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「どん詰まりのアメリカ」で、存在感増す新しい右翼「オルトライト」とは?

八田真行さんに聞いた。

ドナルド・トランプ氏が勝利したアメリカ大統領選の結果を受けて、alt-right(オルタナ右翼)と呼ばれるグループに、注目が集まっている。ネット発祥地、アメリカの「ネトウヨ」などとも呼ばれる存在だ。

トランプ次期大統領は、政権の右腕である首席戦略官に、オルタナ右翼との結びつきで有名な保守系ニュースサイト「ブライトバート」の元会長スティーブ・バノン氏を指名した。

「オルタナ右翼」とは何か。そして彼らは、トランプ次期大統領の政権運営に、どのような影響を及ぼすのか。米ネット文化に詳しい駿河台大学専任講師・八田真行さんに聞いた。


オルタナ右翼は、ネットメディアや掲示板、チャットルーム、Twitter、Facebookで育った運動です。

ネットの流行にうまく乗って情報を拡散したり、SNSをうまくつかったり、荒らし行為(trolling)やサイバー攻撃をしたりと、悪い部分も含めて「洗練」されたネットの使い方をします。

メンバーの中心は白人男性です。はっきりとした調査はありませんが、年齢はまちまちで、貧困層もいれば、富裕層もいる。白人以外も、女性も混じっています。

オルタナ右翼は、どんな主張をしているのか?

オルタナ右翼の主張は、あまり、まとまったものではありません。いろんな派閥があって、それぞれの主張はバラバラだったりします。あえて共通点を挙げると、次の4点でしょうか。

1. 反エリート

反エリートといっても、勉強ができるかどうかだけではありません。ひとことで言うと、首都ワシントンD.C.でのさばってる皆さんへの怒りですね。

2. 排外主義

特にメキシコ移民への反感が強いですね。福祉をむさぼっている、ドラッグの運び屋だ、という主張が典型的です。ムスリムへの恐怖感もあります。

3. 反フェミニズム

いわゆる女性蔑視です。

4. 反PC

Political Correctness(政治的な妥当性)への反発は、排外主義や反フェミニズムとも絡み合っています。

アメリカ社会に漂う「どん詰まり感」

アメリカはずっと、白人男性が主役の社会でした。でも今のアメリカは、多くの白人にとって「どん詰まり感」が、すごく強いんですよ。

白人としての誇りはあるけど、雇ってもらえないという人が増えてきています。企業から「雇う価値がない」と見なされてしまう。そういう層では、自殺率も高くなっているし、ドラッグも蔓延しています。

そんな白人労働者は、トランプを支持する割合が高いですね。

アメリカ全体で言えば、人種差別は公民権運動の頃に比べて大きく退潮しています。ただ、全てなくなったわけではない。

白人男性が主役だという価値観を持っている人たちにとって、今のアメリカ社会は「女性がのさばっている」とか、「外国人が悪さをしている」といった風に見えている。

ところがそういう価値観に基づいて、"素直に"モノを言うと、「レイシスト」、「女の敵」などと叩かれる。そういうケースが増えてきた。

アメリカで「レイシスト」と言われることは、社会的な破滅を意味します。彼らからすれば、女・子ども・マイノリティに対して言いたいことを言えない、ということになる。今起きていることは「白人差別」で、自分たちは「マイノリティ」なのです。

ところが、トランプの集会に行けば、みんなが声を大にしてそういった話をしていた。「これでいいんだ」と思わせたのが、トランプの最大の「功罪」でしょう。

エリートへの反発

アメリカでは、エリートへの信頼が大きく揺らいでいます。最大のきっかけは、低所得者向け住宅ローンの破綻とその後のリーマンショックでした。

わかりやすく言うと、エリートたちは「結果を出せていないのに偉そう」だと見られています。

オバマ大統領は「CHANGE」と言って当選しました。彼は黒人で、これまでのエリートたちとは明らかに違ったので、エリートに失望した人たちにも受け入れられました。

ところがオバマ時代でも、国全体の経済は発展したけれども、貧富の格差は広がった。ラストベルト(錆び付いた工業地帯)の使われなくなった工場が、再稼働し始めたわけでもありません。

いま厳しい状態にある、もしくはこの国の先行きに強い不安を感じている人たちからすれば、一つわかっていることは、ヒラリーが大統領になったらこの路線が続くということです。

初の女性大統領、それは結構ですよ。でも、彼女はもう何十年もアメリカの政界で活躍していますよね。「初の女性だからって、何が変わるの?」という気持ちを抱いている人も多い。

そういう人たちにとっては、「ヒラリー以外」の選択肢しかなかったのです。

共和党内の候補者選挙で、トランプが勝った理由の一つもこれです。他の候補たちは、総じて職業政治家でした。つまり、ヒラリーと同じで、新味がない。

自分たちの将来についての漠然とした不満が、ロウのように溜まっていた。ロウはそれだけでは燃えません。今回そこに、ロウソクの芯のような存在として登場したのがトランプだったのです。

オルタナ右翼とこれまでの右翼の違いは?

