Posted on 2018年9月22日

    アメリカの核施設「ハンフォード・サイト」で連続するプルトニウム被曝事故

    「いまは2018年だ。プルトニウムで人を被曝させるなんてあり得ない」。ワシントン州東部にある核施設群ハンフォード・サイトで働く従業員はそう語る。

    2017年12月に入ってすぐ、ワシントン州東部にある核施設群「ハンフォード・サイト」の西端で、ある噂が飛び交い始めた。

    このサイトで働くボー・ジェイ(Bo-J)は、昼休みになると、不安げな様子の同僚たちと一緒に、作業着から放射性粒子が検出されたことや、新たに立ち入り禁止になった汚染区域のことを話し合った。

    ボー・ジェイ(仕事に支障が出ないよう、昔のニックネームを使っている)はBuzzFeed Newsに対し、「それは噂であって、確かな話じゃなかった」と述べる。「そして、次に話が出たときは、もう作業停止になっていた」

    2017年12月13日に、従業員6人が着ていた作業着から放射性物質の「陽性」反応が出ると、労働組合は作業の継続を拒否し、解体作業は中断された。それが、ハンフォード・サイトでも最大規模の汚染事故のはじまりだった。

    ハンフォード・サイトは、長崎に投下された原子爆弾用のプルトニウムが製造されていた広大な核関連施設だ。その解体と除染が終わるのは今世紀末だと言われている。

    アメリカ政府から作業を委託されている企業、CH2M Hill Plateau Remediation Company(以後、CH2Mヒル)は、労働組合が提示した要求にすぐさま応じ、その後、作業は再開された。ところがその翌日に、立ち入り禁止となっていた解体作業区域の外で、放射性粒子の陽性反応が出た。放射性粒子が封じ込められていないという不吉な兆候だ。

    従業員たちは慌てて検査を受けた。ボー・ジェイは、「糞キット(shit kit)」と呼ばれる、生クリーム容器に似た白いプラスチック製のチューブに便を採取すると、東海岸にある検査機関に送って結果が出るのを待った。

    言うまでもなく、ボー・ジェイの仕事はつねに危険と隣り合わせだ。被曝を避けるために、白いつなぎの作業着にブーツ、ブーツカバーを身につけ、手袋を何枚か重ね、エアフィルターのあるフード付きフェイスマスクをかぶる。放射線ががんや不妊症を引き起こすことはもちろん、どんなに気をつけていても事故が起きうることは承知していた。

    とはいえ今回は、2017年に入ってハンフォード・サイトで起きた3度目の汚染事故だった。2度目は6月に起きた。ボー・ジェイの検査結果は陰性だったが、仲間のうち31人は運が悪かった

    だからボー・ジェイは、サイト内を強風が吹き抜けるたびに、微小な粒子が、自分の肺の中に入り込んでそこにとどまるのではないか、妻と子が待つ家へと走らせる自家用車の周りを舞ったりしているのではないか、と気を揉んだ。

    そして、事故が繰り返し起きたのを受けて、ボー・ジェイやその仲間、同州選出の上院議員2人は、CH2Mヒルならびに監督省庁であるエネルギー省は、迫りくる脅威から従業員を守るという義務を怠っていること、一般市民を危険にさらしかねないことを訴えた。

    トランプ政権は、現在保有している核兵器の現代化を図り、さらに新たに核開発を推進しようとしている。しかしそうした決断が、長年におよぶ環境への影響を招くことは、ハンフォード・サイトで発生している放射能を巡る危機的状況を見れば明らかだ。

    冷戦が終結して以降、アメリカ国内のあちこちにあるかつての核関連施設を解体・除染するために、連邦政府は1000億ドル以上を投入してきた。その結果、数百人の従業員が健康被害を受けた。その数はひょっとしたら数千人に上るかもしれない。

