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「3つの保育園で9年間働いた。残業代はもらったことがない」 保育士たちが語った現場

保育士たちでつくる組合が、厚生労働省に申し入れ

保育士でつくる労働組合が3月28日、「劣悪な労働環境を改善して」と厚生労働省に申し入れ、記者会見した。保育士たちはサービス残業やパワハラ、子どもへの虐待などの実態を口々に語り、業界全体の体質改善を訴えた。

「タイムカード打刻後の仕事」が常態化

保育士になって9年目の女性(29歳)は、3つの保育園で働いたことがあるが「残業代はもらったことがない」と話す。

2013年4月から働いている東京都多摩市の認証保育園では、退勤のタイムカードを押した後に仕事をすることが常態化している。残業は通常時で1日1時間以上、行事前などは2〜5時間に及ぶことがある。この園の「賃金台帳」には、残業代の欄が存在していなかったそうだ。

残業代を支払ってほしいと請求しても、「やり方次第でできるだろう」などと、相手にされなかったという。

勤務時間内は基本的にずっと、子どもの相手をしていなくてはならない。書類仕事をこなすためには、子どもから目を離すわけにはいかない。そのため、サービス残業や仕事の持ち帰りを余儀なくされているのだという。

深刻なパワハラも

問題はサービス残業だけではない。2016年4月から、埼玉県川口市の認可保育園で働いている、経験8年目の保育士女性(32)は「休憩もろくに取れない」と話す。

「子どもが寝ている間に休憩することになっています。でも実際は、寝ている子どもが息をしているか、定期的に確かめる『ブレスチェック』があるので、休めないんです」

パワハラ問題もある。女性はこれまで4つの保育園で働き、多くの新任保育士がいじめられ、潰れていく事例を見てきたという。

たとえば園長が、子どもの前で保育士に対して「音痴だから歌わない方がいいよ」「かっこわるい」「へたくそ」などと言い放つ場面を目撃した。それを見ていた子どもたちは、その保育士を軽く見るようになってしまったという。

子どもへの虐待を目にすることもあった。新卒で入った保育園では、子どもを叱るときに、トイレに閉じ込めた先輩保育士がいた。親から「子どもが保育園に行きたくないと言っている」と連絡がきたので、意を決して園長に「なんとかしないとまずい」と相談した。

だが園長からは「彼女(先輩)は彼女なりの考えがあってやっているんだから、あなたが口を出すことじゃない」と言われたという。

2人の見てきた職場ではこうしたことが積み重なって、保育士が職場に定着せず、次々と離職しているそうだ。

「労基法違反の相談が相次いでいる」と組合

記者会見したのは、個人加入の労働組合「介護・保育ユニオン」。2016年6月の組合発足からこれまで、保育園関連で145件の相談があり、うち8割超が労働基準法違反のケースだったという。

組合は、保育士が不足する背景の一つが、こうした労働環境だとみている。これを改善するため、労基署による実態調査と、国の保育士配置基準を見直しを求めたという。