33年間に121人が死亡 学校柔道でまた悲劇

    専門家は行政の公表の遅さも問題視

    中学・高校の部活や授業で実施される柔道で、1983年以降、33年間で121人が死亡している。

    この数字は、学校でのスポーツ事故を研究する名古屋大大学院の内田良准教授(教育社会学)の調査によるものだ。その学校柔道で、再び痛ましい事故が起こった。

    群馬県館林市の中学生が柔道練習中に頭を打ち、重体に

    群馬県館林市の市立中学校で5月31日、柔道部の練習中に3年生の男子部員(14)が同級生に投げられ頭を打ち、急性硬膜下血腫で意識不明の重体になっていたと7月20日、朝日新聞が報じている

    男子部員は事前に相手に知らせて技を掛け合う練習中、大内刈りから大外刈りの連続技を受け、畳で頭を打った。当時、柔道経験のある副顧問が指導していた。

    ともに中学1年から柔道をはじめた2人だが、男子部員は約160センチ、48キロ。投げた相手部員は約175センチ、117キロと体重差は2・4倍だ。当時、部活動に参加した部員は5人。少人数での練習が、大きな体格差を生み、悲劇を呼んだ。

    昨年5月22日にも福岡の中学1年の女子生徒が今回の事故と同じく、体格差のある相手に大外刈りをかけられ急性硬膜下血腫で死亡している。教訓は生かされなかった。

    大外刈り、そして体格差が生んだ今回の事故

    全日本柔道連盟(全柔連)の調査では2003年〜2014年の間、死亡ないし後遺症を残した事故が最も多かったのは、大外刈りだったとの結果が出ている。

    内田准教授は大外刈りもリスク要因の一つとしながらも、今回の事故では体格差により大きな原因があると指摘。

    「体格差による事故の事例はこれまでも数多くあり、指導者に投げられて死亡したケースもあります」とBuzzFeedの取材に話した。

    全柔連が発行する「柔道の安全指導」(2015年第四版)には体力や技能レベルの差がある場合には指導者は注意が必要とあるものの、体格差に関する記述はない。

    遅れた館林市の柔道事故の公表

    事故があった館林市では20日の報道があるまで事故を公表しなかった。市の教育委員学校教育課はBuzzFeedに対し「被害生徒や事故を起こした生徒、保護者の意向により公表は控えた」と話す。

    事故の情報に関しては7月1日、地区の校長会で注意喚起があったが、事故の詳しい内容についての説明はなかった。

    事故が報道された翌21日、市教委では柔道の授業や部活動において体重差への配慮、体育の授業では大外刈りはせず、部活動でも極力行わないよう各学校に通知を送った。

    内田准教授は通知の遅れや、全国ニュースになったことで事故を公表する行政側の体質も問題視する。

    「自治体がいち早く事実を公表することで、専門家に情報が集約。次の事故を防ぐことにつながる。公表することが地区の子供たちはもちろん、日本の子供を守ることになると考えてほしい」

    指導者だけでなく、周辺の大人たちにも適切な対応が求められている。