    しかし、終わりはまだまだ見えない。エネルギー省の推定によると、ハンフォード・サイトの解体・除染が完了するまでには少なくともあと50年が必要で、さらに1070億ドルがかかるという。

    United States Department of Energy

    プルトニウム最終処理プラント(PFP)にある換気筒の解体作業(2017年7月に撮影)

    2018年2月のよく晴れた午後、ボー・ジェイは検査結果を聞かされた。何の変哲もないオフィスに腰かけている彼に向って、CH2Mヒルの医師は、プルトニウムとアメリシウムという2つの危険な放射性物質の検査で陽性反応が出たと告げたのだ。

    彼は激しく動揺した。「自分の体の中にあって、放射線を発している。発がん性物質なんだよ」とボー・ジェイは言う。

    12月の事故が起きてから被曝したハンフォード・サイトの従業員は少なくとも11人いる。ボー・ジェイはそのひとりだ。2017年に入ってからの被曝者は合計で42人に達した。さらに、最低でも車両36台が陽性反応を示しており、うち2台は、除染前にハイウェイを走行して、サイトと従業員の自宅を一往復している。

    今までのところ被曝量は、ハンフォード・サイト従業員にとって法的に安全ではないとされる基準値には達していない。しかし健康面を考えると、そういった発がん性物質のなかには、安全な許容レベルが存在しないものもある。きわめて短い期間に事故が相次いでいることで、ハンフォード・サイトを数十年にわたって見守ってきた専門家でさえも危機感を抱いている。

    ワシントン州保健局で放射性物質の大気放出に関する監督を行うジョン・マーテルはBuzzFeed Newsに対し、「私はこの分野で20年間働いていますが、こんな事態は初めてです」と語った。

    2017年12月の事故から7カ月が過ぎたが、解体作業はまだ再開されていない。エネルギー省が調査を行っているが、BuzzFeed Newsが確認した数百の内外文書、また20人を超える作業員や科学者、連邦政府ならびに州政府職員のインタビューによれば、汚染の全体像はまったくつかめていない。

    2018年7月16日に社内で共有された通知で、汚染事故から2カ月後に、解体区域の風下約1.6キロメートルの地点でプルトニウムとアメリシウムの陽性反応が出ていたことが明らかになった。また5月半ばには、プラントの南およそ400メートルの地点の道路わきで放射性粒子が見つかっている。

    United States Department of Energy

    プルトニウム最終処理用のグローブボックス(被爆を防ぐためのゴム製手袋付き密閉容器)を解体する作業員。

    多くの従業員が恐怖を感じ、うんざりしている。被曝した従業員の少なくとも1人が、ハンフォード・サイトの仕事を辞めて他州へと引っ越した。陽性反応が出た車の持ち主は車の受け取りを拒み、その分の弁済を求めて交渉中だ。

    ほかにも、政府が実施した検査が信用できず、自分の車のエアフィルターを袋に入れて、マサチューセッツ州の科学者に送った人も十数人いる(自宅の掃除機フィルターも送った人も1人いた)。

    その科学者は、データや検査の内容をTwitterで詳しく報告している人物だ。そうした外部の独立テストは、従業員の被曝程度が、政府の報告よりもひどいことを示している。

    勤続30年近い従業員は、仕事に支障がないよう匿名を希望したうえで、「彼らがまったくこの仕事を制御できていないということはわかっている」と語った。「いまは2018年だ。プルトニウムで人を被曝させるなんてあり得ない」

    BuzzFeed News

    アメリカ政府の核兵器開発ならびに核研究施設がある場所(現在使われていないものも含む)。出典:米エネルギー省

    ハンフォード・サイトは、かつて核兵器開発ならびに核研究が行われていた施設のうち、現存する17カ所のひとつであり、最大級だ。広さはおよそ1518平方キロメートルあり、ロードアイランド州の約半分という広大さだ。

