ドラマ「 #カルテット 」手がける"言葉の魔術師"坂元裕二のセリフの魅力

    松たか子、満島ひかり、高橋一生、松田龍平の豪華出演陣も話題

    松たか子、満島ひかり、高橋一生、松田龍平が出演するTBSドラマ「カルテット」が本日1月17日からスタートする。実力派俳優陣に注目が集まるが、ドラマファンは4人が奏でる”曲”の書き手、脚本家・坂元裕二に胸を躍らせている。

    映画「そして父になる」「誰も知らない」の是枝裕和監督をして「尊敬する現代の脚本家のひとり」と言わしめる坂元は、人間ドラマの名手として知られる。

    23歳の若さで脚本を手がけた「東京ラブストーリー」以来、日本のドラマの第一線で活躍。近年では、犯罪被害者、加害者の家族たちの関係を描いた「それでも、生きてゆく」(2011)、過酷な状況で生きるシングルマザーを描いた「Woman」(2013)と社会問題を題材にしたオリジナル作品を手がけている。

    昨年脚本を担当した月9ドラマ「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」でも介護現場の過酷さや、社会格差などの問題を作中に内在させた。

    坂元の脚本の魅力は、言葉が今を生きていることだ。

    「結婚だって、離婚だって、どちらも幸せになるためにするもんじゃないですか?」(最高の離婚)

    「彼らはよく言います。女の嫌だはいいよの裏返しだ。そのデータ見せてもらえますかっていう。ニュースソースどこですかっていう」(問題のあるレストラン)

    「恋人には2種類あるんだよ。好きで付き合ってる人たちと、別れ方がわかんなくて付き合ってる人たち」(いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう)

    登場人物の心に突き刺さる言葉は、すぐ横で誰かが発してもおかしくないリアリティーを持つ。と同時に、ひどく詩的で現実離れしている。

    高橋一生はドラマの会見で、坂元の脚本について「口語のように聞こえるけれど、口語では実はない、特殊な言葉使い。余白の部分をとても大事にしている」とその魅力を語った。

    坂元は近年、社会問題など重めの作品を手がけていると書いたが、「カルテット」は甘くてほろ苦い大人のラブ・サスペンス"と銘打たれており、間口がより広い作品だ。

    「それでも——」「Woman」と坂元作品で主演を務めた満島は、今作について「重くならない。ちょと下まで落ちようとすると、誰かがふっと風を吹かせてあげるというか。風は吹いているようなドラマだと思います」と違いを語る。

    作品は冬の軽井沢を舞台に、偶然、別荘で暮らすことのなった4人の男女の物語。

    弦楽四重奏を組む4人だが、満島が演じる世吹すずめは、基本的に寝て過ごすことが多い、マイペースなキャラ。松が演じる巻真紀(まきまき)は極端なネガティブ思考、高橋演じる家森論高は妙に理屈っぽかったりと、登場人物は変わり者ばかりでコミカル。誰もが身構えずに見られる作りだ。

    さらにドラマはサスペンス要素も含む。

    「何にもないように見えた場所が伏線になっていたりするので、坂元さんの会話の生々しさもあいまって寓話的。不思議な感じになっています」(高橋一生)

    坂元の脚本を、役者陣も見事に"奏でて"いく。

    「撮影に入る前は考えながら入ったんですけど、だんだん考えることが必要じゃなく、自由になっていくというか、ここにいる皆さん(4人の役者陣)が役なのか本人かわからなくなる。それが心地いい。坂元さんの罠かもしれないと思いながら、ドキドキしています」(松田龍平)

    プロデューサーの佐野亜裕美にとっても「カルテット」は坂元とともに4年をかけて作り上げてきたオリジナル作。

    「夢も人生も恋も行き詰まった男女が紡ぐ、愛すべき日常を丁寧に描いています。100人いたら100通り。何度見てもその度に面白いと感じる部分が変わる作品」と、まずは見てほしいと語った。

    同じ放送枠で昨年放送された「逃げるは恥だが役に立つ」(逃げ恥)のような、人の目を引く派手さはないが、出来栄えには自信を見せる。

    2016年は「真田丸」「逃げ恥」などドラマ再評価の年といえた。

    あけて2017年はどうなるのか。「カルテット」の評価は今年の行方を占う指針となりそうだ。