世の中には、メイクのノウハウを伝える雑誌が溢れている。友人たちはそれを読んで学んでいると聞いた。
かわいくなるにはいろいろあると思うが、メイクも一つだろう。
ぼくは、メイクでかわいくなる大変さを知らない。だから、体験したいと思った。
25歳のぼくは、元新聞記者で、いまはBuzzFeed Japanのニュース記者として働いている。
どこからどう見てもかわいくない。でも、せっかくメイクをするなら、かわいく見える写真を1枚だけでもほしいと思った。ぼくは「奇跡の1枚」を信じた。
「かわいく変身したいです」
有名タレントが通うトップヘアサロン「LOVEST青山店」にそうお願いした。担当は、カリスマ美容師の吉岡龍介さん(@lovestyoshioka)。
以前、原宿系男子に変身したときもお世話になった。
「本気出します」。その一言で、さらに気分は高まる。
来店した当初は、吉岡さんのテクニックを一つ一つ記事で伝えたい、とも思った。しかし、メイク道具が多すぎて無理だ、とすぐに判断した。
「上向いて」「下見て」「目を閉じて」ーー
指示を受けても、不慣れすぎてワンテンポ遅れてしまう。
吉岡さんの作業は、正確で早く、あっという間に別人に生まれ変わっていった。
「自分の顔を研究して、それに合ったメイクを探すのが大切ですよ。例えば、佐々木希さんになりたくても、パーツが違えばなれないから」
持参したウィッグのカットもしてもらった。ヘアメイクにかかったのは、計1時間半ほど。
「目にポイントを置き、それ以外に主張があまりこないようにしています。髪は、しっかりと巻かずに今っぽい質感のヘアにしました」
カラーコンタクトをつけて、吉岡さんにポージングを決めてもらう。
「なんか違うな」などと言われながら、肩を開いたり、首をひねったり無理な体勢を続ける(辛すぎ)。
ぱしゃり。やっぱりダメだ。
ぼくの顔では、かわいくなれないのか。そう諦めかけた。
しかし、30分ほどかけ、50枚以上撮り続けた結果、ついに出会えた!
その奇跡の一枚がこれだ。
少しはかわいく見えますか?
肩幅が広すぎるぼくでも
顔だけ撮ればこうなる!
ぼくがメイクをして気づけたこと
メイク中、吉岡さんは言っていた。
「メイクしている子は、みんな努力している。だから、メイクを褒めて『きれいだね』って伝えるのって大切ですよ」
いろんな努力があると思う。好きなタレントのメイクを真似したり、雑誌を読んだり…。
人によっては、数分でメイクを終える人もいると聞く。
けれど、たくさんメイクをしてきたからこそ、その時間で終えられるのかな、と思う。
慣れるまでの努力ってすごいこと。
メイクは誰のためのものでもない
そして、メイクのおかげで気分が明るくなったし、自信を持てる気がした。撮影を終え、この姿でオフィスに向かっているときもルンルンだった。
メイクをしてみて、ファッションと同じように前向きになれるって素晴らしい。ただ、かわいくなるにはこんなに大変なんだ…。そう気づけた。
吉岡さんは、メイクの持つ力をこう考えている。
「新しい自分に出会え、自分の可能性を広げてくれる魔法みたいなものです」