    稼働中は、敷地内にある原子炉9基でプルトニウムが製造されていた。過去20年で、汚染された1715の建物の約半分が解体された。1800万トン分の土壌と廃棄物が専用埋め立て地へと移送されたほか、汚染地下水180億ガロン(約681億リットル)が処理された。

    現在に至るまで、多くの安全上の問題が発生している。アスベストの処理ミスから、地下廃棄物貯蔵タンクからの有毒な蒸気の漏出まで、さまざまな事故が起きている。

    ハンフォード・サイトでエンジニアとして働いていたウォルター・タモサイティスはBuzzFeed Newsに対し、「エネルギー省は、方針を転換したり安易な方法を使ったりすることで悪評があります」と話す。

    タモサイティスは、ハンフォード・サイトで10年以上にわたって、世界最大の放射性廃棄物処理施設の技術設計を手がけていた(その施設はまだ完成していない)。

    施設稼働をめぐる安全上の懸念を2010年に内部告発した彼は、プロジェクトから外され、2013年に解雇された。その後、タモサイティスは訴訟を起こし、2015年に410万ドルの賠償金を勝ち取っている

    ハンフォード・サイトで最も危険な場所のひとつが、プルトニウム最終処理プラント(PFP)だ。そこでは以前、約67トンものプルトニウムが製造されていた。その量はアメリカが備蓄している量のおよそ3分の2だ。

    オバマ政権時代にエネルギー省で除染プロジェクトを監督していた部局で陣頭指揮を執っていたデビッド・クラウスはBuzzFeed Newsに対し、「最も困難なサイトでの最も困難なプロジェクトです」と語った。

    Jeff T. Green / Getty Images

    ハンフォード核貯蔵所にあるTRU(超ウラン元素)含有廃棄物が入った55ガロン(208リットル)入りのドラム缶。2005年に撮影。

    PFPの内部で、一体どのくらいのプルトニウムやほかの危険な物質が、壁や天井を覆っているのか、知る人は誰もいない。プルトニウム、ならびにプルトニウムから生成される物質の一種であるアメリシウムはきわめて毒性が高い。たとえわずかな量でも、吸い込んだり摂取したりすれば命を落とす。

    アメリカ環境有害物質・特定疾病対策庁が行った作業員の健康に関する調査によれば、この2つは肺や骨、肝臓でがんを引き起こし、安全な被曝量は存在しないという。つまり、これ以上ない細心の注意を払って建物を解体しても、必ず何らかのリスクを伴うのだ。

    米大統領に当選したトランプがホワイトハウスに引っ越す直前の2017年はじめ、ワシントン州選出の上院議員と下院議員12人は、トランプ次期大統領に宛てた書簡に署名した

    任期中に、ハンフォード・サイトの除染作業に資金を優先的に回してほしいと依頼する内容だった。そして連邦政府は、ハンフォード・サイトのために資金を出す「法的義務ならびに道徳的責任」があること、そうした資金があれば「危険な除染作業中に、何よりも優先すべき『作業員の安全』が得られる」ことを訴えた。

    トランプ大統領はそれには応じなかった。そして、ハンフォード・サイトやその他の核関連施設の解体・除染作業への予算を削減するよう何度も提案した。しかし、アメリカ議会はその提案を拒否したうえで、ハンフォード・サイトへの予算の増額を決めた。事故がことのほか頻発した2017年のあとでの、待ち望まれた決定だった。

    2017年には、まず1月にPFPで、小規模ながら懸念される事態が発生した。それを受けて従業員2人が被曝検査を受けたが、結果は陰性だった。その5カ月後、放射性廃棄物を保管しているトンネルの一部が崩落する事故が発生。また、その近くの別のトンネルにも構造上の問題があることが明らかになった。

    6月の強風が吹き荒れた日、ボー・ジェイら350人の従業員が、プルトニウムのプラントで作業をしていたときに、警報が鳴り響いた。空気中に放射性粒子が含まれていることを知らせる警報だった。作業は数カ月にわたって中断した。9月になると再開されたが、立ち入り禁止区域は拡大し、安全対策はより厳しくなった。

