LGBT関連の団体や個人でつくるグループが11月16日、衆議院第二会館で院内集会を開き、国会議員に法律を整備するよう訴えた。
LGBTに対する差別や不平等を解消しようという動きが、世界で加速している。2015年にはアメリカやアイルランドが国として「同性婚」を認めた。台湾でも、同性婚へ向けた法改正への動きが本格化している。
国内でも、東京・渋谷区を皮切りに、自治体が同性のパートナー関係を証明する動きが出始めた。だが、LGBTを理由にする差別はなくなっていない。
当事者たちの声
院内集会を主催した「性的指向や性自認に関する公正と平等を求める院内集会 実行委員会」の委員長で、NPOグッド・エイジング・エールズ代表の松中権さんは、このように切り出した。
「LGBTなど、セクシュアル・マイノリティのことは、まだまだ知られていません。差別や偏見もあり、将来暮らしていくことを不安に思っている人も多いです」
松中さんは、一橋大学法科大学院の学生がゲイだとバラされ、昨年8月に校舎から転落死した事件に言及しながら、次のように話した。
「もしかしたら、ベランダに手をかけていたのは自分だったかもしれないと思っています。僕自身、大学時代は(ゲイだと)カミングアウトしていなかった。世の中にカミングアウトしたのも、会社に入って10年後です。それまでは、ずっと自分のことを隠してきました」
「もちろんLGBT、セクシュアル・マイノリティの理解を広げていくことは、大事だと思っています。ただ、最後の最後、もし何かがあった時、受け止めるセーフティ・ネットがないと、命に関わってしまうこともあります」
「理解を進めながらも、差別はNOだときちんと言える社会を作っていきたい。何か問題が起きると、どうしても当事者個人の責任に話がいってしまうんですが、私たちが生きている社会自体を変えていかなければいけない。そのための大きなきっかけが法律です」
同性カップル
渋谷区の同性パートナーシップ証明書・取得第1号の増原裕子さんは、次のように語った。
「同性の夫婦も男女の夫婦も、何も変わりません。でも、まだまだ根強い差別や偏見が残っています。私は、同性が好きだと気づいた10歳から22歳まで、そのことを誰にも言えずに苦しみました。親にも隠していました」
アスリートとして・・・
元女子フェンシング日本代表の杉山文野さん。
「合宿などもあり、スポーツ選手がカミングアウトするのは難しい。私自身、現役時代はカミングアウトできませんでした。カミングアウトしている日本のアスリートは皆無に等しい。それが日本社会を象徴しています」
杉山さんが注目しているのが、2020年の東京オリンピックだ。
今年のリオ五輪は、カミングアウトしたLGBTの選手が、過去最多の50人以上参加した。女子ラグビーの選手がピッチ上で同性の恋人からプロポーズされる、という一幕もあった。
杉山さんは「リオからのバトンをどう繋ぐか、注目が集まっている」と強調していた。
職場での差別的言動
NPO法人・虹色ダイバーシティ代表の村木真紀さん。
「私たちが実施したアンケートでは、当事者の約6割が『職場で差別的言動が多い』と回答しています。ここ3年、同じアンケートをしていますが、職場での差別的言動は減っていません」
国会での議論は・・・
国会では昨年、超党派のLGBT議員連盟が立ち上がった。だが、与党内には消極的な声もあり、自公が「理解促進法」、野党が「差別解消法」を提唱するなど、与野党で議論が割れている。
この日の集会では、LGBT議員連盟の馳浩会長(自民党)があいさつし、次のように語った。
「多くの国民に、この問題はどういう問題であるのかを理解していただきたい。そのために当事者の皆さんが、声をあげやすいような環境づくりをするのが国会の役割です」
だが、法案内容やスケジュールなど、具体的な話はなかった。
LGBT議員連盟の細野豪志・衆院議員(民進党代表代行)は、次のように話した。
「2020年にはできれば、この国でも同性婚、少なくともパートナーシップがしっかりと認められるような社会にしていきたい。そのためにはまず(差別解消に向けた)1歩を踏み出しておかないと、2歩目を踏み出せません」
署名活動も
松中さんは"世界に誇れる日本へ!LGBTへの差別をなくして、「ありのままの自分」で生きやすい社会を実現する、法律をつくってほしい!"と題して、ネット署名活動を展開している。
実行委は来春、LGBTに関する議題を話し合う「レインボー国会」というイベントを計画しているという。