経済学者の松尾匡さんは、右翼と左翼を次のように分類しています。

世界を縦に切って「ウチ」と「ソト」に分けて、その間に本質的な対抗関係を見て、「ウチ」に味方するのが右翼である。

それに対して、世界を横に切って「上」と「下」に分けて、その間に本質的な対抗関係を見て、「下」に味方するのが左翼である。(図1)

この分類で行くと、ソトとの協調を進める共和党は右翼ではない。また、富裕層とうまくやろうとする民主党も左翼ではありません。

逆にこの分類で行くと、オルタナ右翼はとてもオーソドックスな「右翼」です。そして、富裕層への攻撃で支持を拡大し、ヒラリーと民主党の大統領選候補の座を争ったバーニー・サンダースも、オーソドックスな「左翼」でした。

これまでのアメリカでは、両極端な主張は支持されない、一番票を集められるのは中道路線だ、と考えられてきました。

ところが、その中道路線の人気がなくなってきたのです。共和党は2009年以降、「税金はもう十分」と主張して小さな政府を目指すティーパーティ運動に乗っ取られ、今回はトランプ主義に乗っ取られました。共和党の中身はもうスカスカです。

ネオコン、リバタリアンとペイオリコン

オルタナ右翼は、これまでの主流派に対するカウンター、反作用の動きです。

これまでの主流派はどんなものだったのか。

ブッシュ(息子)政権以降、共和党の主流派は「ネオコン」でした。ネオコンの特徴は、「小さな政府」、経済的・個人的自由の称揚、大企業優遇、グローバリゼーションや移民の推進、イラク戦争のような海外への積極関与です。

一方でオルタナ右翼は、移民反対、グローバリゼーション反対、自由貿易反対、ワシントンのエスタブリッシュメント反対、大企業反対。多くの部分で「真逆」です。

また自由至上主義の「リバタリアニズム」という党派もあります。オルタナ右翼とは共通部分が多いですが、自由貿易や移民問題では大きな隔たりがあります。

保守系の党派としては他に、キリスト教的な伝統的価値観を重視する「ペイオリコン」があります。ティーパーティ運動は、リバタリアニズムの流れを汲む運動ですが、最近は宗教右派の影響を強く受け、ペイオリコンに近づいています。

一方、オルタナ右翼は、宗教的戒律を重視しません。LGBTや同性婚、妊娠中絶やドラッグ合法化を支持していて、この点でペイオリコンとは同調できません。

トランプ政権とオルタナ右翼はどうなる?

まさにそこが今後の注目点です。トランプの周囲にはこれまで、一流とされる人たちがいませんでした。

トランプ自身には、今後のアメリカをどうするか、定まった見解がないように思えます。彼の公約の多くは実現不可能です。大統領という職にどこまで興味があるのかも、私はわかりません。

今後のアメリカは、政権内部で誰が実権を握るかによって、大きく変わるでしょう。

次期副大統領のマイク・ペンスは、ティーパーティ運動に関わる宗教右派です。進化論を否定していますし、インディアナ州知事時代には反LGBT的と言われる「信教の自由回復法」に署名もしました。

ペンスとオルタナ右翼との相性は、あまり良くありません。オルタナ右翼の大物と言われる投資家ピーター・ティールはゲイですし。

政権内部で、それぞれが派閥争いを始める可能性もあるでしょう。

トランプ政権の誕生は、これからのアメリカの流れを決定づけける?

トランプ支持は一過性の流れだと思います。アメリカの若者たちはリベラル派が多い。大統領選の出口調査でも、30代までの若者に限ってみればヒラリーが圧勝していました。

トランプはそのうち、大多数の失望を買って、4年でやめることになるのではないかと思います。ただ、影響が長く続きそうなものもあります。

それは最高裁の裁判官人事です。アメリカの最高裁判事は「終身制」で、死去するか自ら引退するまで、生涯現役です。

今の判事は80歳前後の人が3人いて、うち2人がリベラル系、もう1人が中間系と言われています。

もし、彼らがトランプの任期中に引退して、代わりに保守系の判事が選ばれたら、LGBT関連や人工中絶問題などで、保守的な判決がバンバン出る可能性があります。なかなか交代しませんから、そうした観点からは、リベラルにとって長い冬の時代が来るかもしれません。

バズフィード・ジャパン ニュース記者

Kazuki Watanabeに連絡する メールアドレス:Kazuki.Watanabe@buzzfeed.com.

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