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ヒット曲と本当に作りたい曲はちがう? SKY-HIとぼくりりに聞いてみた

ヒットを狙う曲と本当に作りたい曲にちがいはあるのか。ヒットを狙うためにしていることはあるのか。継続的に作り続ける方法とは?

毎日記事を書いているが、自分が書きたかった記事ほど読まれない。

しかしなぜかその合間に書いた記事ほど読まれたりする。

時々、自分の書きたいものと、読者の求めるもののギャップに悩むことがある。書く手が止まってしまう。

こうした壁は、第一線で活躍するクリエイターも感じているのだろうか。

たとえば人気ミュージシャンの場合、ヒットを狙う曲と本当に作りたい曲にちがいはあるのか。ヒットを狙うためにしていることはあるのか。継続的に作り続ける方法とは?

そんな疑問や心の迷いを、ラッパーのSKY-HIとシンガーソングライターのぼくのりりっくのぼうよみにぶつけてみた

▲左:ぼくのりりっくのぼうよみ、SKY-HI
Keiya Nakahara / BuzzFeed

▲左:ぼくのりりっくのぼうよみ、SKY-HI

ギャップを解消するシンプルな方法とは

ーーお二人は、ヒットを意識して作る曲と自分が本当に作りたい曲って共存できてますか?

SKY-HI:できてるんじゃないんですか? 売れている人でやりたくないことをやってる人っているのかな? 多分いない。

ぼくりり:ぼくは好きなことしかやらないんで。

SKY-HI:その悩みを解決するのは本当に簡単なことで、信頼できる人から「こうした方が売れる」って言われて、それを納得してやるかやらないかじゃないですかね。

たとえば自分の彼女が日本人としての平均的な耳を持っていると信じているなら、彼女に向けて作ればいいんだろうし。

いない場合はわかんないけど要は誰に向けて作るかだよね。

言われたことを受け入れるか、受け入れないかも自分次第だし。

Keiya Nakahara / BuzzFeed

絶対に叩かれるとわかってて出した曲

ーー「こうした方が売れる」と言われて作った曲ってありますか?

SKY-HI:「スマイルドロップ」(2014年) 。

2016年に出した曲はほぼすべてヒットを意識したけど、「スマイルドロップ」は作り方から変えて、一番、強くヒットを意識した曲かな。

「スマイルドロップ」

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SKY-HI:ロックフェスに来るラップを聴かない人たちをどうやって振り向かせるか? というのがスタートでした。

それでできあがったデモをスタッフに聴かせたら、信頼している俺のメンターに「それだとラップを聴かない人に伝わんないよ、初めてYUKIの『WAGON』を聴いた時のような感覚の曲がいい」って言われた。

だから、作り方から変えました。100回以上は録り直したかな。

ーーYUKIの「WAGON」を参考に、ということだったんでしょうか。

SKY-HI:そう。おれ、オマージュはすっごい好きなんだけど、リファレンス(参照すること)ってあんまり好きじゃなくて。

でも、コードや曲調じゃなくて、あくまで「曲を聴いた時にこんな気持ちにさせてくれ」という感情のリファレンスとして「WAGON」がきた。

すげぇ抽象的なアドバイスではあるけど、逆にすごくしっくりきたから、そういう感情になってもらおうとがんばりました。

ーー 信頼している人からのアドバイスとはいえ、自分が好きじゃないことをするってどんな気持ちなんでしょう?

SKY-HI:「スマイルドロップ」はすごくポップスに振り切った作品だったから、「これまでのファンが離れるのが怖くなかったか?」と言われたら怖かったよ。

実際、一番叩かれた曲でもあるからね。(※ヒップホップではポップ調の曲を出すと批判される傾向にある)

でも、絶対叩かれるってわかってて出した。芸人さんの「このまま歩いたら落とし穴ありますよね?」みたいな感覚に近い。

Keiya Nakahara / BuzzFeed

ーー叩かれるとわかっていて作るのって勇気がいりますよね。

SKY-HI:叩かれた時の精神的なダメージよりも、得ることのほうがたくさんあると思ったし。これはこれで自分なりにクールだと納得できた。

叩かれることがイヤとかはあんまりなくて、それよりもその先にある新しい何かをつかみたかったかな。

この苦労は、ぼくりり氏みたいに最初から世間に受け入れられる曲を作る才能が発達している人には必要ない気がする。

俺は美化するつもりはないというか、単純に俺にはその才能がないから、ない才能を育てるために何百回もがんばったってだけ。

ーーヒットを狙った結果、売り上げの目標を達成しましたか?

