「1円も払ってないのに服が届く」 ZOZOTOWN「ツケ払い」滞納する若者たち

    通販サイト「ゾゾタウン」のサービス「ツケ払い」で、代金を払えない若者が相次ぎ問題となっている。商品の支払いを最長2カ月遅らせる「後払い」が可能なサービスだ。ツケの支払いで「やばい瀕死」「払えない」などという声が増加している。トラブルも多く、「消費者金融同様」「悪質」などと言われるこのサービス。払えなかったらどうなるのか? 実際に滞納に陥った二人に話を聞いた。

    人気ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」が昨年11月に始めたサービス「ツケ払い」で、代金を滞納する若者が相次ぎ問題となっている。BuzzFeed Newsは実際に滞納に陥った二人にその実態を聞いた。


    ZOZOTOWNは通常、クレジットカードや代引き交換、コンビニ決済を用いるが、「ツケ払い」では購入商品の支払いを最長2カ月遅らせる「ツケ」が可能で、入金前に商品が手元に届く。

    年齢制限や親の同意の有無を確認するシステムはないために、クレジットカードを持たない若い世代に一気に広まった。その結果、「ツケ」の支払いで「瀕死」「破産しそう」などの声がSNSで溢れ、話題になった

    「消費者金融同様」「風俗への入り口」などの声も出ている。

    なぜ彼らは滞納してしまうのか。そこに潜む問題点とは。BuzzFeed Newsは2人の「ツケ払い」滞納経験者に話を聞いた。

    上限5万円なら、学生でも普通に支払える。でも、2カ月あると思うと、他のことにお金を使っちゃう。

    1人目は19歳の男性。服飾系の専門学校生のAさん。

    スタッズが施されたジャケットに柄シャツを合わせた、かなり派手な装いだった。聞けば、ジャケットは学校の課題で作ったものだという。

    東京のベッドタウンで実家暮らし。オシャレな姉の影響で中学生くらいから服が好きで、愛読していたのは現在は休刊している「Men's egg」だった。

    服に使う金額は毎月3万〜5万。一方、居酒屋のバイトで月に6万〜8万を稼ぐ。親からお小遣いをもらうことはなく、クレジットカードも持っていない。

    11月に「ツケ払い」が開始された後、Twitterの広告で見かけて、すぐに利用するようになった。初めて滞納したのは、1月に購入した服の代金、約4万5000円。

    「バイトもしているし、2カ月あれば半分ずつ貯めて、支払えると思っていました」とAさんは話す。

    「でも、ツケ払いをしていることを忘れてしまって。その間に飲食代などに使い、必要な額が貯まらなかったんです」

    2カ月の「ツケ」期間を何日か過ぎると、「GMO後払い」「GMOペイメントサービス」などの送り主から、SMSとメールで支払い確認のメッセージが届いた。ツケ払いの代金請求は、GMOペイメントサービスが決済代行をしている。

