【民進党代表選】二重国籍問題で揺れる蓮舫さん それでも語る「私はこの国の総理になりたい」

    民進党をどう変えるのか?

    民進党代表選。BuzzFeed Newsは立候補した蓮舫さん(48歳)、前原誠司さん(54歳)、玉木雄一郎さん(47歳)に個別インタビューを依頼した。大きなテーマは「民進党をどう立て直すのか」。玉木さん、前原さんについで、「本命」と目される蓮舫さんが単独取材に応じた。

    二重国籍問題。蓮舫さん「まさか、残っているとは……」

    蓮舫さんはこの日、二重国籍問題の対応に追われていた。台湾籍が残っていることが明らかになり釈明、謝罪が続いた。参院議員会館の一室。約束の時間きっかりに、トレードマークの白のジャケットを羽織った蓮舫さんが現れた。疲れた様子は一切なし。

    まず、問題となっている二重国籍問題の説明が、なぜ二転三転したのか(国籍問題について、詳細はこちら)。さすがに、野党第1党のトップを目指そうというのに、この説明では説得力に欠けたのでは。

    「私は17歳で日本国籍を取得した時に、放棄したとずっと思っていました。残っている、と聞いた時も『まさか、残っているとは』と思い、思考が停止してしまった。皆様にご迷惑をおかけしました。台湾の方にも、私の発言でご心配をおかけしました。率直にお詫びいたします」と、説明がまずかったことを認め、謝罪した。

    代表選は降りない

    蓮舫さん自身は日本生まれ、日本国籍も取得している。台湾にルーツがある父、日本人の母の間に生まれた「ダブル」だ。

    「過去の発言については、二転三転したのは、記憶に頼っていたことが原因です。私は、父親に公的証書、パスポートに関することをすべて任せていました。この問題で、確認すべき父は他界し、31年前の書類は何もない。どうしていいのか、わからないというのが、率直なところでした」

    蓮舫さんは、台湾籍を抜けるために必要な台湾のパスポートのありかすらわからず母と一緒に探したこと、父や自分の子供への中傷があったことを明かした。その上で、「私は日本の国会議員として、この国、そして子供達の将来を紡ぎたいと思っている」と強調する。

    つまり、この段階で代表選を降りるという考えはないということだ。二重国籍問題の報道が続いても、マスコミ各社の情勢調査で「最有力候補」であることは変わりない。

    「民進党を提案型野党に変えたい」

    では、民進党代表になったら、何をやりたいのか。なぜ代表の座を狙うのか。二重国籍問題に隠れてしまった政策や見解をあらためて聞いてみたい。

    蓮舫さんは「民進党を提案型の野党に変えることだ」と明快に答えた。

    野党は、与党の暴走を止めるために、とりあえず反対姿勢を明確にしておけばいい、という意見も聞こえてくるが……

    「言い方なんですよ。『アベノミクスは失敗したじゃないか』といえば、単なる批判ですよね。でも、『アベノミクスが国民の気分は変えたことは評価します。けれども、経済成長率は伸び悩んでいないか。その要因はどこか。私たちはお金の再分配のあり方を変えたい。子供への投資をしたい。この考え方に賛同できますか』と聞いたらどうでしょう」

    「野党ですから、質問の時間は限られていますよ。しかし、言い回しを変えるだけで、全然違う議論ができると思います。(立候補している)前原さん、玉木さんや私はできます」

    遠い自民党の存在

    とはいえ、民進党の評価は依然として低いままだ。支持率も10%前後に落ち着いていて、40%近い支持率の自民党には及ばない。現状、およそ、政権の選択肢になっているとはいえない。民進党への期待値も低いままだろう。

    「ひとつでも評価してもらうことを作るしかないでしょう。ひとつでも刺さる政策を。給付型奨学金、子育て支援の拡充、誰でも受けられる介護……。私たちにも法案はある。でも、まったく届いていない。そこを埋めるような代表になっていきたい、と思っていますが……」

    蓮舫さんは、外国特派員協会の会見で「選択的夫婦別姓の実現」を挙げていた。いわく「今、まさに変えてほしいと女性が思っている、現実的なところから提案をしたい」のだ、と。

    「そもそも、有権者に聞いてもらえない現実があり、(与党を)批判する国会運営があり、(民進党の議員は)絶対的な数がいる与党議員に比べて、地域での活動量が少ない。ずっとメビウスの輪の中にいるんです」

    「女性がトップに立つ。これだけで空気は変わる。問題は……」

    どうしたら、聞いてもらえる政党になるのか。政権交代以前の問題で、民進党は立ち止まっているように思える。蓮舫さんは「私が代表になれば変わる」と主張し続けているが……

