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高齢化が支えたPCデポ 社員が語る現場無視の実態、高額契約の背景

騒動をきっかけに改善を願う人たちもいる

高齢の父親が本人もよくわからないままに高額なパソコンのサポートサービスを契約しており、解約を申し出たら、20万円請求された。Twitterでの告発から問題が発覚したパソコンショップ「PC DEPOT(以下PCデポ)」。

高齢者も詳しくない人も、誰もがパソコンを使う時代。サポートサービスは便利な存在だ。急激な成長の影で何が起こっていたのか。BuzzFeedは、複数の情報提供を受けた上で、現役社員の一人に直接取材した。

Aさんと会ったのは平日午後10時。「普段より少し早くあがれました」と仕事終わりに取材を受けてくれた。AさんがPCデポの正社員であることは、社員しか持ち得ない資料などで確認した。

Aさんは取材に応じてくれた理由を、こう語った。

「以前から会社に不信感を抱いていました。問題提起はしていましたが、改善されず、これを機会に会社が変われればと思って」

ネットで批判が起きたのは、ケンヂさん(@kenzysince1972)というTwitterユーザーの投稿がきっかけだ。

80歳を超える認知症の父親が、合わせて月額1万5千円弱のサポート代を含む契約を店と結んでいた。それほどパソコンを使わない個人が結ぶ契約としては高額だ。

結ばれた契約のなかには、持っているパソコンは1台だけなのに10台まで対応の割高なサポート契約や、一度も使った形跡がないiPadレンタル契約など、必要なさそうなものも含まれていた。

気づいた息子のケンジさんが、解約を申し込んだところ、解約金20万円を請求される。

どうして、こんな契約が結ばれたのか。なぜこんなに解約金が高いのか。

「解約金の20万円は契約通りです。内訳は、メインプラン+光+雑誌+VOD+iPadの残債。ここから端末返却などで減額されます」

Aさんは、そう説明した上で「急な値上げや、改悪とも思われるプランの変更は、以前から社内で起こっていました」と指摘する。

ネットでは「高齢者を狙って高額契約を結ぶ手口があったのではないか」などと炎上した。

Aさん自身は、見聞きしたことはないという。全社をあげて組織的に高齢者を狙うということではないようだ。

同社は、特定地域に出店を集中させてその地域内でのシェアを拡大する「ドミナント戦略」を主にしている。しかし、問題になった幕張店は、地域に1店舗しかなく、担当するエリアが広い。その分、本社からの達成予算も高いと見られる。

Aさんはそのような背景が「何としても売り上げを」という意識に結びついたのではないか、と指摘する。

サポートサービスへの急激な業態変化

PCデポの店舗は、大きくわけて2つある。

物販を中心とする「PC DEPOT(通称:青デポ)」と、サービス売りを主力にする「ピーシーデポスマートライフ」だ。

同社公式ホームページにある「アナリストレポート(2016年3月1日付け)」には、以下のようにある。

当社は、PC(パソコン)販売の専門店という形態を進化させ、商品とサービスを組み合わせたインターネットデバイスのサービスストアにビジネスモデルを転換した。プレミアムサービスを軸に、PCやスマートフォン、新しいIoT商品やサービスを購入したユーザーに一定の月額使用料を支払ってもらう仕組みが最大の収益源に育っている。SLP店は既存店の改装と新規出店で、2014年3月期の4店、2015年3月期15店に対して、2016年3月期25店、2017年3月期40店と順調に拡大してこよう。(原文ママ)

「物販が下火になり、サービス売りに注力するようになった。青デポはサービスも売っていますが、縮小傾向です。物が売れなくなったら、サービスに力を入れていく。会社として生き残るためには、当然の選択かと」とAさんは語る。

PC機器販売の会社から、ITが苦手な中高年層を中心とした会員制のサポートサービスへ。日経は「高齢化社会のニーズに合う安定収入を稼ぐ成長ビジネスとして、投資家は群がった」と指摘する

この業態転換は大成功した。PCデポの株価はアベノミクスが始まった2012年秋から、問題発覚の直前につけた高値まで10倍以上に上昇していた。「同期間の値上がり率では東証1部で5本指に入るスター銘柄」(日経)だったという。