    そこには「支払い期限を延長したので、期限内に支払うように」といった内容が記されていたという。その期限が過ぎると、また同じようなメッセージが届く。

    Aさんはそれでも、支払いをしなかった。感覚が麻痺していたためだ。

    「3通目くらいのメッセージに“法的処置”と書いてあって、怖くなりました。ちょうどバイトの給料日の前だったこともあり、慌ててコンビニで支払いました」

    Aさんの滞納期間はおよそ1カ月。代金を支払わないまま欲しい服が手に入ることをどう思ったか聞くと、「買ったという実感はなかった」と答える。

    普段、安く抑えられる服は、安く抑えている。H&Mなどのファストファッションの利用率も高い。

    「今まではお金がなくて欲しいものを買えないときは、我慢していました。今は欲しさが勝ってしまう。でも、服を着る度に、罪悪感はありました」

    「もし家に連絡が来て、家族にバレたらヤバイ」とは思ったそうだ。親に迷惑をかけたくはなかった。

    「ツケ払い」に親の同意が必要なことは、初めて使った後に知った。でも、「払うのは自分だし、いいや」と思い、親に伝えないまま使い続けたという。

    通販で使うお金はバーチャルな感じ。買ってダメだったら、メルカリで売ればいいし。

    2人目は美容系専門学校生のBさん。こちらも19歳の男性。

    大きなカバンを揺らしながら、待ち合わせ場所に駆けつけた。落ち着いた色合いのチェックシャツと、明るい茶髪が対照的だ。

    一人暮らしでバイトはしているが、稼ぎは月に2万〜3万ほど。親から6万円分の仕送りをもらい、生活費や遊興費に充てる。

    服に限らず、ネット通販全般が好きで、月に1万〜2万を使う。こう話す。

    「ネットのお金はバーチャルな感じです。とりあえず買って、ダメならメルカリで売ればいいし」

    Bさんは、現在もツケ払い中だ。5月の頭までに支払いが必要なおよそ1万円分の服の支払いがあるという。

    初めて滞納したのは、冬物のコートを購入したとき。Bさんへの督促は、メールとハガキだった。

    「注文した段階で、ハガキが届きました。滞納し始めてからは、1週間に1回くらいの間隔で、メールと一緒にまたハガキが届いて」

    結局、2週間ほど滞納した。「ZOZOを使っている人はたくさんいるし、自分1人がちょっとくらい遅れてもいいかな、と思っていた」という。

    そのときは、親にお金を振り込んでもらった。記者が「親に事前に相談しなかったのか」と聞くと、Bさんは親の同意が必要なことを知らなかった。

    「利用規約は読んでいなかったです。お決まりの“シュッ”(スマホをスクロールする仕草)ってやって、“ポン”と登録ボタンを押してしまった」

    身の回りに「ツケ払い」利用者も多い。「友人の1人は3カ月以上滞納し、督促の電話で“法的処置”という言葉を聞き、慌てて支払っていた」そうだ。

    「ツケ払い」の感想をBさんに聞いてみると、次のような返答だった。

    「画期的だと思いました。1円も払っていないのに、服が届くって。大人だったら、カードで買うじゃないですか。でも僕はまだ持っていないから、新鮮で」

    Bさんからは「ツケ払い」という言葉が軽い印象を与える、という指摘もあった。一方で「借金と言われると、気をつけなきゃいけないと思う」とも。

    「債権の弁護士委託」も。運営のスタートトゥデイの見解は?

    「ツケ払いについてどう思うか?」と質問すると、AさんもBさんも「サービス自体は便利。滞納する人が悪いだけ」という意見だった。代金を払う必要性は二人とも知っていたのだから、確かに払わなかった二人も悪い。

    BuzzFeed Newsは「ツケ払い」の代金請求をしているGMOペイメントサービスにも問い合わせた。滞納が長期に及んだ場合はどう対応しているのか。グループ会社の広報から次のような回答があった。

    「お支払が確認できない場合、支払期限後一定期間を経た後、債権を弁護士事務所に委託いたします」「必要な場合には法的処置をとる可能性がございます」

    未成年者が親の同意を得ないまま利用できるサービスだが、法的な責任を問われる可能性がある、ということだ。

    未成年者の利用に対して、何らかの歯止めが必要ではないのか。危険性を指摘する声の高まりを受けて、同社広報担当者は3月14日、未成年者向けに保護者の同意の有無をチェックする機能を強化をするとBuzzFeed Newsに明かしている

    一方、サービスの意義を次のようにも話す。

    「“ツケ払い”サービスの本質は、2カ月間のうちで、お客さまのご都合の良いときに、いつでも銀行振り込みや、24時間コンビニでお支払いいただけるという便利な決済手段の一形態だと考えています」

    未成年者への同社の対応は、保護者の同意の有無をチェックする仕組みの設置に留まる予定だ。法的な責任を問われる危険性や保護者の同意などのルールを未成年者はどこまで注意して利用することができるだろう。

    取材中、Bさんは次のように話した。

    「利用規約なんて誰も読まないですよ。長くて、文字が多いし。重要なことはでっかく書いてほしいです」

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