女性初の東京都知事が誕生した夜、その隣に立ち続けた男は、満面の笑顔を浮かべていた。自民党衆議院議員の若狭勝さんだ。
「除名?できるのでしょうか」
自民党都連は、党所属議員やその親族が増田さん以外の候補を応援した場合、「除名などの処分対象になる」とする警告を出した。そんな中、自民党の現役国会議員として唯一、表立って小池百合子さんを応援したのが、若狭さんだった。
若狭さんは自民党を除名されるのか? BuzzFeed Newsの問いかけに対して、若狭さんはこう答えた。
「可能性はあると思っています。しかし、本当に除名できるのでしょうか?」
選挙事務所で
選挙結果が判明した後、大勢の記者たちが若狭さんを囲んで質問を浴びせた。
都連からは、どんなことを言われているのか。
「私に直接、批判的なことを、東京都連側が言ってきたことはないんです。が、少なくとも、相当厳しい見方を、小池ならびに私にしているというのは、いろいろなところでうかがい知ることはできます」
「私は後悔していない」
除名の一件は、警告文が都連から届いたことで知ったという。若狭さんは、こう反論する。
「小池候補を応援したことについては後悔していないし、自分の政治信念として、都民の目線に立って、都民のために、誰が都知事に適任かを、ごく当たり前に訴えさせていただいたというわけですから、本来除名の対象になるのか」
「一般の人の感覚とずれているのではないか、ということを都連の方ももう少ししっかりと分析・検証した方がいいと思います」
他にも、小池さんへの応援を検討していた自民党の国会議員はいた、と若狭さんは明かす。
「最終的には僕一人だったんですが、途中で何人かで応援に入ろうかという話はあったんです。それは実現しなかったのですから。いろんな総合判断があったんだろうと思います」
「除名をチラつかせるのは時代錯誤」
応援が実現しなかった背景には、件の警告文の影響もあったのだろうか。
「除名がどうのこうのというのは、心理的には抑止力になったと思います。ただ、自民党が推薦している以外の人を応援している例はありますし、有権者の審判を踏まえると、除名は難しいのではないかと思います」
都連が出した警告文には、ネット上でも疑問の声が続出した。若狭さんも「時代錯誤」と都連の対応を強く批判し、こう述べる。
「除名をチラつかせて締め付けることが、国民に支持を受けるのか、もう一度冷静に考えていかないと、組織として決して良い方向には行かない」
若狭さんは問題は自民党本部ではなく、自民党都連にあるという。何が一番の問題点だったのか。
ブラックボックスの存在
「東京都連は、重要なコンプライアンス違反があった。私は最初から小池さんが適任だ、増田さんは応援できない、と言って貫いていた。それにもかかわらず、東京都連は『全会一致』で増田さん支援が決まったという文書を東京都の自民党員、全員に配布した」
「私一人の少数意見を封じ込めて、抹殺している。それは組織として、今の現代社会においてはあるまじきことだと思っています」
キーパーソンが「都議会のドン」と呼ばれる内田茂・自民党都連幹事長だ。
「都連の中でも透明性が大事だと言ってくれる先生方が少なからずいますが、少なくとも内田幹事長をはじめとして、何人かはブラックボックスのようなところで、東京の政治を動かしている感がある」
今後はどう支える?
今後、小池さんをどう支えるのか。若狭さんは「全くの白紙」だという。
離党や、小池さんが辞めて空白になった東京10区からの出馬、さらには副知事への就任について、「それも選択肢の一つです」と答える。
「選挙中に、小池知事が誕生した暁には、私も、利権追及も含めていろんな形で力を尽くすと訴えていたので、その観点でいえば、これでハイ終わりというわけには到底いかない、と思っております」
若狭さんはさらに、小池さんが東京で地域政党を結成する可能性についても、「少なからずある」と述べた。
では、その中で可能性が一番高いのは?
「いや、今日の今日なので、今晩、夢の中で考えます」
若狭議員はそう言って、笑顔を浮かべた。