    それでもボー・ジェイは、31人が被曝したことを知ると神経を尖らせた。当時の思いを振り返って彼はこう語る。「風はまだ吹いていた。士気は低かったよ」

    地元の環境監視団「ハンフォード・チャレンジ(Hanford Challenge)」を率いるトム・カーペンターは、6月の事故での被曝者数は、正式発表された31人よりも多い可能性があると話す。それは、多くの作業員が、被曝した可能性のある日から1カ月以上が過ぎるまで検査を受けなかったからだ。

    そのくらい時間が経つと、体内にあった放射性粒子は消化器官を通じて体内の別の場所にすでに移動しているため、検査をしても偽陰性の結果が出る可能性があるのだとカーペンターは言う。発表された被曝者数は「最も少なく見積もった数」だというのだ。

    The Washington Post / Getty Images

    そして、12月にも汚染事故が発生した。それから数日、数週間経つうちに、憂慮すべき情報が次々と舞い込み、ハンフォード・サイトの従業員の間には深刻な不安が広まった。

    CH2Mヒルののタイ・ブラックフォード会長兼最高経営責任者(CEO)は12月18日、従業員への通達で、「今日の調査で、PFPに駐車されていた車で、ハンフォード・サイト外にいったん出て戻ってきた個人所有の車2台が汚染されていることがわかりました」と述べた。

    それから2日と経たずして、さらに5台の個人所有の車(うち1台はレンタカー)と、7台の政府所有車が、汚染検査で陽性と出た。

    BuzzFeed Newsが連邦政府の発表を確認したところ、汚染が確認された自動車とトラックの合計は、1月3日で21台に上り、1月24日には最低でも36となった。個人所有の1台は1月26日に再び汚染が判明し、それからさらに2度の除染作業を経て、ようやく除染が完了した。

    ボー・ジェイの車も検査を受けたが、汚染は認められなかった。しかし、彼やほかの従業員は、会社側の説明に不信を募らせていた。そこでボー・ジェイはある日、自動車用品店の駐車場に車を停めると、手袋をはめて車のエアフィルターを交換し、取り外したほうをプラスチックの袋に入れた。

    そのエアフィルターはその後、ハンフォード・チャレンジのカーペンターの元に届けられた。カーペンターは、ボー・ジェイら従業員が提出したサンプルの持ち主が特定できないようにした上で、マサチューセッツ州にあるウースター工科大学の原子核科学専門家マルコ・カルトーフェンに送付した。

    これまでずっと、検査のための自動車部品を集めようとツイートで発信してきた人物だ。カルトーフェンは、それらのサンプルの一部を民間の検査機関に転送した。

    More air filters and dust samples have arrived from Hanford nuclear workers whose cars were contaminated by plutonium & americium from the Plutonium Finishing Plant demolition. These are from vehicles officially released after being decon'd. We now have 8 samples. THX @HanfordC! https://t.co/saIfZ89AEx

    PFPの解体によってプルトニウムとアメリシウムに汚染された自動車を所有するハンフォード・サイトの従業員から、車のエアフィルターや埃のサンプルが続々と送られてきた。これらは、正式に除染済みとされた車から集められたものだ。現在、手元にはサンプルが8点ある。

    1回目の検査で、車内がわずかながら放射能で汚染されていることを示す検査結果が一部出た。そこには、政府が行った検査で汚染されていないとされた車も1台含まれていた。

    こうした結果が出たのを受け、カルトーフェンは、自身の研究室でより包括的な検査を実施すると決めた。またエネルギー省は、政府所有の車を再検査するよう命じた。

    First certified lab data is in for our Hanford car filters. A PFP-worker's car air filter dust contained 0.958 +/- 0.714 pCi/g of Americium-241, a transuranic radioisotope. This toxic radioisotope is normally not found in automobile engines. @HanfordC https://t.co/rluzq0moVD

