「総理のご意向」文書で揺れる加計学園問題とは… 安倍首相との関係は?

    新たな「文書」に注目が集まっている。

    安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人「加計学園」の獣医学部新設について、「総理のご意向」などと記した文書が文部科学省にあったと5月17日、朝日新聞が報じた。

    この文書を手に入れたとする民進党・玉木雄一郎議員は5月17日、衆院文部科学委員会で文書の真偽について尋ねた。松野博一文部科学大臣は「作成された可能性はあると思う」「確認したい」などと答えた。民進党は疑惑追及を強める方針だ。

    学園と安倍首相との関係は?

    加計学園は、岡山県に本拠がある学校法人で、全国に3つの大学、高校、中学と2つの専門学校を運営している。焦点となっている獣医学部は、加計学園の運営する岡山理科大が愛媛県今治市に新設する計画で、2018年4月に開校予定だ。

    そして、加計学園の加計孝太郎理事長は、安倍首相と米国留学時代に親交を重ねた仲だ。

    千葉日報によると、安倍首相は2014年5月24日、加計学園が運営する千葉科学大の記念式典で、「どんな時も心の奥でつながっている友人、私と加計さんもまさに腹心の友だ」と述べた。

    しかし、学部新設への関与については、安倍首相は強く否定してきた。2017年3月13日の参院予算委で安倍首相は次のように答弁している。

    「彼は私の友人ですから、会食もしますし、ゴルフもします。しかし彼から私は頼まれたことがありません、この問題について。ですから働きかけていません。働きかけて決めているんだとしたら私は責任とります。当たり前じゃないですか」

    これまでの経緯

    獣医学部の新設は、政府の規制緩和(国家戦略特区)によって、許可された。

    獣医学部の新設が認められるまでの経緯は、次の通りだ。

    • 2015年6月 愛媛県今治市が手を挙げる。
    • 2016年3月 京都府と京都産業大が手を挙げる。
    • 2016年11月 国家戦略特区諮問会議が「空白地域に限り認める」方針=京都はムリ。
    • 2017年1月 内閣府、文科省が「1校に限り認める」告示。
    • 2017年1月 加計学園だけ応募→認定。

    朝日新聞によると、文科省がこの文書を作ったのは2016年9月〜10月にかけてだと、文科省関係者が証言している。

    これは、首相が議長をつとめる政府の特区諮問会議が「方針」を示す直前の時期だ。

    文書の中身は?

    朝日新聞によると、「獣医学部新設に係る内閣府からの伝達事項」という題名の文書には、「平成30年(2018年)4月開学を大前提に、逆算して最短のスケジュールを作成し、共有いただきたい」「これは官邸の最高レベルが言っていること」などと書かれているという。

    一方、「大臣ご指示事項」という文書では、松野博一文部科学大臣が「(2018年4月までに)必要な準備が整わないのではないか」などと懸念を示したという記載がある。その文書の冒頭には「内閣府に感触を確認してほしい」と書かれているという。

    その後の「大臣ご確認事項に対する内閣府の回答」という文書には、次のように記されているという。

    「設置の時期については、今治市の区域指定時より『最短距離で規制改革』を前提としたプロセスを踏んでいる状況であり、これは総理のご意向だと聞いている。」

    菅官房長官は「問題ない」

    菅義偉官房長官は5月17日の記者会見で、文書について「承知していない」「作成日時や作成部局が明確になっていない」などと述べた。これまでの首相答弁には問題がないとしている。