• worklifejp badge

電通、ドンキ、佐川……ブラック企業大賞2016ノミネート 「長時間労働」が特徴

ウェブ投票も始まっている。

「ブラック企業大賞2016」のノミネート企業10社が12月1日、発表された。労働問題に関わるNPOや弁護士、ジャーナリストらでつくる実行委員会が、「誰もが安心して働ける環境をつくることをめざして」開催しており、今年で5回目。

ノミネートされた企業と理由は、次の通り。今年は「長時間労働」のケースが目立ったという。

1. エイジス

棚卸し代行業。「違法な長時間労働を行っていた」として5月19日、厚生労働省に社名を公開された。4カ所の営業所で63人の従業員が月100時間を超える残業を、違法にさせられていた。1カ月の時間外労働が、最長197時間に及ぶケースもあった。

2. 電通

広告代理店。24歳の新入社員・高橋まつりさんの過労自殺が認定された。電通では13年前にも、入社2年目の男性社員が過労自殺と認定され、3年前にも男性社員(30歳)が過労死と認定されている。2016年10月には厚労省が電通を家宅捜索した。

3. ドン・キホーテ

小売業。3カ月で最長415時間45分の時間外労働をさせた疑いがあるとして、1月に書類送検された。東京簡易裁判所は2016年11月、2014年10月から15年4月、都内3店舗の従業員4人に違法な長時間労働をさせたとして、罰金50万円を命じた。

4. プリントパック

印刷サービス業。京都府労働委員会は2016年7月、労働組合員に対する昇級差別や、ボーナスカットなどがあったとして不当労働行為を認め、差額の支払いを命じた。(プリントパック側は命令を不服として、中央労働委員会に再審査を申し立てている)

5. 関西電力

電力業社。2016年4月、高浜原発1、2号機の運転延長申請を担当していた技術系管理職の男性が自殺した。時間外労働は、16年1月に月100時間を超え、翌月には200時間あった。男性の自殺は長時間労働による過労が原因だとして、労災認定された。

6. 佐川急便

運送業。2011年12月に、経理担当の男性社員が自殺した。2016年10月、仙台地裁は、男性が上司にエアガンで打たれたり、唾を吐きかけられたりしていたと認定。「社会通念上認められる範囲を逸脱した暴行または嫌がらせ行為」として、うつ病になったのは業務が原因と認めた。

7. サトレストランシステムズ

「和食さと」などの飲食店を展開する飲食業。08年4月から15年11月までに、長時間労働や残業代未払いなどで、全国の労基署から18回指導を受けた。さらに、2015年12月に大阪労働局の「かとく(過重労働撲滅特別対策班)」の強制捜査を受け、2016年9月には、会社や社員が書類送検された。

8. 仁和寺

世界文化遺産の寺院。宿坊の元料理長の男性が、長時間労働で精神疾患を発症したとして裁判を起こした。京都地裁は16年4月、男性の訴えを認め、4200万円を支払うよう寺に命じた。男性は年間356日出勤(うち349日は連続出勤)させられ、多い月で240時間以上の時間外労働をさせられていた。

9. ディスグランデ介護

「茶話本舗」のFC店を運営する介護事業者。女性従業員は人手不足でまともに休憩が取れないのに、毎日1〜2時間が「休憩時間」とされ、その分の給与がもらえていなかった。そのことで2016年7月付で、仙台労基署から是正勧告を受けた。

10. 日本郵便

郵便事業。11年12月、当時41歳の男性社員が心疾患で亡くなった。福岡高裁は16年10月、上司のパワハラと、男性のうつ症状悪化との因果関係を認めて、330万円の支払いを命じた。他にもパワハラに関する問題が多数指摘されている。

実行委員会は、「ブラック企業」を次のように定義している。

1. 労働法やその他法令に抵触し、またはその可能性があるグレーゾーンな条件での労働を、意図的・恣意的に従業員に強いている企業。

2. パワーハラスメントなどの暴力的矯正を常套手段として従業員に強いる体質を持つ企業や法人。

ノミネートは、裁判で企業側の非が確定したケースや、行政処分があったケースなど、「広く社会的に明白に問題があるとされた企業」にかぎっているという。

具体的な指標としては、長時間労働やセクハラ・パワハラ、いじめ、低賃金、育休・産休などの不備、労働組合への敵対度、派遣労働者差別や、残業代未払いなどをあげている。

公式サイトではウェブ投票が始まっている。

実行委は受賞式とシンポジウムを12月23日に都内で開く。例年、ノミネート企業には招待状を送っているが、これまで出席した企業はゼロだという。