    以下は、ハンフォード・サイト内に駐車されていた車のエアフィルターの、最初の公認検査データだ。PFP従業員の自家用車1台に設置されていたカーフィルターの埃には、超ウラン放射性同位体である「アメリシウム241」が、1グラムあたり0.958 +/- 0.714 pCi(ピコキュリー)含まれていた。この放射性同位体には毒性があり、通常は自動車エンジン内で見つかることはない。

    エネルギー省も、目立たないかたちで、詳しい分析を行った。その結果は、従業員のプルトニウム被曝が、誰も予想しなかったほどひどいレベルである可能性を示している。この分析に関するレポートはこれまで一般公開されていなかったが、BuzzFeed Newsがワシントン州保健局に開示を求めて入手するに至った。

    エネルギー省によるこの分析は、1月18日より前に収集された、15の陽性反応サンプルを詳細に検証している。そのうちのサンプル3点(車の外で見つかった2点を含む)には、吸い込めるくらいの小さなプルトニウム粒子が含まれていた。

    分析レポートによれば、そのサンプル3点は、アルファ線という、強度と危険性がより高い放射線の一種を出しており、その1分あたりの壊変率(DPM:1分間あたりの崩壊数)は1万以上だったという。

    万が一、衣類で1万DPMの放射能が検出されれば、検便検査がおそらく必要だ。体内で検知されたとなると、医師の診察を受けるか、隔離する必要すら出てくる。

    12月18日には、トレーラー事務室の近く、ならびに作業員のブーツのそばで、2000DPMから1万2000DPMレベルのアルファ線が検出された。その区域は即座に閉鎖され、より詳しい計測が行われた。

    カルトーフェンは、「これらの微量な『ほこり(specks)』は――」と、ハンフォード・サイトの担当者がプレスリリースで使った表現を真似しながら、「私が思った以上に危険であることは明らかです」と述べた。「こうした危険なプルトニウム粒子を、たまたま摂取したり吸い込んだりすれば、命にかかわる健康障害を招く可能性があります」

    カルトーフェン自身が実施した車2台の内部の検査では、それよりも低い数値が出たが、危険であることに変わりはない。カルトーフェンは、自動車の所有者にかけた電話で、「自分の子どもであれば、たとえ5秒間でも、その車は運転させません」と言って、検査結果の重大さを説明したという。

    ハンフォード・サイトで放射性物質を取り扱う従業員の年間被曝許容線量は500ミリレム(5ミリシーベルト)、それ以外の従業員の場合は100ミリレム(1ミリシーベルト)となっている。

    12月に被曝したボー・ジェイとその他10人の従業員が浴びた線量はそれよりはるかに低く、20ミリレム(0.2シーベルト)かそれ以下だった。ハンフォード・サイトの担当者は、「控えめ」に見た結果だと言ったが、カルトーフェンやその他の放射能専門家は確信が持てないと言う。

    エネルギー省で以前この問題に取り組んでいたロバート・アルバレスは、同省が用いている数理モデルは、従業員が「単純酸化物」粒子に暴露された状態を前提としており、それよりも危険性の高い「高温下で生成された酸化物(high-fired oxide)」の粒子は想定していないと述べた。

    プルトニウムとアメリシウムは、放射能が減るまでに非常に長い時間がかかる(半減期は、「プルトニウム239」は2万4065年、「アメリシウム241」は432年、「プルトニウム238」は87年だ)。

    アルバレスによれば、それらの粒子が人間の肺や骨にとどまれば、何十年にもわたって放射線を発し続ける。そして、高温下で生成された酸化物であれば、放射能はもっと強くなる。つまり、エネルギー省の前提が誤りであれば、同省の数理モデルは少なめの被曝数値をはじき出している可能性があるのだ。

