【民進党代表選】玉木雄一郎さんが学びたいのは「安倍総理」 えっ、なんで?

    浪花節だよ代表選は

    脱「だらしない野党」

    「だらしない野党」から脱するのことができるのか。民進党代表選の大テーマはこれに尽きる。

    BuzzFeed Newsは立候補した蓮舫さん(48歳)、前原誠司さん(54歳)、玉木雄一郎さん(47歳)に個別インタビューを申し込んだ。

    今回は、玉木さんインタビューをお届けする。

    「安倍総理に学びたい」

    「安倍総理から学びたいと思ってる。アベノミクスには批判的だけど、議論が分かれるものだからこそ選挙で問い、政策を実現していくところ。そこは学びたい」

    民進党代表選に立候補している衆議院議員、玉木雄一郎さんは対立する自民党、批判してきた政権トップの名前をあげて、力を込めて語った。

    香川県出身、実家は兼業農家。財務省でキャリアを積み、政治家に転身した。地方を知り、霞が関も知る。

    政治記者の間で、次世代のリーダー候補と名前が挙がっているが、当選回数わずか3回。玄人好みの政治家という印象はぬぐいきれない。

    圧倒的な知名度と人気を誇る蓮舫さん、若くして要職を歴任してきた前原さんの争いに埋没せず、違いを打ち出すことができるのか。

    「無名であることが強み」

    東京・永田町、国会の真裏にある深夜の議員会館。明かりがついている議員の部屋はごくわずか。

    水色の長袖シャツを腕まくりした玉木さんは、こう切り出した。

    「無名であることが強みですよ。民進党は旧民主党の影がある。政権交代をしたときの大きな期待が、大きな失望に変わってしまった。失望感の大きさを今日まで引きずっていますよね。知名度があるということは、良い反面、民主党政権時代の悪いアイコンでもあるわけです。どこかで1回がらっと変えないといけない。だったら私でしょう、と」

    楽じゃないイメージ刷新

    民主党政権の中枢にはいなかった若手議員。だからこそ、できることがあるという。それは、イメージの刷新だ。

    「本当に新しい政党になったと信じてもらうためには、思い切った世代交代も必要。そのために私が代表になって、新しい党をゼロから引っ張る。われわれが本当に過去と決別して、脱皮をして、本当に新しい政党に生まれ変わっていることを国民に信じてもらわなきゃいけないんだから」

    なるほど、思いはよくわかる。

    しかし、その道は簡単なものではない。世論調査(朝日新聞)をみても支持率は10%前後、およそ政権の選択肢になっているとは言い難い。インターネット上では、ネガティブなコメントばかりが並ぶ。

    「ネットは好きですよ。ツイッターに私が書き込むと、左派からも右派からも叩かれる。わかるんですよ。あぁ私って中道だなって。私は中道を取りにいきたいので、それでいいと思っています」

    「リベラル保守」というポジション それって自民党となにが違うの?

    結局、政策以前にイメージを変える事が最優先。これは、3候補に共通している思いだろう。玉木さんはどこに活路を見出すのか。

    「もう一度、民進党の立ち位置とは何かを明確にしたい。私が『リベラル保守』と呼ぶポジションを取りたいと思う」

    「私が考えている保守は、日本で大事にされてきた価値、新しいものをどんどん取り入れる力や、認めあって協調することを守る考え方。中国がけしからん、韓国がけしからんといって敵ばかり作って攻撃するのは『保守』じゃない」

    排他的な思想とは、一線を画すという。

    「ヘイトスピーチなんて、ダメ。分断ではなく、結びつけることが大事ですよ。優しくて、元気が出る社会に変えていきたいんです」

    例えば、子育て。

    「仕事と家庭の両立って、女性だけの問題じゃないと思っています。男性だって子育てしたい人はいますよね。私も子育て好きだったなぁ。官僚時代に、職場に連れてきて遊ばせていた。かわいい時期を一緒に過ごせないのはもったいない」

    例えば、LGBT。

    「人はそれぞれ違っていいし、それぞれに幸せを追求できる社会でいいじゃない」

    鳥越さんとどう違うの?

    では、リベラルとは。都知事選で民進党が推して敗れた鳥越俊太郎さんのように、護憲を訴えること?

