吹奏楽コンクールを捨て、甲子園の応援に 秀岳館高校・吹奏楽部員の思い

    これは美談なのか。

    夏の甲子園に出場している熊本県の秀岳館高校は18日、茨城の常総学院を破り、ベスト4進出を決めた。

    しかし、ネット上では同校の吹奏楽部が応援に向かったことを巡り、論争が起きている。

    なにが問題になっているのか

    事の発端は、西日本新聞が16日に報じた『秀岳館吹奏楽部「野球部と日本一に」 大会断念し甲子園へ』という記事だ。コンクールより甲子園を優先する決断を下した経緯について、こう書かれている。

    コンテストか、甲子園か。7月下旬の職員会議は2日間にわたった。多くの教員が「コンテストに出るべきだ」と主張した。吹奏楽部の3年生6人も話し合いを重ねた。「コンテストに出たい」と涙を流す部員もいた。

    多くの教員も、一部の部員も「コンテストに出たい」と主張していたが、結果的に、甲子園に行くことになった。「誰が甲子園行きを決断したのか」。同記事では、明確な記述はない。

    そしてこの記事は、『(吹奏楽部は)頂点を目指すナインとともに「熱い夏」を過ごすつもりだ』と結び、甲子園行きの決断を好意的に伝えている。

    美談なのか? ネットで疑問の声

    この記事に、ネットユーザーの批判が集まった。

    「美談ぽくしてるけど、甲子園や野球部のために吹奏楽やってるんじゃないんだから、コンクール優先させてやれよ」

    「え? これって美談なの? 酷い話なんじゃないの? 吹奏楽部なんだから吹奏楽のコンテスト出たかったんじゃないの?」

    このほか、「吹奏楽部がかわいそう」「文化部より運動部が優先されるのは、おかしい」といった疑問の声も挙がっている。

    さらに、卒業生と思われる人物から「これは学校側の圧力」とのツイートが投稿された。17日夜の出来事だ。このツイートは、新聞記事では伝えられていない、甲子園行きに至る議論の経緯に触れている。

    校長は大会に出させるのが当たり前だと怒り散らしたそうですが、その他の教員が吹奏楽部に「大会に出たかったなんて一言も言うな。甲子園に応援に行きたいって言え」って圧をかけたそうです。

    ネットユーザーの批判を受け、今はこのアカウントは削除されている。

    現役部員の胸中

    匿名の人物が言う、「大会に出たかったなんて一言も言うな。甲子園に応援に行きたいって言え」という教員の発言は、本当にあったのか。

    BuzzFeedは、同校吹奏楽部に所属する1年生の女子生徒Aさん(仮名)に聞いた。常総学院との試合を終え、宿に向かう途中、取材に応えてくれた。

    ーまず、西日本新聞の記事で食い違っている点、間違っている点はありますか。

    いえ、私はないと思います。

    ー卒業生と思われる人物が「学校側の圧力」と指摘しています。

    卒業生の方も、がんばって金賞を獲得して3年連続南九州大会に出場されていて、後輩に継いでほしいという願いがあったのではないでしょうか。

    南九州大会も目標でした。しかし、甲子園のスタンドに立ち、みんなと一丸になって応援する目標もありました。

    南九州大会に行けないことは悔しいです。しかし、もう一つの目標を叶えることはできました。そして甲子園で野球部が、がんばってくれています。

    自分たちが南九州大会に行っていれば、応援はできませんでした。甲子園に行く判断をしていただいたことで、準決勝まで進めたと思います。

    教員から、「大会に出たかったなんて言うな。甲子園に応援に行きたいって言え」などの発言はありましたか。

    ありました。しかし、それは自分たちのことも、野球部のことも考えてのことだと思います。

    コンクールは一人が欠けてしまえば、演奏はできない。でも、野球応援も吹奏楽がいなければできません。それを考えたら、この2つは比べたらダメだと思います。どっちが重要かなんてありません。

    「こっちをがんばれ」と言われたら、その練習をがんばるのみです。

    ーコンクールに出られないと決まったとき、部員はどのような様子でしたか。

    3年生のほとんどが泣いていました。最後の大会に出場できない悔いは、もちろんあると思います。2年生も3年生と一緒に出れる大会が最後だったので、涙を流していました。

    ***

    「大会に出たかったなんて言うな」という教員の発言が、実際にあったという証言を得られた。

    20日、秀岳館高校は準決勝に挑む。