【原発避難訴訟】前橋地裁、国と東電の責任認める 自主避難者にも賠償

    注目された全国初の判断で一部勝訴。「大きな力になる」と弁護団

    東京電力・福島第一原発事故の責任を問う集団訴訟が全国各地で起きる中、前橋地方裁判所(原道子裁判長)は3月17日、国と東電の責任を認め、3855万円を支払うよう命じる判決を出した。

    原告は、群馬県などに避難してきた45世帯の137人。1人あたり約1100万円、総額およそ15億円の慰謝料を求めた。争点は、国・東電の原発事故の責任問題と、東電が支払っている賠償額の妥当性だった。

    判決の骨子は次の通り。

    事故原因

    津波が原発に到来して、給気ルーパから浸水し、非常用配電盤が被水してその機能を喪失したことが原因。

    東電は予見可能

    東電は、非常用電源設備等の安全設備を浸水させる規模の津波が到来することを遅くとも2002年には予見可能だったし、2008年5月には実際に予見していた。

    結果回避もできた

    東電が結果を回避する措置を講じることは、期間・費用の点からも容易だった。

    侵害された利益

    「自己実現に向けた自己決定権を中核とする人格権としての平穏生活権」

    その内訳は、(1)放射線被ばくへの恐怖不安に晒されない利益、(2)人格発達権、(3)居住移転の自由及び職業選択の自由、(4)内心の静穏な感情を害されない利益を包括する権利。

    なお、健康被害や財産権侵害は含まないとした。

    相当因果関係

    本件事故によって、想定される被ばく線量が相当なものへと高まったかどうかや、年齢、性別、職業、避難に至った時期及び経緯等の事情並びに接した情報のもとにおいて、生活の本拠の移転が、本件事故との関係で、法的に相当かどうかについて、「個別に検討することが適切」とした。

    国の責任

    国は、結果回避のための措置を講じるよう、命令する規制権限があったと認定。それを行使しなかったのは、「著しく合理性を欠き、国賠法1条1項の適用上違法」とした。

    認められた金額

    原告137人のうち、請求が認められたのは62人だった。認容額は、あわせて3855万円だった。国と東電は連帯して、これを支払うよう命じられた。

    なお、137人のうち、避難指示区域内の原告は72人で、うち19人が認容された(最高350万円・最低75万円)。

    また、自主避難区域内の原告は58人で、うち43人が認容された(最高73万円・最低7万円)。

    原発事故をめぐる集団訴訟は、全国18都道府県で、約1万2000人あまりが起こしている。前橋地裁のケースは、そのうち最初の判決として、大きな注目が集まっていた。

    報告集会には、全国で集団訴訟を起こしている関係者も大勢集まった。福島・浜通り弁護団の米倉勉弁護士は「大きな力になる」と判決を歓迎した。