    「私が考えているリベラルというのは、人は本来において自由であるというもの。人はそれぞれが違っているけど、一人一人が尊重されること。多様性を尊重し、抑圧や規制を加えるのではなく、のびのびと力を発揮できる環境を作ること」

    「『リベラル=憲法を一言一句変えない護憲派』というのは違うと思います。私は、国が国民に対して余計なことをしないように憲法で縛るという立憲主義を強化するなら、憲法改正だって大いに議論しますよ。例えば、憲法裁判所を作るとかね」

    「民進党としても、改憲について議論を進めます。そのなかで、何を改正するかだけではなく、何を改正してはいけないのか。この点が浮かび上がるのではないかな」

    結局、自民党ではダメな理由

    同郷の先輩政治家の名前を挙げながら、続ける。

    「現実的で、穏健な保守。例えば大平正芳元総理のような考え方を民進党の中心に据えたい。小選挙区制度になってからの自民党は権威主義的です。多くの日本人は争いをしようとか、どんどん軍備拡張して、世界中に出て行こうなんて考えていないじゃないですか」

    それなら自民党に移籍して、中から再生するのも一つの手段なのでは?

    「いやいや、選択肢を作らないと政治は必ず腐敗しますから。一強多弱を防がないといけないのです」

    「私はなんでもお上が決めて統制するという発想、全体主義的な発想がすごく嫌いです。右派の全体主義も、左派の全体主義も嫌いです。逆に言うと、理念に賛同してくるなら、野党に限らずどことでも組みます。代表になったら、公明党と憲法問題について議論したいと思っているんです」

    では、自民党との違いをどうやって作るのか。安倍政権になってから、自民党は選挙のたびに経済政策を争点に設定し、結果、勝利を手に入れてきた。

    憲法、安全保障、大きな政治理念も話題にこそなるが、重視されるのは経済だ。ここで、違いを作れるのか。

    対抗軸は「子供への投資」

    玉木さんは「子供への投資」をキーワードにあげる。

    「日本の最大の課題は一つ。人口が減って、子供の数が減っている。以上。これに対処していくのは社会保障でもあり、経済政策であるともいえます」

    「まず子供の貧困解決、教育に関わるお金を借金してでも大幅に増やしたいんです。10兆円規模にすれば、就学前教育、国公立大学まで教育費の無償化ができますよ」

    「子供は生まれてくる家を選べないし、親の所得も選べない。教育機会が奪われている子供がいる。これは個人の責任じゃないでしょう。社会で解決しないとダメ。財源均衡が崩れるからできない、どっかを削って財源を作ってから始めましょうでは遅いと思います」

    財政均衡が鬼門となった民主党、大胆な安倍総理

    民主党政権時代、財政均衡をかなり重視して、政策の幅を狭めていたような……

    「財政均衡のために政治ってあるんですか?そうじゃない。人を幸せにするために政治はある。財政の大切さなんて、嫌というほどわかってる。財源の範囲でしかできませんとかいって、少しずつしか子供に投資できないなんておかしくないですか?子供への投資は、多くの研究で明らかになっているように、将来的にプラスになります。賛否がわかれるとしても、投資を決断するリスクは取りたい」

    そして、安倍総理の名前がでてくる。

    「大胆に政策を進める。この点に関しては安倍総理に学びたいと思っています。批判されるような政策だって、一気にやる。議論が分かれるものだから、選挙で問うんですよ。リスクを取ってやれるのは政治しかないのだから。子供への投資は回収できる投資なんだから、代表選で問うし、次の衆院選の争点にしたい」

    そう口にしつつ、「アベノミクスは間違っている、と思うけど」と付け加えることも忘れない。

    終始、口調は熱く、一気に捲くしてるように語った。

    浪花節だよ代表選は

    民進党の代表選は、それなりに注目されているにもかかわらず、一番の話題は、蓮舫さんの国籍問題になっている。

    玉木さんはといえば、「泣いて、蓮舫さんから叱られた」とか、およそ本題から離れたことばかり注目されている。

    嫌になりませんか。

    「私、涙もろいから。蓮舫さんに怒られたけど、喜怒哀楽をぶつけたっていいじゃない。政治家の人間関係なんて、打算ですよ。だけど、それだけでもない。政治には義理、人情、浪花節が必要なんだよ」

    そして、機嫌よく「浪花節だよ人生は」の一節を口ずさむのだった。

    「第3の男」から、一気に主流にのぼり詰めることはできるのか。キーワードは、「リベラル保守」「子供」。そして、「義理・人情・浪花節」。

    結果がでるのは9月15日の民進党臨時党大会になる。

    BuzzFeed Newsは他の候補にも取材依頼を送っている。取材ができ次第、随時掲載する。