築地市場の移転延期が、正式に決まった。東京都の小池百合子知事は8月31日の記者会見で、3つの疑問を強調した。
①「安全性への懸念」
都によると、豊洲では08年、環境基準の約4万3000倍の有害物質「ベンゼン」などが検出され、土壌汚染が発覚。都は、土の入れ替えや盛り土工事、地下水の浄化に総額849億円の予算を投入。さらに、地下水のモニタリングを2014年から2年間の計画で進めている。
モニタリング最終結果の公表予定は、来年1月上旬。当初の予定ではこの結果を待たずに11月に移転することになっていた。
過去のモニタリング調査で、ベンゼンの検出量は全て環境基準値以下だったが、小池知事は会見でこう指摘した。
「2年間の調査期間を安全性の確認と説得力において、譲ることはできない。生鮮食料品を扱う上で、食の安全は、生活者、都民の問題として大切に考えるべきだ」
②「巨額かつ不透明な費用の増加」
総事業費が5884億円に及んでいることにも苦言を呈した。
2011年段階は3926億円の計画だったが、建設費に関して1700億円以上増額したことに触れ、「4年間で建設費だけが突出して増額したのなら、きちんと精査する必要がある」と指摘した。
③「情報公開の不足」
最後に、情報公開のあり方も疑問視した。
市場関係者の一部からは、土壌汚染の問題だけでなく、「移転予定日が繁忙期」「新店舗の間隔が狭く経営しづらい」などの反対論や延期論が出ていた。
「こんなにお金をかけていながら、そこで仕事をする業者から、いまだに不安が多く出てくるのは構わないのか。849億円もかけて土壌汚染対策をしているのに、安全性への疑問が絶えないのはなぜなのか。適切な情報公開が行われておらず、伝わっていなかったのではないか」
「『既定路線でしょ』という考えはとらない」
都は、建築、土壌、市場経営の専門家が入る「市場問題プロジェクトチーム」を近く発足させ、都民や市場関係者の不安の払拭を図る。
チームは、来年1月上旬の地下水モニタリングの結果で安全性を確認し、移転時期を決定する。また、予定通りの移転を考えていた業者が契約を終えている設備のリース代などの支援を検討。予算が適正だったかも調べていくという。
「都民ファースト」を掲げ、都民の目線での政策を訴えた小池知事。過去の決定をこう一蹴した。
「小池都政では、『もう既定路線でしょ。一度決めたなら。もう作ってしまったのだから。何も考えなくても良い』という考えはとりません」