「偽善者って言われるんだろうな」それでもポケモントレーナーたちはゴミを拾う

    「子どもたちに胸を張れるような活動を」


    「ポケモンGO」で、公園の様子が一変した。レアなポケモンを求めるプレイヤーが昼夜を問わず集まる。

    主婦でブロガーの「ふぁる」さんは7月28日、多くのプレイヤーが集まる日中の世田谷公園をレポートした。

    ブランコなどの遊び場を占領するプレイヤーがいて、子どもたちが満足に遊べていない現状や、スマホの画面を凝視する横で、その子どもたちがゴミを拾い、分別していたことを伝えている。記事はハフィントンポストITmediaに転載され、大きな反響を呼んだ。

    ポケモンは多くの人を公園に呼んだ。一方で、ゴミ、騒音、渋滞、子どもの遊び場が減る。こういった問題も出ている。

    こうした状況を見かねて、高レベルのプレイヤーが集まるポケモンGOコミュニティの有志が、「自分たちができることを」と、公園のゴミ拾いを始めた。

    7月29日、午後10時30分。仕事終わりにゴミ袋と軍手を用意し、ふぁるさんがレポートしていた世田谷公園に集まった。

    企画をしたのは、都内の投資会社で働く二川さん(仮名)。ゴミ問題について、こう語る。

    「これだけ人が集まったら問題が生じるに決まっている。レベルが高いからって代表者面するわけではないけれど、やれることはやっていきたい。『自分で持ち込んだゴミは持ち帰る』。まずはそこからではないだろうか。ポケモントレーナーだからこそ、子どもたちに胸を張れるような活動をしたい」

    公園に設置されたゴミ箱はすでに満杯で、捨て口からはペットボトルが突き出ている。公園を周回してゴミを集める人と、ゴミを分別する人とに分かれた。

    ペットボトルや空き缶、弁当の容器、菓子の包み紙、コンビニの袋、タバコの吸い殻。いろいろなゴミが至る所に落ちている。飲みかけのジュースは中身を捨てて回収した。

    二川さんはゴミ箱の奥に詰まったものを取り出しながら、「どうせ偽善者って言われるんだろうな」と独りごちる。

    ゴミを分別していた二川さんに、一人の男性が声をかけた。

    「近所に住んでるの?」

    二川さんは驚いたように、こう返す。

    「いえ、ちょっと、ゴミが気になってしまって」

    世田谷公園の近くに住むこの男性は、ポケモンGOはプレイしていない。急に公園に人が集まるようになり、ゴミや路駐車が増えたことに驚いている様子だった。

    男性は、「悪いね。助かるよ」と微笑んで去っていった。

    コミュニティのメンバーがゴミ拾いをする姿を見て、同じようにゴミを拾ってくれるプレイヤーもいた。

    コンビニでゴミ袋を買ってきたという若い男性には、「これ使いなよ」と余っていた軍手を渡した。

    メンバーの疲れた顔がやわらぎ、笑みもこぼれた。

    男性は「またここに戻ってきます」と言って、木々の合間に消えていった。