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沖縄で発見された「世界最古の釣り針」の信ぴょう性は? 釣り具メーカー「これは魚を釣れ…」

海外では「イヤリングにしか見えないぞ」

「沖縄県で、世界最古の釣り針が見つかった」

沖縄県立博物館・美術館が9月19日、発表した。釣り針は貝製で幅約14ミリ。使われていたのは、2万3000年前(後期旧石器時代)だという。

2012年に沖縄県南城市のサキタリ洞遺跡で出土したもので、地下約1メートルの地層にあった。

同じ地層からは、オオウナギやイラブチャーなどの骨を数十点発見。さらに、モクズガニの爪が1万点以上も出土した。

同様に見つかった貝のカワニナを科学的に調べる過程で、人間がカニを食べていた時期も判明した。カニの大きさは6〜8センチで、成長して大型になり、産卵を控えた秋に好んで食べていたことがわかった。

沖縄県立博物館・美術館の藤田祐樹主任(自然人類学)は、旧石器人の”美食家”ぶりに触れ、こう説明する。

「これまで、旧石器人はナウマン象など陸上のほ乳類を獲っていたイメージが先行していましたが、少なくとも、陸上の動物が少ない沖縄では、美味しい時期を狙ってカニや貝などの水産資源も活用して、長く安定した食生活を送ってきたことがわかります」

「製作途中の釣り針も見つかっています。魚の習性を理解したうえで、それを獲るために貝を岩で削って作っていたのでしょう」

この大発見に、Twitterでは「2万3千年前に魚を釣っていたと思うとわくわくしてくる」「日本人は器用ですね」など称賛の声が目立った。

沖縄で世界最古二万三千年前の貝殻製の釣り針が見つかるとかなんかすごい!

@blueoceanwalk / Via Twitter: @blueoceanwalk

一方、米学術雑誌「Science」が英文で報じると、海外の人からこんなコメントが…

「釣り針じゃない。どう見てもイヤリングだろ!」「漁師の立場からすると、この形では魚は獲れないよ」

Rebecca Hudson / Via Facebook: ScienceMagazine

釣り針は、巻貝の底の部分を割って、砂岩で磨き上げて作られたとみられる。現代の釣り針の形と似ているようにも見えるが、なんとも判断が難しい。

この針で魚を釣れるのか。BuzzFeed Newsは、国内大手の釣り具メーカーに聞いてみた。

釣り針かどうかを社内で話し合ったといい、こう回答してくれた。

「針の先端近くに、食いついた魚が外れないための『カエシ』がないため、判断はつきません」

仮に釣り針であるとするなら、魚を釣ることは可能なのか。

「一般的な釣り針の概念から、魚を釣ることは可能だと思います。針先が尖っていることと、針が全体的に丸みを帯び、魚を逃しにくい形状だからです。その形状から、魚を”引っ掛ける”ことは可能であると推測します。ただし、引っ掛けた魚との引き合いに耐えうる強度の素材であるかといった判断はできないので、あくまで形状からの判断です」

沖縄県立博物館・美術館の藤田主任もこう主張する。

「疑う意見はありますが、私たちはこれを釣り針だと考えています。まず、釣り針の形をしていること。さらに、同じ地層から魚の骨が多数見つかったことから、魚を獲るなんらかの手段があったのは明らかだからです。素材となった貝は、イノシシの骨よりも強度があります」

これまでの世界最古の釣り針は、東ティモールの同じく貝製の釣り針(2万3000〜1万6000年前)。国内最古は、神奈川県横須賀市の夏島貝塚で見つかった約1万年前のイノシシの骨製のものだ。

沖縄から、今回のものよりさらに古い釣り針が見つかる可能性はあるのか。

「この遺跡の地層から出土した食べ物や人骨で、少なくとも約3万5000年前から、人々が生活していたことがわかっています。その時代の地層からも釣り針が見つかることを期待せずにはいられませんね」

狩猟を中心に生活を営んでいたとされてきた旧石器人。この喜ばしいニュースにより、釣りをしている旧石器人のイラストが歴史の教科書に載る日も近いだろうか。