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大人のサイトから止まらぬ振込要求の実態 「親にも友人にも相談できなかった」

一人でトラブルを抱える子どもは多い。親はどうすれば。

突然届いたこんなメールに、恐ろしくて一人震える子どもたちがたくさんいます。

2007年。私は、高校1年生で携帯を使い始めた。ある日、メールが届き始め、一人で怯えた日々を過ごすことになる。

「ご利用いただき誠にありがとうございます」「来月○日までに○万円のお振込がなければ、法的措置を取らせていただきます」

アダルトサイトに飛んだこともあり、心当たりがないわけでもない。夜中にも止まないメールに、耳慣れない「法的措置」という単語。

これは、身に覚えがないのにお金を要求される「架空請求」の典型だと今ならわかるが、当時ネットリテラシーのかけらもなかった私は、コンビニから振り込もうか、とも考えた。

思春期で、入学早々だったこともあり、家族にも友人にも相談できずに悩んだ。とくに私は、”性的な話”をオープンに言えるタイプではなかったので、自分だけで解決しよう、と考え、不安はエスカレートした。

「そういうの俺もくる。詐欺だからメアド変えな」。数週間経って、勇気を振り絞って相談した友人が、私を救ってくれた。

最近の手口は、ますます巧妙になっている。

芸能人の名前や、男子なら馴染みのあるアダルトサイトの名前を使うなど…。

手口は、メールだけではない。独立行政法人・国民生活センターによれば、アダルトサイトにアクセスすると「登録完了」と表示され、 料金を請求されるケースが目立つ。また、アクセスするつもりのない人が、誤操作でトラブルに巻き込まれることもある。

「無視でいいだろ」で済ませられない人は多い。

全国の消費生活センターに寄せられる相談で、一番多いのがアダルトサイトに関するもの。2015年度まで5年連続で1位(16年度は集計中)だった。

そのうち、スマホでのトラブルが増え、15年度に過半数に。トラブルの元が、パソコンやガラケーからスマホに移ったことがわかる。

相談者は、男女問わず幅広い年代にいる。2011〜2016年度に相談した男性は、女性より約2.3倍多かった。

相談する前に、要求された金額を払ってしまった人もいる。2016年度に1人あたりが支払った金額の平均は、34万円を超えた

国民生活センターによると、今年1月に親から相談があった10代のある男性は、15万円を支払ってしまった。

彼は、スマホでアダルトサイトを閲覧中に、画面上をタップした。すると、「登録完了」「24時間以内に連絡を」と書かれた画面が表示された。

載っていた番号に電話をかけると、指示を出された。彼はその通りに、コンビニを3カ所まわり、プリペイド型の電子マネーを5万円ずつ購入。記載のある番号を伝え、15万円を失った。

その後、彼のスマホに別の番号から電話があった。次は、サイトへの入会金が”未払い”として、約20万円を求めるものだった。

息子の様子がおかしい、と気づいた親が、彼に事情を聞いて発覚、消費生活センターに相談したという。

グラフのデータは、あくまで相談した人の数だ。相談できずに、一人で悩む人も多くいる。

20代の男性たちが、学生時代の体験をBuzzFeed Newsに語ってくれた。

「フィルタリングがきっかけで」

「2週間くらい毎日嫌な汗をかいてました」。そう話すのは、22歳の男性だ。

携帯を持ったのは、小学5年生。アダルトサイトや出会い系に触れさせないように、と親がフィルタリングをかけていた。

そこで、親の目を盗んでは、父親の携帯を使うようになった。履歴を消しながら、動画や画像を見ていた。

中学1年の頃、サイトにあった「ここに電話すると、喘いでいる女性の声が聞こえる」という言葉にひっかかった。父親の携帯ではできないので、自分の携帯で電話をかけた。

女性の喘ぎ声が聞こえ始めた。しかし、5秒ほど経つと「登録ありがとうございます。○日までに振り込みをお願いします」という自動音声が流れたので、急いで電話を切った。

すぐに、SMSで「払わなければ、法的措置に出る」というメッセージが届き始めた。

電話もかかってきた。大人の声を真似して「いますぐには用意できない」と伝えて切ると、それからもっと電話がかかってくるようになった。

「親には絶対言えなかった。私立の中学に入学し、みんな友だちになったばっかりだったし、恥ずかしくて相談するなんて到底できませんでした」

ネットで調べると、「着信拒否すれば大丈夫」とあった。そうしてからは、かかってこなくなったという。

「失敗したから、どう対処すればいいか分かるようになりました」

「司法書士だった父親のおかげで」

父親の教育によって助けられた、と感謝するのは、23歳の男性。

中学2年生の頃、携帯ゲームが流行っていた。仲間はずれになりたくなくて、携帯を持った。

そんな彼に父親は、「こんなメールやハガキがくると嘘だよ」と言い聞かせていたという。司法書士として、架空請求に関する仕事をしていた。

ある日、メールが届いた。URLからサイトに飛ぶと、「登録ありがとうございました」「○万○円滞納しているので、振り込んでください」とあった。

「最初は、もちろんびびりました。でも、さすがに何万円分も使った覚えはないし、親のおかげで『これが架空請求か!』って気づけました」

それでも、親にも友人にも報告できなかった。嘘だと思っていても。

「親に見せて『これ本当の話だよ』って言われたらどうしよう…と。性的な話をしないキャラだったので、友だちにも言えませんでした」

それからは迷惑メールがきても、頻繁にメアドを変えて対処するようになった。

「親の話がなければ、架空請求だと思わず、払うか悩んだと思います。難しいですが、親に相談できる環境があったらいいですね」

親に相談できない子どもたち

女性は、「身に覚えがないから無視した」「アダルトサイトを見ていたけど、相手にしなかった」と答える人が多かった。

しかし、架空請求を本当だ、と捉えた男性は多く、話を聞いた5人全員が当時、親に相談できかった。今でも親から性につながる話をされるのが、恥ずかしい、戸惑う、と嫌がっていた。

BuzzFeedのスタッフには、小学生の子どもを持つ親もいる。「どう教えてあげればいいかわからない」「父親が教育しないので、子どもに本を渡した」などと話している。

「こんなメールやサイトに気をつけろ」と例を示し、子どもの性の話には触れずにストレートに教えてあげるのも良いかもしれない。

しかし、それだけでは十分ではない。

国民生活センター・相談情報部の担当者は、こう呼びかける。

「少しでも不安に感じたら、消費生活センターに相談してください。相談先があるんだ、と知ってもらいたいです」

その上で、トラブルを未然に防ぐために、以下の3つを徹底してもらいたいという。

  1. 不審に感じたサイト内の画像や動画、怪しいメールにあるURLを簡単にクリック・タップをしない。
  2. 業者に絶対に連絡しない
  3. 慌ててお金を支払わない

不安に思ったり、トラブルに巻き込まれたりした場合には、近くの消費生活センターを案内する消費者ホットライン「188(いやや!)」番に電話を。


BuzzFeedでは、4月17日から23日までの1週間を「性教育週間」(Sex Education Week)として、性にまつわる様々な記事を配信します。誰にとっても他人事ではないけれど、どこか話しづらい「性」。私たちの記事が対話のきっかけになることを願っています。