    「旧民主党時代も含めて、女性が初めてトップに立つ。これだけで空気は変わります。でも、トップが変わるだけでは変化は持続しません」

    「与党は『権力』への求心力でまとまることができる。野党で大事なのは運営を通じて、まとめていくことです。いまの民進党議員は優秀です。魅力もあります。それぞれのポジションで仕事をしてもらいたい」

    「力を引き出すのが私の仕事になります。私は全能ではありません。政策は分野ごとのプロに委ねます。専門家の力も借りたい。特に中長期的な課題、社会保障、安全保障、財政再建……。私たちの国家像を示すような部署を作って、政策を積み上げたい」

    安倍政権との対立軸は「子供への投資」

    蓮舫さんは記者会見で「憲法9条は守る」と明言し、子供の貧困解消に力を入れたいと語っていた。憲法と再分配は安倍自民党との対立軸になる?

    「憲法論議からは逃げませんが、憲法9条をことさら強調する必要はないですよ。優先順位は低い」

    「急務なのは子供の貧困ですよ。私も初当選時から子育てをしてきましたが、この間、奨学金も待機児童も、問題は何も解消されていません。子供は育っていくのに、問題は残ったまま。ここを最優先課題に取り組まないといけない」

    「我々は、子供への投資、就学前教育、職業訓練も含めた教育への投資は、経済成長への投資だと思っています。高度経済成長時代的な発想では、人口減少時代に対応できません。スティグリッツさんの言葉が印象的でした」

    ジョセフ・E・スティグリッツ。ノーベル経済学賞を受賞した、現代アメリカを代表する経済学者だ。

    「格差是正、人への投資は『源』だとおっしゃった。この考え方を積極的に取り入れていきたい」

    どうなる野党共闘?

    良いことを訴えるだけでなく、議員を当選させることが、代表の重要な仕事だ。参院選、都知事選と続けてきた野党共闘はどうするのか。

    「選挙は与党対野党という構図がベスト。これは求めていきたいと思っています。そのために、候補者を立てて、我々は何を目指す政党なのかを打ち出す。そこで大事になってくるのは、他党に引っ張られないこと」

    他党に引っ張られるとは?

    「つまり、他党に票を持っていかれないということです。私たちは1票でも取りこぼしは許されない。参院選の場合、1人区はよかった。しかし、複数区はどうだったか。他の野党に票を取られています。ここは慎重に考えないといけないでしょう。衆院選の場合、比例票の取り合いに影響を与えると思っています」

    ぽつりと漏らした本音と目標

    インタビューの終盤、蓮舫さんは唐突にこう語った。

    「本音でいえば自民党で政治家をやるほうが楽だと思うシーンがあります。地域の組織団体もまとまっている。長い歴史で確立してきた、地域の支持母体がちゃんとあるんです。私たちは決定的に違います」

    自民党を追及してきた、蓮舫さんらしくないような発言にも聞こえるが……

    「でも……」と区切りをいれて、こう続けた。「そこに抗わないといけないんですよね。今回の立候補も、抗って、もう一度、私たちも積み上げていこうと思った。それが原点にあるんですよね」

    「私は総理になりたい」

    蓮舫さんは記者会見でも「ガラスの天井」という言葉を度々使っていた。女性のキャリア、地位向上を阻む障害「ガラスの天井」。政治の世界でも打ち破るのは大変なのだろうか。

    「野党第1党の代表になる。それだけで、ガラスの天井を打ち破ることにはなりませんよ。高い目標に一歩近づいたくらいでしょう」

    「簡単な道のりではありませんが、私たちは、ゆくゆくは政権を取りたいと思っています。そして、私はこの国の総理大臣になりたい」

    「でも、今回の代表選を通じて、私はまだまだ覚悟を固め切れていないと痛感しました。東京都知事の小池さん、アメリカ大統領を目指すヒラリーさん……まぶしいなぁと思って見ています。私もまぶしい、と思ってもらえるような存在でありたいと思います」

    目標は総理大臣……。そのために乗り越えないといけないハードルは多く、そして高い。ハードルの第1関門の結果が明らかになるのは9月15日の民進党臨時党大会だ。

    男は泣いたらダメ?

    ところで、人前で涙を流した玉木さんをみて「男は泣くな」と一喝したそうですが、やっぱり男は泣いたらダメですか?

    「女も泣いちゃダメです。私たちが戦っている舞台で、求められるのは弱さではなく、まっすぐに向き合う姿ですから」