中高年層へのサポートサービスが大成功するなかで、幕張インター店のトラブルは発生した。

Aさんは、今回の問題の背景として、業態変化についてだけでなく、本社社員の意識の問題を指摘する。現場からの声が生かされないという問題だ。

年2回、本社へ要望を伝える機会がある。しかし、スタッフが訴え、それに本社側が返答するだけで終わり。要望が生かされることは少ないという。

「いきなりプランが変わり、『明日からやります!』と急に通知が来ることも。覚えきれず、お客様に説明がうまくできなくて、問題になったこともあります。現場を見れていないのが、いまの本社です。本社が変わらないと再び、同じような誤ちは繰り返すことになると思います」

今回の問題が炎上した日も、社内では本社の対応、初動の遅さへの不満の声が渦巻いていたという。

現場に無理を押し付ける事例として、ずさんな契約管理についても触れた。

「契約を結ぶ際、携帯ショップなどではiPadに記入してデータ管理が当たり前。しかし、弊社は紙での管理です。契約書は10年保管で、2〜3カ月経てば、倉庫に保管されます。『◯年◯月分』のように紐で縛って送るのです」

「お客様が来店した際、解約手続きなどで、契約書が必要になるのですが、倉庫にあるのですぐに出てこない。2〜3年も経てば、お客様は失くしているだろうし、存在自体を忘れています」

「保管した契約書を取り寄せるには、ダンボールを送り返してもらわないといけません。それには数週間かかります。なにせこれまでの契約書から探さないといけないわけですから。それでトラブルになったケースも見てきました」

今回の騒動でも、ケンジさんは契約内容だけでなく、解約手続きのやり方も批判した。このような契約管理では現場が混乱することは想像がつく。

現場からは、デジタル管理を強化を求める声が上がっていたが、「システム開発に金が掛かる」となかなか進展しなかったという。

BuzzFeedには、アルバイトとして勤務する人や、元従業員と思われる人物からのタレコミが相次いだ。Aさんの証言は、それらのタレコミを裏付ける。

「Twitterで出回っている内容には、偽りもあります。でも、警察経由で、殺害予告が来ているのは本当です。『パワハラがあった』というのも、思い当たる人物はいます」

最後に、Aさんはこう強調した。

「私は、お客様のため。また、今後入社してくる人のためになれればと思って、証言しました。今回のようなことが起こってしまったことは、事実ですが、PCデポ全部が悪いわけではない。良いスタッフだってたくさんいます。これから、どう改善していくか。なにかこの記事で変わればと思います」

日本では今後、高齢化とデジタル化がさらに進むのは間違いない。ITに強くない人へのサポートサービスは、世の中のために不可欠なものだ。だから、成長産業と期待され、株価は急上昇した。

問題発生後、PCデポの株価はほぼ半値となった。だが、現場にはAさんのように今回の一件をきっかけに、問題を改善したいと願っている社員たちがいる。

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朝日新聞によると、消費者庁の岡村和美長官は8月24日の記者会見でPCデポについて、「消費者庁としては引き続き、(消費生活センターなどに寄せられる)相談の状況を注視してまいりたい」と述べた。

消費者庁としての対応については、「パソコンのサポート契約、パソコンに付随する契約については、今回のことに限らないが、勧められて契約をしたが、後日解約を申し出たところ、高額な契約解除料を請求されたなどの消費生活相談が寄せられていることは事実」と話した。しかし、同社の広告を調査するかどうかについては、「こちらから申し上げることはない」と明言を避けた。

こうした相談が、年間何件ぐらいあるのか。また、相談は増えているのか、減っているのか。消費者庁消費者生活課は、BuzzFeedの取材に対し、件数や増減は把握できていない、全国の相談データが大量にあるのですぐには分析できない、と答える。

今回の件を受け、PCデポは、75 歳以上の加入者に対し、加入期間に関係なくコース変更。および契約の解除を無償で対応するなどの対応を発表した。

これをもとに、BuzzFeedが追加で回答を依頼したものには、返答はない。


Takumi Harimayaに連絡する メールアドレス:Takumi.Harimaya@buzzfeed.com.

バズフィード・ジャパン ニュース記者

Kazuki Watanabeに連絡する メールアドレス:Kazuki.Watanabe@buzzfeed.com.

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