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貧困に陥ったLGBTをどう支援するのか? 仲間同士の助け合いでは限界も…

本来あるべき支援が、届いていない。

「LGBTと貧困」をテーマとするシンポジウムが5月3日、都内で開かれた。ひとくちにLGBTといっても社会的な環境はさまざま。裕福な人もいれば、そうでない人もいるが、ひとたび貧困に陥ると、さまざまな偏見から社会的な支援を受けにくい現状がある。そうした課題を、LGBTの当事者と貧困問題の専門家が話しあった。

シンポジウムは、LGBT当事者でなんらかの問題を抱える人の自助グループ「カラフル@はーと」と東京大学教養教育高度化機構の主催。東京レインボープライドの公式イベントとして開かれた。

具体的には……。

レズビアン・バイセクシュアルを中心とするセクシュアル・マイノリティ支援を20年以上続けている大江千束さんは、こんな相談ケースを紹介した。

生まれた時に割り当てられた性別は男性だったが、自分自身を女性だと認識している、トランスジェンダー女性。

彼女は、自分の身体への違和感をぬぐい去るため、全身脱毛に数十万円使った。さらにホルモン投与を受け、性別適合手術(SRS)も受けた。これらには健康保険が使えず、100万円単位でお金がかかっていく。費用を払うため、借金もした。

だが、SRSを受けた後も、違和感が完全に払拭されたわけではなかった。声が気になる。のどぼとけが気になる。骨格が気になる……。ふと気づくと、借金まみれになっていた。

そうなると、望んでいる性別に近づくことを、止めざるを得ない。さらに借金返済の重圧もある。彼女は精神的に悪影響を受け、何もできない状態になった。

そこで、債務整理のために司法書士に相談した。ところが、借金の理由を説明すると、「身勝手」などと言われて、さらにショックを受けることになった。

彼女は、最終的に大江さんのもとにたどり着き、そこからトランスジェンダーの事情を良く知っている弁護士につながることができて、やっと好転に向かったそうだ。

社会的な課題が

これはあくまで一例で、偏見や無理解に阻まれ、LGBTが本来なら受けられるはずの社会的支援を受けられないケースは数多くあるという。

シンポジウムでは他にも、男女の賃金格差ゆえにレズビアンカップルが貧困に陥りやすい。DVから逃れるためのシェルターに男性やトランスジェンダーが入りにくい。生活保護を受けるまでの滞在場所としての簡易宿泊所をトランスジェンダーは利用しにくい……など、さまざまな課題が指摘されていた。

LGBTコミュニティ内部にある相談窓口は、対応分野が限られている。参加者からは、もっと他分野の専門家らと連携する必要がある、という声が出ていた。


BuzzFeed Japanは、4月26日より5月9日まで「LGBTウィーク」として、LGBTに焦点をあてた記事やコンテンツを集中的に発信します。

13人に1人は、セクシャル・マイノリティ。これは株式会社電通が2015年、成人約70,000人を対象に調査した結果です。LGBTをはじめとする性の多様性は、そのまま社会の多様性へとつながります。私たちは今回の特集を通じて、多様性をポジティブにとらえる機会を提供したいと考えています。

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