それは、ちょっとした驚きの結末を迎えるビデオだ。
メガネをかけて椅子に座るハル・クロミヤさん(89)。静かな口調で、ニワトリ農場での幸せな子ども時代を振り返る。だが、75年前にそれは暗転する。
突然、警察が父親を連れ去った。一家は、台帳に登録された。ネームタグと番号を渡され、身につけるように言われた。
列車に乗せられ、到着した先は強制収容所だった。仕事も、家も、家財道具も、ペットも失った。
「全ては恐怖心とデマから始まった。そして日系アメリカ人の登録制度へと発展し、番号札がつけられ、最終的には強制収容へとつながった」
クロミヤさんはビデオで淡々と語り続ける。メガネをそっと外し、顔を覆う。そして、次の瞬間・・・。
このビデオが現代アメリカ社会に訴えかけるのは、ここからだ。
クロミヤさんは白髪をゴッソリ取り外す。カツラだった。特殊メイクを破って、ムスリムの女性が中から姿を現した。
実在するクロミヤさんを演じていたのは、パキスタン系の女優ヒナ・カーンさん。
「歴史を繰り返してはならない」。そう訴えて、ビデオは終わる。
日系アメリカ人とイスラム教徒と
日本の血を引くという理由だけで敵視された日系アメリカ人。それは、トランプ次期大統領が宗教だけを理由に敵視するイスラム教徒のいまと交錯する。
トランプ氏は日系人の強制収容について、米タイム誌に対し、「そのときその場にいてみないと(賛否に)適切な答えはできない」と話し、物議を醸した。
一方、トランプ氏の側近たちは、イスラム教徒をデータベース化することを提案している。トランプ氏自身は「イスラム教徒のアメリカ入国を禁止する」と宣言した。データベースについては、示唆と否定を繰り返している。
だからビデオのエグゼクティブ・プロデューサーを務めた歌手ケイティ・ペリーさんは「歴史は繰り返しているのだろうか・・・?」とツイートした。