    現在は、ワシントンD.C.にあるシンクタンク「政策研究所(Institute for Policy Studies)」のシニア・スカラーであるアルバレスは、エネルギー省の分析には、粒子の危険性を測定するカギとなるテストが含まれていなかったと話す。

    「まったくわけのわからないレポートです。高温下で生成された粒子なのかどうかという疑問に答えていません」(こうした技術的な問題についてエネルギー省に問い合わせたが、回答は得られていない)。

    アルバレスは、6月と12月の汚染事故の中間である2017年秋に、政府独立機関「国防核安全委員会」(Defense Nuclear Facilities Safety Board)に出向いた。核関連プログラムに関してエネルギー省に助言を行う機関だ。その際、ハンフォード・サイトの話を持ち出して、「私なりの丁寧な言い方で、彼らに『厳しい叱責』を行いました」という。

    アルバレスは委員会メンバーに対し、「作業員31人がプルトニウムに内部被曝するのを、よくも手をこまねいて見ていられますね」と言ったそうだ。そして彼らにコメントを求めたが、返事はなかった。「いったいどうしたというんですか?」とアルバレスが尋ねても、答えらしきことは何も返ってこなかったという。「言語道断としか言いようがありません」

    Jeff T. Green / Getty Images

    CH2Mヒルのブラックフォード会長兼CEOは2017年末、従業員に宛てた書簡のなかで、「作業員の安全、環境の保全、そして顧客へのサービスにとって容認できない状況を招く過ちが、複数のレベルで起こりました」と述べた。

    「しかし私たちは、ラーニング・オーガニゼーション(学習する組織)として歩んでいくなかで、それらの過ちから学ばなくてはなりません。私たちはいまも、これからも、それらの過ちに応じて対策を取っていきます」

    2018年春に同社が公表したレポートによれば、大小さまざまのミスや判断の誤りがジェンガのように互いにどんどん重なり合っていった末に、必然的に崩壊したのだという。

    たとえば、汚染を防ぐための対策は「効果的ではなかった」。解体作業をスピードアップするための決断は、不完全なデータに基づいて下された。マネジメント側の対応が遅すぎて、汚染の拡大に後れを取ってしまった。マネジメントと従業員とのあいだのコミュニケーションが不足していた――などだ。

    効果的でなかったツールのひとつが警報システムだ。モニターがサイト内のいたるところに設置され、空気中で汚染粒子が検知されたら警報が鳴るはずだった。この警報システムは、1月と6月に事故が起きたときは正常に作動していた。ところが、原因はいまだ不明ながら、12月に事故が起きたとき、大半の警報はまったく動かなかった。それが、解体作業をスピードアップするという決断へとつながった。その決断には、プルトニウム・プラントの構造2つを同時に取り壊すことも含まれていた。

    作業服が汚染され、サイト内のあちこちで汚染物質が見つかったあとでさえ、モニターは異常を検知していないとして、会社側は強硬姿勢を見せた。CH2Mヒルは現在、疑わしい粒子は重すぎて空気中に長く漂っていられないため、モニターが検知できなかったのではないかと話している。

    また従業員は、プラントを解体しながら、汚染粒子の飛散を防止する「展着剤」をスプレーしていた。そして、解体され積み上げられた瓦礫にも再度、展着剤を吹きかけていた。しかしレポートでは、従業員が技術指導に従わず、展着剤を水で薄めるか希釈するかして使っていたことがミスとして挙げられている(ある従業員はBuzzFeed Newsに対し、マネジメント側から展着剤を薄めて使用するよう指示されていたと証言している)。

    レポートでは、瓦礫が、回収されるよりもずっと速いスピードで積み上げられていたというミスも指摘されていた。ハンフォード・サイト内には、汚染された瓦礫の山が、何週間も何カ月も放置されていたということだ。汚染物質の一部はそこから飛散した可能性がある。

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    制御された爆破によって解体される284イースト発電所。2011年に撮影。

