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「誰もがNOと言っていい」 テイラー・スウィフトがセクハラ訴訟を“賠償金1ドル”で戦った理由

「その女性が裕福か貧乏か、有名かそうでないかは関係ありません。どんな女性であっても、こんな被害にあってはならない権利があるはずです」

アメリカの人気歌手テイラー・スウィフトが、ファン交流会で体を不適切に触られたとして、元ラジオDJの男性と争っていた「セクハラ訴訟」で、裁判所は8月11日、「テイラーのせいで仕事を失った」と主張していた男性側の訴えを棄却した

発端は、2013年6月にコロラド州デンバーで、コンサート前に開かれたファン交流会。

テイラー側の主張によると、当時DJとして地元のラジオ局に勤務していたデビッド・ミュラー氏が記念撮影を撮る際に、テイラーのスカートの中に手を入れて、彼女の臀部をつかんだという。

テイラーから話を聞いたスタッフらは、すぐにミュラー氏の勤務先であるラジオ局に被害を報告。ミュラー氏は否定したが、問題が起きた2日後に解雇された。

Taylor Swift -- The 'Sexual Assault' Photo I Wanted to Keep Secret (PHOTO) https://t.co/qT5FRZLo4T

発端となった記念撮影の写真。テイラーの向かって右側に立っているのが、元ラジオDJのミュラー氏。向かって左側はミュラー氏の当時の交際相手。

それから約2年が経った2015年9月、先に訴訟を起こしたのはミュラー氏だった。

ミュラー氏は「テイラーの事実に反する訴えのせいで仕事を失った」と主張し、テイラーやその家族、スタッフらを名誉毀損で訴え、失職していた期間の年収2年分に相当する300万ドル(約3億2800万円)の損害賠償を求めた

これを受けて、テイラー側も反訴。ミュラー氏にセクハラされたとして、「賠償金1ドル」を求める訴訟を起こした。

なぜテイラーが求める賠償金は、たったの1ドルなのか。その理由をテイラーの代理人は法廷で、こう述べた。

「彼女はただ、誰かが自分の体を触ろうとしてきたら『NO』と言っていいんだと伝えたいだけなんです。女性の臀部を触ることは暴行であり、どんな場合においても間違っています」

「その女性が裕福か貧乏か、有名かそうでないかは関係ありません。どんな女性であっても、こんな被害にあってはならない権利があるはずです」

10日にはテイラー自身も法廷で証言し、ミュラー氏の代理人の追及に次々と反論した

まず、ミュラー氏が解雇されたことについて、どのように感じているかと問われたテイラーはこう答えた。

「彼が解雇されたことへの責任が私にあると感じさせることは、絶対に許しません。あれから何年も経ったいま、私は、私ではなく彼自身の選択によって起こった不幸な出来事の責任をなすりつけられようとしているのです」

また、ミュラー氏の代理人が問題の写真に写っているテイラーのスカートの前部分に異常が見られないと指摘すると、「私のお尻は、体の後ろ側にありますからね」と反論。

ミュラー氏との写真撮影後に休憩を取ればよかったのではないかという発言に対しては、「じゃあ、あなたの依頼人も(私のお尻を触らずに)普通の写真を撮ればよかったじゃない」と切り返した。

さらに、ミュラー氏がスカートの中に手を入れるのを見たと証言したテイラーの元ボディーガードについて、見ていたなら止めるべきではなかったかと追求されると、「私は私のボディーガードではなく、私のスカートの中に手を入れて臀部を掴んだあなたの依頼人の行為を批判しているのです」と答えた。

裁判所は11日、テイラーが意図的にミュラー氏を失職させたとは言えないと判断し、テイラーに対するミュラー氏の請求を棄却。この判決を聞いたとき、彼女は家族やスタッフと抱き合い、涙を流したという。

だが、裁判の決着はまだついていない。ミュラー氏の訴えがテイラーの母親とスタッフに対して妥当であるか審議され、また、テイラー側の請求についても判決が下されることになる。