【参院選】選挙が始まったのに候補者がいない…… 鳥取県の悲しい公示日

    「投票意欲も湧かないですよ」

    選挙が始まったのに、候補者がいない…?

    今回の参院選から初めて合区となった「鳥取・島根」選挙区。公示日の6月22日。3人の候補者は誰ひとりとして、鳥取県で「第一声」をあげなかった。

    誰もいないまま始まった選挙戦に「物悲しさ」を感じる鳥取県民もいるようだ。

    「島根が地元ですし……」

    2010年に島根選挙区で当選した自民現職の青木一彦氏(55)は、島根県松江市の県庁前で第一声を上げた。

    事務所の遊説担当者はBuzzFeed Newsの取材に、松江で第一声を上げた理由について、「両県連の協議のうえで決まりました」とだけ答えた。

    ただ、最初に電話に出た別の担当者はこうも言う。

    「鳥取の人が本当のところ、なんて思っているかはわからないけれど、今のところ早く来い、と言った声は聞こえてこない。島根が地元ですし、甘えさせていただいております」

    青木氏は24日に鳥取入りする。全18日間の日程中、10日間を島根、8日間を鳥取での遊説に当てるという。

    「打ち上げは鳥取県で」

    この配分は、鳥取出身で無所属新人の野党統一候補、福島浩彦氏(59)も同様だ。

    福島氏は、過疎地域である島根県美郷町で第一声を上げた。事務所の担当者は「鳥取、島根のなかでも過疎の一番激しいところから声を上げていくことになりました」と、BuzzFeed Newsに説明する。

    「お互いに第一声はうちでやってほしいという思いはあるが、話し合いで決まったこと。それに、移動距離を考えても島根を厚くせざるを得ません。ただ、最終日の打ち上げは鳥取県でやります」

    たしかに、両県を合わせた横幅は東京ー名古屋間と同じくらいの距離がある。1日で両県をまわるのは、効率が悪い。

    それに、島根県の人口は69万7千人。鳥取県の人口は57万4千人。人口を見ても、島根がどうしても優先になるのだろう。

    「喪失感みたいな物悲しさ」

    それでもこうして始まった選挙戦に、鳥取県民は複雑な心境を抱えている。

    「いつもと違う雰囲気ですね。だって、(候補者)本人がいないんですから」

    鳥取市気高町で建築業・不動産業を営む中田啓介さん(48)は、BuzzFeed Newsの取材に対し、そう語った。

    公示日なのに、候補者が駅前にも、県庁にもいない。団体が声を張り上げているのは耳に入ったが、選挙カーもまったく走っていない。選挙が始まったという、実感がない。

    「喪失感みたいな、物悲しさみたいなもんを感じますね。県として一人前扱いをされていないんじゃないですかね……」

    こう話す中田さんは、さみしげにつぶやいた。

    「もう、だんだん、政治的にも見捨てられているのかなあ……。島根って、距離とか交流からすると、縁遠い感じなんです。投票意欲も湧かないですよ」