    2016年11月にPFP解体工事の最終工程が始まったときは、瓦礫の処理プロセスは今回とは異なっていた。建材などがひと通り解体されたら、次の作業に進む前に、まずはそれらをサイトから運び出さなくてはならないことになっていたのだ。

    しかし、国防核安全委員会のレポートには、解体作業が始まってまもなくすると、瓦礫をそのままそこに積み上げていく方法に変更するとマネジメント側が決定したと書かれている。この状況をよく知るハンフォード・サイトのベテラン作業員はBuzzFeed Newsに対し、当初の方法は時間がかかりすぎると会社上層部が考えたのだと述べた。

    また、複数の従業員と外部専門家の証言によれば、最大の過ちとして考えられているにもかかわらず、CH2Mヒルが作成したレポートではほとんど触れられていない点が2つあるという。1つめは、PFPは全体あるいは一部をカバーで覆うなどの養生がなされず、開放された状態で解体されていた点だ。

    レポートでは、「開放された状態での解体では、いくぶんの汚染が見込まれる」と指摘されている。しかし、そうのようにした理由や、代わりに講じることができたであろう対策については、最低限のことしか述べられていない。

    環境監視団体ハンフォード・チャレンジのカーペンターは、「解体は、何の覆いもないオープンな状態で行われました。彼らはそれがどんなことにつながるのか、考えなかったのでしょうか?」と述べる。解体する建物にテントを張るなどの対策ができたはずだ、とカーペンターは言う。

    それについて、エネルギー省はきっぱりと異議を唱えている。同省の環境管理部次官補アン・ホワイトは、現在も続く汚染による惨事は「開放した状態での解体が原因」ではないとBuzzFeed Newsに対して述べ、問題は「このプロジェクト特有のもの」だと付け加えた。

    その一方で、1月2日付けで出されたCH2Mヒルの内部調査レポートは、考えうる汚染拡大の原因を12あげているが、そのひとつとして、「開放された状態での解体」を挙げている。

    カーペンターや従業員はまた、レポートでうやむやにされていたもうひとつの問題として、CH2Mヒルが作業を急いでいた点を指摘する。エネルギー省の担当者によると、作業を早めに完了すれば、CH2Mヒルにはその分多めに報酬が支払われることになっているという。そして、これまでに作業に遅れたせいで、得られたであろう報酬の一部がすでに失ってしまったと、ワシントン州の地元紙「トライシティー・ヘラルド(Tri-City Herald)」は報じている

    「限界まで無理をしたスケジュールを組んで報酬を取り戻そうとすれば、労働者の健康と安全、ならびに環境を犠牲にすることになります」とカーペンターは言う。

    BuzzFeed NewsがCH2Mヒルに問い合わせたところ、広報担当のブライアン・モランディは次のように回答した。「ご承知のとおり、受託業務に関するお問い合わせに当社が回答するには、顧客組織の許可を得る必要があります。持続可能性と技術的なサービスに関する当社の焦点を保持するためです」

    4月にエネルギー省のホワイト次官補に話を聞いたところ、「ハンフォード・サイトでは現在、事態は収拾しています」という答えだった。しかし、BuzzFeed Newsが入手した内部レポートによれば、2月には1マイル離れた検査施設で、5月19日には作業現場の外にある道路で、つい最近では5月25日にサイト内で、汚染が見つかったという。エネルギー省は状況を「注意深く監視し続けている」と語った。

    The Washington Post / Getty Images

    ハンフォード・サイトに近いワシントン州東部の街トライシティーズ一帯には、新しい家が続々と建てられている。

    5月に開催されたタウンホール・ミーティングでは、ハンフォード・サイトの労働組合員と地元住民が、ここ7カ月にわたる交渉中、つねにわだかまっていた疑問を投げかけた。それは「解体作業はいつ再開するのか?」「再開したときには安全性が向上しているのか?」というものだ。

