「iPhoneの写真は綺麗すぎる」 女子大生に広がる「写ルンです」ブーム、その理由は

    プリントせずに、インスタにアップ。

    女子大生など10代後半〜20代の女性たちの中で「写ルンです」の流行が続いている。

    Instagramのハッシュタグは大きく盛り上がり、原宿の富士フイルムの直営店では、売り上げが2014年以前より5倍も増えた。2年ほど前から徐々に始まったブームは、衰える気配がない。

    iPhoneやスマホであれだけきれいな写真がたくさん撮れるのに。なんでいま、「写ルンです」なのだろう。

    ノスタルジーな雰囲気が「エモい」

    「目新しい気がしたんです。無限にパシャパシャ撮れないワクワク感とか、現像を待っている間の感覚とかも新鮮。フィルターかけなくてもいい感じになるし」

    そうBuzzFeed Newsの取材に答えるのは、1年ほど前から「写ルンです」を愛用している女子大生のangeさん(21)だ。

    「やっぱり、27枚しか撮れないっていうのが良いですね。一枚一枚、大事にできるから。それに、フィルターをかけなくてもいい感じになるのが好き」

    「連写もできないし、ノイズも入る。暗いところではうまく撮れない。フラッシュを焚くと人が浮かび上がる。そういうノスタルジーな雰囲気が、エモいです」

    写真が好きな友達は、だいたい「写ルンです」を持っているという。どうして、iPhoneじゃダメなのか。

    「やっぱり雰囲気かな。iPhoneの写真って綺麗になりすぎて、つまらないんですよね(笑)」

    販売本数は5倍に

    「写ルンです」の売り上げは、ここ数年で急上昇している。

    富士フイルムによると、原宿の直営写真店「WONDER PHOTO SHOP」では、2015年の夏ごろから販売本数が伸び始めた。それまで月20本以下の販売だったものが、その年12月以降、月に100本以上になったそうだ。

    BuzzFeed Newsの取材に対し、「ここ1年ほどで、10代後半〜20代の若い世代を中心に再び人気を集めており、需要は下げ止まりつつある傾向がみられます」とコメントする富士フイルム。ブームを、こう分析する。

    「『写ルンです』の流行は、アナログを知らないスマホ世代の若年層に自然発生的に起きたものと考えております」

    「物心付いた時からデジタルに慣れ親しんだ若い世代の方にとって、フィルム独特の風合いを新鮮に、さらに現像をしないと何が写っているかわからないワクワク感にも魅力を感じていただいているのでは」

    ブームの火付け役はSNS

    ブームに火をつけたのは、InstagramなどのSNSだ。

    富士フイルムによると、10 〜20 代に人気のある歌手やモデルなどが「写ルンです」の写真を投稿し始めたことが大きいという。

    実際、AKB48の横山由依さんや女優の臼田あさみさん、モデルの前田エマさんなどの著名人が「写ルンです」の写真を投稿してきた。

    1991年生まれの写真家・奥山由之さんが愛用していることも知られている。

    最近写ルンですで写真撮るのにハマってます。 まだ39枚撮り終えてないから現像出せてないけど、とりあえずどこでも構えます📷 #写ルンです #カメラ女子 #写ルンですを構えてるところを撮ってくれるのは北原さん

    富士フイルムもこれを好機と捉え、若者を狙った仕掛けを用意した。

    「写ルンです」の発売開始から30周年だった2016年には、「BEAMS」や「SLY」「おそ松さん」「ロフト」など、その世代に人気のブランドなどとコラボした商品を発売。人気イラストレーターのChocomooさんらがデザインした着せ替えカバーもある。

    2017年2月には、二階堂ふみさんを表紙にしたムック本も出た。

    飲み会、旅行、日常の記録……

    そうしたブームに反応し、「写ルンです」を手にしたangeさん。

    小さい時に「みた記憶はあるけど」。これまで使ったことはなかったという。

    当初は、その呼び方すらも知らなかった。最初の頃は、周りの友達たちと一緒に「しゃるんです」と言っていたとか。

    軽くて持ち運びやすいからと、常に1つはバッグに入れている。では、どんな使い方をしているのだろう。

    「遊んだり、飲み会に行ったりするときに持っていくんです。旅行のときに1つをまるまる使い切ることもあります。サークルの合宿で車ごとに1つずつ配って、後日見返してみたりとかも」

    「いつも持ち歩いているやつは、本当に楽しい瞬間とか、綺麗な景色を撮りたいから、じっくり使います。さっきも街をぶらぶらしていて、光と影が好きな感じだったので撮りました!」

    お気に入りはインスタに

    ヨドバシカメラで現像はするが、プリントは「めんどくさいしお金もかかる」からしない。

    CDにデータを入れてもらって、MacBookに落とす。何枚か選んでiPhoneにAirdropをしたら、お気に入りをInstagramにアップし、LINEで友達にも共有する。

    「iPhoneで撮ってすぐアップする写真は、1日の報告ばっかり。思い出に残らないんです。でも、『写ルンです』は現像するのが1ヶ月後とか。こんなこともあったなあみたいに、日記を読み返している気分になれる」

    Instagramで「#写ルンです」を検索した。そこには、15万件以上の投稿があった。

    では、angeさんにとっての「写ルンです」とは……?

    「新しくないのかもしれないけど、私たちにとっては新しいものなんですよ」