SKY-HI:まったく達成してないですね。

ぶっちゃけた話、今の時代にシングルがヒットするって俺はあんまり信じてなかった。

それは自分にはできないとも思っていたから、なんとかがんばって、2年後に出した「カタルシス」(2016年)というアルバムでヒットさせようとしていました。逆になんとかできなかったら、俺は終わりだなって思ってた。

「カタルシス」を出す時は「絶対に納得のいく形にしよう」って思ったのはすごくおぼえてる。

結果的に目標に掲げていた数字は達成できました。

「カタルシス」

avex trax / Via amzn.to

ーー数字はどのくらいだったんですか?

SKY-HI:目標がウィークリーでオリコン5位以内に入ることで、結果は5位だった。

数字的にも今まで出してきた中で一番よかったし、次のアルバムでもさらに売り上げが伸びて、徐々に売れていく感覚が非常によかったですね。

目標がないのはクッパのいないマリオみたい

ーーぼくりりさんはヒットを意識して作った曲ってありますか?

ぼくりり:ぼくは去年、アネッサのCMに使われた「SKY's the limit」ですね。

「SKY's the limit」

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ぼくりり:完全にCMの曲として、曲調とメロディ、声質を多くの人に受け入れてもらいやすように作ったんですけど、実は歌詞の内容はそうじゃないんですよ。

歌詞の1番だけ聴くと、表向きは「めちゃくちゃ幸せでーす!」みたいな、いかにもCM向けの曲なんですけど、2番にいくと実は1番の世界は嘘ってことがわかるようになっています。

1番はインスタ映え、Instagramの中でしかない虚構の世界。

2番はそのインスタグラマーたちの裏側が出てくる。ぼく、そういうのが好きなんです。

(1番)幸せな日々 描き出した未来と

華やかさが 包み込む

花束が舞う 街の中

(2番)幸せそうを追いかける自分を

華やかだなんて思えなくて

花束が舞う 街の中

ーー「SKY's the limit」にはどんな目標があったんですか?

ぼくりり:特になかったですね。それが今の課題なんですが……。

「SKY's the limit」を作ってからわかったんですけど、ちゃんと目標を設定してやらないと「このゲームなんだったっけ?」みたいな感じになるんですよね。

クッパのいないマリオみたいな。

「ここまでこれたー!」みたいな達成感もないし、「これは一体、なんなの?」って感じになったりして。

だから、目標は大事かもしれないですね。

ーー逆に目標がない状態でモチベーションを保つのって大変な気がします。

ぼくりり:そこはピュアに音楽を作る過程が楽しいので大丈夫ですね。

ぼくの音楽の作り方としては、トラックメイカーさんにオファーして、ぼくが歌詞とメロディを作る、というやり方なんです。

オファーするトラックメイカーさんは、ぼくがすごくファンな人。

好きな人に作ってもらえるだけで、すごく幸せだなって感じるんです。

Keiya Nakahara / BuzzFeed

ミュージシャンはどんなデータを見てるのか

ーーミュージシャンって、ヒット曲を作るためのデータをどうやって集めているんでしょうか?

