推進派も反対する拙速議論でカジノ解禁法案が爆速成立へ 置き去りにされた課題は

    自民党議員も「そこまで急ぐ理由がわからない」

    「カジノ解禁法案」が12月6日、衆議院本会議で自民党と日本維新の会などの賛成多数で可決された。自民党は今国会での成立を急ぐ方針。党内や推進派からも「拙速すぎる」と批判が出るほどのスピードだ。

    法案にはカジノや劇場、ホテル、大型の会議施設などを含んだ「統合型リゾート(IR)」を推進する目的がある。

    賛成派は「観光立国や地域の発展につながる」、反対派は「ギャンブル依存症」「暴力団などの進出」をそれぞれ訴える。

    賛否が真っ二つに別れる中、会期末までの2週間で、この法律は成立に向かう。その拙速さに、新聞各紙は反対の論陣を張り、推進派からも懸念の声が上がる。

    推進派の専門家が議論不足を指摘するポイントは

    BuzzFeed Newsの取材に応じた国際カジノ研究所の木曽崇所長は、観光振興の面から、これまでカジノ推進を訴えてきた。今回の拙速な審議には「十分ではなく、強行とも言える」と苦言を呈す。

    特に足りていないのは、「刑法にまつわる問題」の議論と、反対派への真摯な回答だという。

    刑法にまつわる問題とは、現行の公営賭博やパチンコとカジノの兼ね合いのことを指す。

    「推進法案自体は、民間事業者に運営権限を直接付与するという前提で作られています。公営賭博が基本だったこれまでとは、180度違うものになる。にもかかわらず、その是非をめぐって、刑法に関わる論議がほとんどされていません」

    日本で現在、刑法の例外として許されている賭博は、公営賭博だけ。民間事業者が運営できるのはパチンコなどの「遊戯」に限られる。

    このような他の事業者との兼ね合いを検討しないと、「競馬は民営ではだめなのか、パチンコを賭博にできないのかという議論が上がってくる」という。

    「カジノ一点に限ったものではなく、周辺産業への影響も論議すべきではないでしょうか」

    不信感への懸念も

    木曽さんは、反対派が指摘するギャンブル依存症などの問題点に対しても、「きちんと回答できていない」と言う。

    「さまざまな懸念事項があるとの主張は当たり前のこと。そこに真摯に回答するのが推進派の義務なのに、残念ながら審議時間は足りていません」

    「今回の議論は、いままで推進派が積み重ねた議論すらも無視しているように感じます。きちんと説明するというスタンスでこれまで時間をかけてきたのに、こんな形で法律が通ってしまっては、国民の不信感につながるのではないか、と懸念しています」

    新聞各紙の反応は

    新聞各紙も、一斉に反対の論陣を張っている。カジノ推進派である産経新聞でさえも、早急な議論に懸念を表明した。

    朝日新聞は12月2日の社説「カジノ法案 危うい賭博への暴走」で、「最大の懸念のギャンブル依存症」と指摘した。

    読売新聞も同日、「カジノ法案審議 人の不幸を踏み台にするのか」という強い見出しの社説を掲載した。「ギャンブルにはまった人や外国人観光客らの“散財”に期待し、他人の不幸や不運を踏み台にするような成長戦略は極めて不健全」としている。

    産経新聞はこれまで、法案について「多くのメリットが期待される」と好意的に評価してきた。しかし、この日の「主張」では「カジノ解禁法案 懸念解消を先送りするな」と批判。朝日や読売と同様の疑問点を並べ、「多くの疑問を残したまま、駆け込みで事を進めている」と指摘した。

    与党議員からも反対の声が出ている。

    自民党の山本一太・参院予算委員長は11月28日、「今国会で国民の理解が十分に得られていない「カジノ法案」を強引に成立させることには賛成出来ない!」との記事をブログに投稿。こう強く批判している。

    「たとえ国会の会期が延長されるとしても、こんなに窮屈な日程の中で(国会の十分な審議もないまま)カジノ法案を強引に通すことには、どうしても賛成出来ない! そこまで急ぐ理由が分からない」