【都知事選】「平和と脱原発」を訴える鳥越候補 具体性に乏しい公約

    東京の知事を決める選挙で異色のキーワード。

    都知事選の投開票日が7月31日に迫っている。主要3候補の公約と街頭での発言などをチェックしてみる。まずは野党統一候補の鳥越俊太郎さん(76歳)。

    鳥越さんを応援しているのは、民進、共産を中心とする野党や、国会前デモの中心にいた市民運動グループだ。いわゆるリベラル系学者らもサポートしている。

    鳥越さんは公約ウェブサイト上で、「政策コラム」と題して公開している。立候補表明が告示直前になり、当初は立ち遅れていたが、街頭では「3日あれば大丈夫。他の候補に負けない政策をだしている」と述べている。

    実際は、どうか。

    最初に掲げたのは「政治とカネの情報公開」

    1回目のテーマは政治とカネの透明化だった。舛添要一・前都知事が辞任に追い込まれる原因となった部分について、清廉さをアピールしている。

    「『第2の舛添問題』を起こさせない。そのために、多額と批判を受けた知事の海外視察費用のあり方や公用車の利用ルールを厳正に見直します。疑問を持たれないよう、全て公にされていなかった知事の視察の情報公開を徹底します」

    子育て支援政策は

    「保育園落ちた日本死ね」のブログが注目を集めた待機児童対策は、2回目に。

    「地域の保育の実態をしっかり捉えることができる待機児童数調査を行い、その結果を踏まえ、マンション新設時に保育所を併設するルールを検討するなど、保育所の整備をより強力に進めていきます」

    「給与補助制度の拡充など、保育士の給与・処遇の改善を進め、待機児童ゼロを目指します」

    ただし、解消に向けた年度目標や、財源など政策実現に向けた具体的な根拠について、言及はない。

    この他、鳥越さんはこんなことを訴えている。

    ・ムダをなくしつつも、平和の祭典としての五輪を成功させる。

    ・子育て・介護に優先的に予算を配分する。

    ・住宅耐震化率83.8%から100%を、再生可能エネルギー割合8.7%から30%を目指す。

    ・男女平等、DV対策、LGBT施策、障害者差別禁止などの人権施策を推進する

    演説で力を入れているのは「平和と脱原発」

    街頭や集会では、何を語っているのか。選挙戦終盤に入り、特に力をいれているのが、平和と脱原発だ。

    7月26日、大田区で開かれた支援集会。民進党は「保育園落ちた日本死ね」ブログを国会で取り上げ、一躍、名を挙げた政調会長の山尾志桜里さんを投入。山尾さんは鳥越さんを、待機児童問題を「解決する気概」を持っている唯一の候補者だと称賛した。

    中小企業が多い大田区だからか、鳥越さんは冒頭、中小企業対策に力を入れると宣言した。徐々に声を強め、本題に入る。

    「東京都はどんな使命があるのか。東京都は平和を守る都市である。東京都から発信して守らないといけない。守るべき宝は日本の憲法です。これを捨てようとしている人がいる。自民党政権、公明党だ。東京都は憲法を守る先頭に立ちたい。そのために知事になりたい」

    会場から拍手が起こる。

    そして、鳥越さんが自身の政策の「1丁目1番地」と語ったのは「脱原発」と「非核都市宣言」だった。核兵器だけでなく原発も含めての「非核」だという。

    「東京都を中心にして、250キロ圏内にある原発は停止、再稼働なし、廃炉を電力会社に申し入れる。原発は廃炉に追い込む」

    ここでも大きな拍手。

    選挙戦序盤ではほぼ触れず、29日時点で政策コラムにもない東京周辺の原発「廃炉」が、なぜ終盤に浮上したのか。演説後にBuzzFeed Newsが質問すると、鳥越さんは遊説を重ねているうちに「自然に自分の体の中からでてきた」と語った。

    「平和と脱原発」。目の前にある都政の課題から、離れたように聞こえるキーワードが、鳥越さんの遊説の要点になっている。