お金も発言力もある堀江貴文が、クラウドファンディングに挑戦するシンプルな理由

    あのホリエモンが?

    年間5万人。

    これは、日本国内で胃がんによって命を落とす人の数。胃がんは日本人には特に多いと言われており、がん死亡数では肺、大腸に続いて3位。

    がんの多くは「生活習慣病」とされ、年齢を重ねるほどにリスクが高くなると言われている。抗がん剤などは開発されども、特効薬はまだない。この病から逃れることはできないのだろうか。

    そんなことはない」ときっぱりと言うのが、堀江貴文さんだ。現在、胃がん撲滅プロジェクトとしてクラウドファンディング(※)に挑戦している。

    あのホリエモンが? 胃がん? クラウドファンディング? それぞれ、文脈が異なる単語の羅列に首をかしげるかもしれない。堀江さんは何をもってプロジェクトを立ち上げたのか。

    「自分もそうだし、仲のいい人が”予防できる病”で死んでしまうって、アホらしい」

    ――なぜ、堀江さんが胃がん予防のクラウドファンディングをすることになったのでしょうか?

    通院している歯医者がきっかけで予防医学に興味を持ったのがはじまりだと思います。すごくいい歯科医なんですけど、話が長い(笑)。治療は5分、そのあと50分くらい話すんですよ。その中で、歯周病は予防できる病気だっていうレクチャーをずっと受けてて。

    考えてみれば、ITに素材技術、スマートフォン革命。技術革新がいろんなところで起きて、人類は非連続的な進化を遂げている。その中で、これまで治療できなかった病気が治せるようになるかもしれない。「医者でない僕でもできることって何かな?」と考えたときに、医療ビシネスだ、と。

    調べると、世の中は病気になった後の対処の方に莫大なお金が使われていることがわかったんです。例えば、がん保険は発症した後のもの。薬、治療費、入院費……全部そう。そもそもがんにならなければ、このお金、かからないんです。

    ――がんも防げると。

    そうそう。がんって感染症だったりするんですよ。例えば、肺がんはアスベストやタールが原因だと言われているから、摂取しないようにすればいい。タバコを吸わなければいいけど、我慢できない人のために、電子タバコを普及させる、とかね。

    ――胃がんに興味を持たれたきっかけは何だったんですか。

    ある日流れてきたニュースで、「胃がんの99%はピロリ菌が原因で、除菌すれば発症を3~4割減らせる可能性がある」ってことを知って。その後に、この研究をしている国立国際医療研究センター理事の上村直実先生のところに取材に行ったんです。

    詳しく話を聞いてわかったのは、簡単な検診で予防できること。100%ではないけれど、可能性を減らせる。胃がんで亡くなる方は年間5万人。これをちゃんとやれば救える命もあるのに。アホらしくないですか?

    自分の周りにそんな話をしてみたら賛同してくれる人が多くて、予防医療普及委員会っていう組織を作ったんです。名前は少し堅いんですけど(笑)。

    「忙しい」は怠慢

    ――堀江さんは発信力もお金も持っているのに、なぜ、クラウドファンディングに挑戦しているんですか?

    「病気は予防できるんですよ」と言っても「なるほど」止まりのことってすごく多い。それでみんな「忙しい」を言い訳に健康診断を受けない。怠慢だと思う。僕だって時間作っているもん。

    多分そういう人は、想像力が欠如しているので、身近な人を亡くしたり、大病を患ったりしないと行動しない。そのくせがん保険とかに入るんですよね。わかんないなぁって。だから、クラウドファンディングで検査キットを届ければ、実際動くでしょ? 言っても動かないから、やってもらえばいいかなって。

    ――反響はどうでしょう。

    おかげさまで、という感じですね。一方で、反論も寄せられるんですよ。

    ――どんな人たちからですか?

    主に、エビデンスを重視する人たちだね。胃がんの原因だとされるピロリ菌が発見されたのは1984年。30数年しか経っていないから統計データが不十分だと。一方で、体内にあるピロリ菌を除去することで、副作用や悪影響が起きるかもしれない、という理屈もある。

    60歳以上の人だと、約60~70%がピロリ菌に感染してると言われています。小さいときに感染すると、ずっとピロリ菌によって胃を傷つけられてるってことになる。

    悠長なこと言ってられないんですよ。統計は確かに大事だけれど、救える命を目の前に何をやっているんだって。実際、WHOも推奨しています。「リスクが低いなら、まず動きましょうよ」っていうのが僕の意見です。

    ほとんどの人って、今起きてる現象に対して「なぜそれが起きたのか」を考えない。しょうがないって思っちゃうのかな。胃がんもそうですし、肝臓がんだって認知症だって絶対に何か原因がある。それをないものとして、実際に病気になったら悲観するって絶対におかしい。防げる手段があるのだから、思考停止にならないでって思う。だから今こうやって動いているんです。

    「ぼくは幸せ。周りが幸せだともっといい」

    ――目指すべきゴールは、どこになるのでしょうか。

    このプロジェクトで言うと、胃がんの撲滅。それで、病気はちゃんと予防できるんだってことを体感する人が増えて欲しい。

    僕は医療ビシネスをやろうと思っているので、例えば一度ユーザーになってもらえたら、その人にマッチする検査とかを紹介できるようになるかもしれない。そうやって、みんながアクションを起こして、長生きできる世の中ができたらなって思ってます。

    ――なぜ、そのような発想に?

    ぼくは基本的に自分は幸せなんですけど、周りが幸せだともっといい。長く生きてると、悲しいこともたくさんあるけど楽しいこともたくさんあります。楽しいことの可能性を捨てちゃうのってもったいないじゃないですか。


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    ※堀江さんがチャレンジする胃ガン予防のクラウドファンディングはこちら

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