながら伝えていきます。

後半は、掃除用具の使い方について、ホウキ、チリトリ、ぞうきんの正しい使い方を体験・実習していきます。全員が実際にホウキで掃いて、ぞうきんを絞って、最後にまとめの映像を見ます。

——掃除の授業、先生や子どもたちからはどんな感想がありますか。

先生は「目からウロコ」、子どもたちも「初めて聞いた!」みたいな感想が一番多いですね。

じつは先生たち自身も、掃除の仕方を教えてもらう機会がなかったりするので、私たちが子どもたちに「ぞうきんってこうやって絞るんだよ」とか「ホウキはこうやって持つんだよ」と説明していると、先生もメモを取りながら聞いていますね。

——先生も、掃除の仕方は習っていなかったりするんですね。

大学では教科の勉強が中心ですから、先生方の掃除の知識は、自分が小さかったときにどうやって掃除していたかだったり、初任の先生は、学年主任に聞いたりして指導されているようです。

学校の掃除用具は、私が小学生だったときから何ら変わっていません。

先生方からしたら、昔ながらの掃除用具を使いながら、現代の子どもたちに掃除の仕方を教えなきゃいけない難しさはあると思います。

子どもと一緒に「掃除する理由」から考える

——教員向けに研修をしたことがきっかけで、子どもたちにも授業をするようになったとか。

出前授業のカリキュラムを作るにあたって、先生方に「ダスキンに何を望んでいますか」とお聞きしました。すると、「掃除をする意義」と「掃除用具の使い方」がトップ2だったんです。

先生方も、掃除をするのが大切だっていうのはわかるけど、いざ子どもたちに聞かれると、どう答えたらいいのかわからなかったんですね。

——「なぜ掃除をするのか」は深い問いですね。ダスキンはどんな風に教えているのでしょうか。

「掃除はどんなときにするの?」「汚れたとき?」「そうだね。汚れたときに掃除するんだよね」と、子どもたちとやりとりしながら授業を進めていきます。

「ホコリっていうのはね、空気中にフワフワ浮いてるんだけど、空気中には水と油があって、ホコリに水と油が合体すると、汚れになっちゃうんだよ」

「学校では毎日掃除をするから、ホウキとかチリトリとかぞうきんでも(汚れが)落ちるんだよ。でも、掃除しなかったらシミになって、素材に染み込んじゃうと、プロでも落とすのが大変になっちゃうんだ」

「だからみんながやってる学校の掃除って、すごく大切なんだよ」

そんなふうにお話するんですね。

「みんなが掃除しなかったら、どんなふうになっちゃうかなあ?」って聞くと「汚くなるー!」と答えます。「ちゃんと掃除してたら、みんなの教室はどうなるの?」って聞くと「きれいになるー!」「気持ちいいー!」と。

「だからお掃除する意味は、みんなが気持ちいい教室でお勉強したり、給食を食べたりすること。これを『か・い・て・き(快適)』ていう言葉で覚えましょう」と。

——なるほど、快適のため...。

健康は、一番イメージがつきやすいですね。

「ホコリの中には、ダニとか、バイキンとか花粉とか、いっぱいあるんだよ。みんなが元気なときは大丈夫なんだけど、たくさん吸い込んじゃうと、ゴホッゴホッって咳が出ちゃうかもしれない」と。

「だから、お掃除する最後の意味は、みんなが元気に過ごすための『け・ん・こ・う(健康)』っていう言葉で覚えましょう」。すると、自分たちの話として覚えます。

——掃除は、深いですね......。藤原さんのレクチャーを受けて授業のおもしろさがよくわかりましたけど、他のスタッフの方も同じレベルでお話できるんですか?

