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電通事件で注目される「長時間労働」対策 エステ大手TBCが投じた一石

「退勤後、9時間は出社だめ」

大手エステサロン「エステティックTBC」と労働組合エステ・ユニオンは12月8日、勤務と勤務の間に9時間の休息時間(インターバル)を設ける労働協約を結んだ。厚生労働省で記者会見し、発表した。休息時間の確保で長時間労働を抑制し、ワークライフバランスを実現するねらい。対象は全国200店舗と本社の社員、合わせて約2000人。エステ業界としては初の取り組みだという。

最大手の広告代理店、電通で新入社員が過労死した事件などを受け、過労問題への意識が高まっている。そんな中、長時間労働対策の決め手と言われるインターバル規制を、エステ大手が導入することになった。

労働協約のポイントは次の4点だ。

(1)業務終了から、次の業務開始の間に9時間の休息時間を約束する。

勤務と勤務の間に、強制的に「9時間」以上、休ませる。

(2)健康配慮措置。

もし、11時間未満の休息時間が、1カ月で11日以上になった場合、ヒアリングや人員増など、さまざまな健康配慮措置をとる。

(3)9時間の休息時間が、雇用契約の始業時間に及ぶ場合、勤務時間とみなす。

例えば、前日夜に遅くなって、9時間の休息時間が「始業時間」に食い込んだら、休んでいてOK。働いていなくてもお金が支払われる。

(4)遵守できなければ、組合と協議の上、改善する。

最終的にはEUの規制である11時間の休息時間の確保を目指す。

3月に労働基準監督署から是正勧告

TBCは今年3月、違法な長時間労働や残業代の未払いがあったとして、労働基準監督署から是正勧告を受けた。

同社によると昨年以来、環境改善に力を入れており、現在は残業時間の自己申告制をやめ、ICカードで残業時間を管理するシステムを導入中だという。

同社の標準的な勤務スタイルは現在、午前10時45分〜午後8時15分。休憩は90分。実働8時間で、月平均の残業時間は20時間強となっている。

「エステ業界は長時間労働を招きやすい構造がある」

エステ・ユニオン執行委員の佐藤学さんは会見で、次のように話した。

「エステ業界では、人出不足が深刻化している。客の都合に合わせなければならないこともあり、長時間労働を招きやすい構造がある。これは、業界全体の課題となっている」

「単なる約束と違って、労働協約は違反すると労組法違反になる。協約を結ぶ意義は大きい」。

2014年には同じくエステ大手の「たかの友梨」もマタハラや長時間労働問題が発覚し問題視された。同社は翌年、産休を取得しやすい労働協約を結んでいる。

エステ・ユニオンは現在、業界およそ50社に組合員がいるといい、このような取り組みを他社にも広げていきたいと話していた。

「大手としての務め」

エステティックTBCを運営するTBCグループ執行役員の長南進亮さんは、次のように話していた。

「9時間のインターバル確保は、そんなに大変なことではない。長時間労働の心配なく働ける業界にすることが、大手としての務めだと考えている」

「時間管理をあまり意識していない若いスタッフが多い業界で、これまで労務管理が現場任せになっていたところがあった」「労務管理の意識・知識を、会社全体としてアップしていきたい」