【森友学園】籠池理事長の証人喚問 なぜ「偽証罪」に問えないのか?

    国会の証人喚問で、偽証罪での告発は、これまで24件だけ。

    大きな注目が集まった森友学園・籠池泰典理事長の証人喚問。そこで何度も登場したのが「偽証罪」というキーワードだった。籠池証人の発言を問いただす際、議員から繰り返し「偽証罪もありうる」といった言葉が投げかけられていた。

    だが、時事通信によると、検察幹部は籠池証人を「現時点で偽証罪に問うのは難しい」とみている。

    どうしてなのか?

    まず、ルールを確認する。

    証人喚問のルールを定めた「議院証言法」には、「この法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、3月以上10年以下の懲役に処する」(第6条)と書かれている。

    これがいわゆる「偽証罪」だ。

    このルールを見る限り、籠池氏の証言内容が事実でなければ、偽証罪に問えるように思える。

    だが、刑事弁護を数多く手がけてきた児玉晃一弁護士は「単に証言内容が事実に反するというだけでは、偽証罪にはならない」と話す。

    「裁判例を調べてみましたが、偽証罪に問えるのは『あえて、自分の記憶に反する内容を証言した場合』というのが、圧倒的多数の見解でした」

    つまり、偽証罪に問えるのは、「記憶の上ではAなのに、あえてBとウソをついた場合」ということだ。

    23日午後、衆議院では、籠池証人が「大阪府や、松井一郎知事らの意向が私学審議会への圧力になったと推察している」と自らの考えを述べた。それに対して、議員は「偽証の疑いがある」「はっきり言わないと偽証になる」などと繰り返し述べていた。

    児玉弁護士は指摘する。

    「この籠池証人の発言を偽証だというためには、籠池証人が、松井知事の意向が私学審議会への圧力になったと本心では思っていないのに、あえてウソをついたと証明する必要があります」

    もし、それを証明できるとすれば、どういう証拠なのか?

    「たとえば、籠池証人がつい先日に、正反対の発言をしていたという記録。もしくは、証言内容と矛盾する記録で、忘れるはずがないようなもの。そういったものが見つかれば、偽証の有力な証拠の一つになると思います」

    「しかし、いまのところそうした証拠は表に出てきていません。それだと偽証罪に問うのは難しい。検察官も、いまある証拠では立証できないと判断しているのでしょう」

    証人喚問での「偽証」告発、これまで24件だけ

    偽証罪を立証するためのハードルは高いため、そもそも告発に至るケースが少ない。衆参両院によると、国会の証人喚問で偽証罪の告発を受けたケースは衆議院で20件、参議院で4件だけだという。

    児玉弁護士は次のように指摘していた。

    「法律家の立場からは、そうした証拠もないのに『偽証だ』というのは、根拠がない的外れな発言に思えました。仮に、裁判で弁護士があんな風に『偽証だ』と脅しながら尋問をすれば、品位を害するとして、懲戒請求をされてもおかしくないように思えます」