弊社の社内研修の中でも、ハードルが高い研修だと思います。

サポーター制度というのが社内にあって、この活動に賛同してくださる(ダスキン)加盟店は研修を受けます。座学の研修を受けたあと、OKになるまで、何度でも実技の研修を受けますね。

——学校教育支援活動について研修制度があるんですね。

サポーターと、アシスタントマスターと、学校掃除マスターという資格があります。

アシスタントマスターと学校掃除マスターは本部社員です。出前授業や教員セミナーを実施します。

サポーターは出前授業ができます。サポーターは9割以上が加盟店さんですね。

何か地域に恩返ししたいと思っておられる加盟店さんが、地元の小学校に行って、教えるのは非常に意味があると思います。この活動は加盟店さんが支えているといっていいと思います。

掃除の時間は「たかが15分、されど15分」

——教育支援の輪は、どうやって広がっていったのでしょうか。

(先生向けの)教員セミナーと(子どもたち向けの)出前授業で、学校教育支援活動は広まりました。

学校掃除は「たかが15分、されど15分」。教員セミナーはそこから始めるんですが、ガーンと頭を殴られるような話なのだそうです。

掃除の時間は1日15分、年間で約3000分もあるんです。3000分って小学校は45分授業ですから60時限くらいありますよね。道徳でも35時限、家庭科で55〜60時限です。

ひとつの教科に匹敵するくらいの時間を、子どもたちは掃除の時間に費やしているんです。

「たかが15分、されど15分。この時間をただ部屋をキレイにするためだけではなくて、子どもたちの力を伸ばす時間として費やしてみませんか」とお話しすると、先生方の背筋が伸びるんです。

セミナー終了時には多くの先生方が、掃除の時間について、協調性、責任感、コミュニケーション能力.....などいろいろな力を引き出す可能性を持った時間なんだとおっしゃいます。

——2020年度には、文部科学省の「令和元年青少年の体験活動推進企業表彰」で審査委員会優秀賞受賞されました。

もちろん賞を狙ってやってきたわけではないですが、やり続けてきたことが評価いただけた、ということかなと思っています。

「お掃除業」から「生活調律業」へ

——この学校教育支援活動の取り組みは、2030年に向けて世界が合意した「持続可能な開発目標」SDGsの視点ではどう捉えているのか、広報の梅村理恵子さんにもおうかがいします。

梅村:SDGsだから、ということもありますが、社会の人たちのお役に立ったり、何か助けになるようなことを事業を通して行っていきたいと思っています。

学校教育支援活動に関しては、(ゴール11の)「住みよいまちづくり」にあてはまります。お掃除の大切さを教えることによって、地域の人や子どもたちの生活が豊かになっています。

この活動を通じて人の成長にも役立っているという点においては、(ゴール4の「質の高い教育をみんなに」につながる)人材づくりにもなると考えています。

——掃除だけでなく、「くらしのリズムを整える」多角的な事業を通じて、地球や環境に良い取り組みを続けています。

梅村:もともとダスキンのモップはレンタルなので、エコな取り組みでもあります。

働く世代を助ける家事代行サービスもありますし、シニア向けのサービスも展開してます。

お掃除だけでなく、お客様の生活そのものに携わっていきたいという思いがあります。ドリンクや化粧品を届けるサービスもありますし、ミスタードーナツもあります。

社用車もハイブリッド車など排気ガスが出にくい車にどんどん入れ替えています。洗濯に使う水も、綺麗な状態にして川に流したり再利用したりしています。

——最後に、ダスキンならではの「知っておくとラクになる掃除の裏技」があれば教えて欲しいのですが......。

梅村:よく聞かれるんですけど、大体「ないです」ってお答えするんです。

お掃除は「汚さない」が一番なんですよね。汚れを溜めない。

“ついでおそうじ”って言ってるんですけど、洗面所を使ったときに、クロスを近くに置いておいて、ささっと拭くだけ。洗剤をつけなくても、それだけでも水垢がつきにくくなります。

一日一回やるだけで、断然汚れの溜まり具合は変わってきますね。日常のなかのリズムにしていくといいんじゃないでしょうか。