ぼくりり:今って、ダウンロード配信の売り上げとかサブスクリプションサービス、MVの再生回数とか、あらゆるデータを取りまくれるようになってしまったがために、オリコンの脆さが指摘されていたりと、どのランキングに信憑性があるのかどうかが混乱していますよね……。

SKY-HI:わかる。だからぼくりり氏の目標を持ちづらいっていうのもわかるな。今、信頼しているデータはほぼない。数字は当てにならないと思ってる。

去年の段階ではぎりぎりオリコンの数字も当てになると思ってた。オリコンが複数枚買っても3枚までしかカウントしないことを発表してたし。

でも、今はデータから学んでここを改善する、みたいなことはない。どっちかというと感覚的な部分のほうが大きい。

最近は、好きなミュージシャンがラジオで自分の曲をかけてくれたり、知らない人が曲のことを話してくれたりしているのを聞くほうが参考になる。

そこでリーチできてる、できてないを感じることが多いかなぁ。

Keiya Nakahara / BuzzFeed

ーーたとえばぼくのようなメディアのライターであれば、記事のPV数(記事の見られた数)やSNSでのシェア数などから知見を得ることがあります。

SKY-HI:メディア側のPVの価値で考えると正直わかんないよね。

だって、犬ころが5万回押した5万PVと、「今後、なにか起きるんじゃねーの?」って期待させてくれる5000PVの記事って、一概に良し悪しを判断するのはむずかしい気がする。

たとえば星野源さんがラジオでコモン(海外のラッパー)の「Be」を流したら、それまで全然売れてなかったのに、一気にiTunesの総合チャート上位に入ったことがあったんだけど。

犬ころが間違えて押した1PVと、源さんが紹介してくれた1PVじゃ価値が全然ちがうと思うんだよね。

作り手が受け手に価値をつけてはいけないと思うけど、メディア側はなんかそういうのがある気がするね。

結果を考えず、もっと気軽に作ってみればいい

ーー最初の話に戻ってしまって恐縮ですが、自分の書きたい記事を書くと思うような結果を得られないことがあって、なにが正解なのか悩むことあるんです。お二人は「作りたい音楽」と「ヒットする音楽」、どうやって気持ちに折り合いをつけていますか?

ぼくりり:ちょっと逸れてしまうかもしれないのですが、音楽はアルバムという形が足を引っ張ってるんですよね。

1曲ごとのトライ&エラーがしづらい。実験的なことができないんですよね。

アルバムは10曲くらい揃わないと出せないし、次のアルバムを出すころには1年以上経っていたりする。

前のアルバムの曲のこととか忘れちゃう。

たとえばイラストレーターさんだったら、Twitterに絵を1枚あげたらすぐに反応が返ってきて、「次はこうしよう!」というのがやれると。

音楽はそれがやりづらい。1曲1曲の比較が難しいんですよね……。

Keiya Nakahara / BuzzFeed

SKY-HI:俺はアルバムには作品性を求めるタイプだからしっかり作る人だけど、それ以外だとトライ&エラー的にやるかな。

音楽はYouTubeにあげたり無料配信したり、フリーでボンボン出しちゃえばいいから。

良いことなのか悪いことなのかわかんないんだけど、俺なんて去年、一番人様に話題にしてもらったのはフリーで出した「キョウボウザイ」と「0570-064-556」だからね。

キョウボウザイ / SKY-HI

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▲SKY-HIが共謀罪(テロ等準備罪)法案についてラップした曲

SKY-HI:1月にアルバム出して、5月に武道館もやったのに。

今年に入って仕事の量が増えたんだけど、それはこのビートジャック(他人の楽曲に勝手に歌詞を載せる文化)っていうヒップホップの非常にニッチなムーブメントで作った2曲のおかげ。

なんのお金にもなってないし、なんの数字にもなってない。なんならそんなことのためにやってないのに。

でも、結果として一番仕事を呼んできた何とも言えない事例でもある……。

別に仕事が欲しくてやったわけじゃないのにね(笑)。

結果どうこう考えるより、もっと気軽に作ってみればいいと思うよ


▲SKY-HIとぼくのりりっくのぼうよみが共演した楽曲「何様」は「ベストカタリスト -Collaboration Best Album-」に収録。iTunesなどでもダウンロード配信中
avex trax / Via amzn.to

▲SKY-HIとぼくのりりっくのぼうよみが共演した楽曲「何様」は「ベストカタリスト -Collaboration Best Album-」に収録。iTunesなどでもダウンロード配信中