    「従業員が近いうちに仕事に戻るというシナリオは想像できません」。タウンホール・ミーティングの翌日、BuzzFeed Newsに対してそう語ったのは、金属業組合「メタル・トレード・デパートメント(Metal Trade Department)」のジェームズ・ハート組合長だ。ハンフォード・サイトの一部の組合は、同組合の管轄下にある。ハート組合長はミーティングで、会場を埋め尽くした組合員に対し、大丈夫だと思えるまでは仕事の再開を拒否するようアドバイスした。

    CH2Mヒルは、6月末にPFP作業再開計画書を作成した。州政府当局がBuzzFeed Newsに開示したその計画書によれば、作業を再開するにあたっては、プルトニウムの推定レベルに応じた、低リスクと高リスクの区域が分けられており、まずは低リスク区域から作業が始まる予定となっているようだ。2019年4月までの完了を目指していると書かれているが、ある従業員に言わせれば「そうなれば奇跡だ」という。

    この計画を実行に移すためにはまず、環境保護庁とワシントン州環境保護局の承認が必要だ。両機関は6月26日にエネルギー省に書簡を送り、汚染の具体的な追跡方法を再検討するよう求めている。

    ワシントン州環境保護局の核廃棄物プログラムマネジャー、アレックス・スミスはBuzzFeed Newsに対し、「(CH2Mが)導入を予定している計画が、本当に汚染防止効果が高いかどうかを十分に確認しなくてはなりません」と述べた。

    汚染事故ならびに廃棄物貯蔵タンクからの有害物質の漏出が起きたことで、エネルギー省と受託業者の連携、ならびに同省の汚染検査方法について、数人の議員が疑問を抱いている。

    ワシントン州選出の民主党の上院議員パティ・マレーはBuzzFeed Newsに対し、「ハンフォード・サイトの解体作業の継続はきわめて重要です。とはいえ、従業員の安全を犠牲にしてはなりません」と述べた。「ハンフォード・サイトの最前線で働く従業員のために、万全の安全基準が設けられるべきです。そしてそのために、私は引き続きエネルギー省に強く働きかけていくつもりです」

    ハンフォード・サイトで続く問題について、マレー上院議員は、同じくワシントン州選出のマリア・カントウェル上院議員と連名で、エネルギー省のリック・ペリー長官に対して書簡を何度か送っている。両議員はまた、議会公聴会でも、ハンフォード・サイトに関して強く要求している。

    このように、注目を浴びるかたちで行動を求める声があがっているにもかかわらず、ボー・ジェイやほかの作業員たちはいまだに説明を待ち続けている。

    「これは犯罪的なことだと思います」とボー・ジェイは言う。「そう感じているのは自分だけではありません。将来的に健康被害を受ける人々のために、何らかの財源や資金が必要です」

    ボー・ジェイは、新たな管理基準に疑いを抱きつつも、ハンフォード・サイトでの仕事に戻るつもりでいる。家族のなかで、稼ぎ手は彼しかいないからだ。

    「何よりも恐れているのは、このせいで自分が明日にでも病気になって、家族を養えなくなることです。うちの収入源はひとつだから」とボー・ジェイは語る。「妻や子どもたちの面倒を、ほかの誰かが見てくれるわけじゃない。自分が明日病気になってしまったら、誰もいない。そうなったら一巻の終わりだよ」

    カルトーフェンの検査で、自分のトラックが安全であることがわかってボー・ジェイは少しほっとしている。それでも、いつか病気になるのではないかという不安がつねにある。「私は心配性なんでね。でも、働かないわけにはいかないんだ」

    この記事は英語から翻訳されました。翻訳:遠藤康子/ガリレオ、編集:BuzzFeed Japan

    Zahra Hirji is a science reporter for BuzzFeed News and is based in Washington, DC

    Contact Zahra Hirji at zahra.hirji@buzzfeed.com.

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