【ネット広告不正】会見不参加の電通社長が内部文書で語った「組織風土」と「責任」

    突然、全社員に送られた1通のメール。タイトルは「電通グループの皆さんへ」……

    電通社長が社員に流した1通のメール

    インターネット広告を巡り、広告主への虚偽報告や過大請求が発覚した、国内最大手の広告代理店・電通。BuzzFeed Newsは、電通の石井直社長が9月24日に社員にメールで送った文書を入手した。

    この日は、問題発覚を受けて電通が緊急の記者会見を開いた翌日であり、休日だった。

    会見に石井社長は出席していない。トップは社員に向けて何を語っているのか。

    「電通グループの皆さんへ」というタイトルで、全2枚にわたって、今回の「不正」−−石井社長や電通の発表では、一貫して「不適切業務」という言葉が使われている−−に対する、経過や今後の方針が綴られている。

    石井社長は文書の中で、自身の責任に言及している。

    私は、今回の一件で最も重い責を問われるべきは、そうした行為に及んでしまった特定の個人や部署ではなく、当社グループにおけるマネジメントそのものであると捉えています。そして、誰よりも猛省すべきは経営幹部であり、私自身であると思います。

    不正発覚までの経緯 それはトヨタの指摘から始まった

    事案の経緯を整理しておく(詳細はこちら)。

    今年7月、クライアントのトヨタ自動車から、電通が請け負っていたネット広告業務に対して、疑義が呈された。

    電通が開いた記者会見によると、発端は「(クライアントは)広告が掲載されることによる効果を期待されていたが、効果が一向に上がらない。本来効果が上がるべきところに、広告を出しているはずなのに、効果が上がらない。正しく、期待通りの広告の掲出ができているかという疑義が生じたこと」。

    「広告が掲出されているはずの期間なのに、掲出されていないのではないか、という指摘」(電通)まであった。

    調べてみると、広告主111社、633件で疑義がある案件が発覚した。広告代金にして総額2億3000万円。この中には、実際に広告を掲載していないにもかかわらず、過大請求した分も含まれている。

    ありもしない成果を報告し、お金を請求する。調べてみたら、クライアント1社にとどまる話ではなかったということだ。

    広告主である企業とネットメディアの中間にいる代理店が数字を操作することができることも明らかになり、ネット広告業界関係者からは「業界全体の信頼に関わってくる問題」という声もあがる。

    電通トップが言及する「組織風土」「体質」

    前出の文書で石井社長は、問題の発端を「業務上で生じたミスから始まっています」とする。そして、人が関わる以上、仕事上のミスを0にすることはできない。ミスはチームで共有し、事態の解決に全力を尽くすべきだ、という。

    今回の不正では、なぜ、それができなかったのか。石井社長は、組織風土や体質という言葉を使って説明する。

    日々、厳しい仕事に直面する中で奮闘している社員の皆さんが、業務上で起こしたミスについて、同じ部署の同僚や上司、共に仕事を行うチーム内に報告しづらい雰囲気やプレッシャーが常態化し、社員の皆さんにとって、『正直にミスを報告するよりも隠した方が良い』といった考えが浸透してしまっているとすれば、そのような組織風土や体質が生じた原因は、特定の個人や部署にはありません

    そうした風土や気質を放置してしまった当社グループのマネジメントにこそ、原因があります

    あるとすれば、と留保しているが、今回の遠因として少なくない関係者が指摘するのが、ここに列挙された「体質」だ。果たして、この一件で改善に向かうのか。電通は年内をめどに再発防止策をまとめるとしている。