安倍首相が初訪問する真珠湾 アメリカ国民の「象徴」から和解は生まれるか

    75年前、そこでは何があったのか。

    安倍晋三首相が12月26〜27日、アメリカ・ハワイの真珠湾(パール・ハーバー)を訪問することがわかった。NHKなどが報じた。

    今年12月8日(日本時間)は、旧日本軍が真珠湾に奇襲攻撃をしてから75年の節目だ。太平洋戦争が始まるきっかけとなったこの場所を、日本の現職首相が米国大統領とともに訪問をしたことは、これまで、一度もない。

    真珠湾攻撃が始まったのは、1941年12月7日午前7時55分(日本時間8日午前3時35分)のことだ。

    旧日本海軍連合艦隊が、空母6隻と航空機約350機でハワイの米太平洋艦隊基地を急襲した。

    零戦などの戦闘機たちが、真珠湾に停泊していた戦艦「アリゾナ」や駆逐艦、航空機などを破壊。犠牲者はアメリカ側が2400人以上にのぼった。日本側は64人だった。

    攻撃の翌日のアメリカ議会では、1人をのぞいた全員が賛成し、対日宣戦布告を可決した。

    フランクリン・ルーズベルト大統領は演説で、「恥辱の中に生きるであろう日」と強調。「アメリカ合衆国は大日本帝国に突如として、意図的な攻撃を受けた」と述べた。

    議会で反対票を投じたのは、女性議員のジャネット・ランキン氏だけだった。この3日後には、ドイツがアメリカに宣戦布告をしている。

    新聞各紙は、差別用語の「ジャップ」を用いて、攻撃を激しく批判した。「リメンバー・パールハーバー」(真珠湾を忘れるな)の言葉は、対日戦争へと突き進むアメリカ国民を鼓舞するひとつのメッセージとなった。

    そんな真珠湾は、戦後もアメリカ国民にとって、ひとつの象徴的な場所であり続けた。沈没した戦艦アリゾナのうえに作られた追悼施設には、いまでも毎年、100万人以上の人たちが足を運んでいる。

    しかし、これまで日本の現職首相が訪問したことはなかった。

    一方で、今年5月には、オバマ大統領が現職のアメリカ大統領として初めて被爆地・広島を訪問した。

    これにあたり、安倍首相が真珠湾を訪問し、「返礼」するのではないかという憶測が流れた。この時点で開かれたオバマ氏との共同会見で、首相はそれを否定した

    安倍首相夫人の昭恵さんは8月、私的に「アリゾナ記念館」を訪問した。この際も、首相のハワイ訪問の予定について、菅義偉官房長官は「全くない」と語っていた

    節目である今年には、戦後初めて、日米共催で両国の戦没者を対象にした追悼式も開かれることが決まっていた。当地でも、安倍首相の訪問を望む声が上がっていたという。

    そんなさなか、安倍首相の訪問は発表された。12月5日、記者団に「犠牲者の慰霊のための訪問」と語った首相は、もうひとつの目的をこう語っている。

    「日米の和解の価値を発信する機会にもしたい」

    開戦から75年目の訪問によって生まれる、新たな「和解」。これから新たな局面を迎える日米関係に、どのような意味をもたらすのか。


    訂正

    冒頭、「日本の現職首相が訪問をしたことは、これまで、一度もない」としていましたが、1951年に吉田茂首相(当時)が訪問したという記録があったため、「日本の現職首相が米国大統領とともに訪問をしたことは、これまで、一度もない」に表現を修正しました。