
映画「シュガー・ラッシュ:オンライン」に声優として参加する、YouTuberの第一人者「ヒカキン」。
作品には、彼のような人気YouTuberを目指すラルフというキャラクターが登場する。
現実世界で、ヒカキンのようになるにはどうしたらいいのだろうか? 4つのYouTubeのチャンネル登録者数が1300万を超える、名実ともにトップクラスのヒカキン本人に聞いてみた。
ホームランとヒット、どっちがいい?

ーーヒカキンさんのようなトップYouTuberになるには、どうしたらいいですか?
ヒカキン:うーん、一言では難しいんですけど、僕がやったことと言えば、とにかく長く続けたことだけなんだと思います。
ある程度の知名度を確保して、名前が定着していくまでに最低でも3年くらいはかかると思うんですよね。
だから、いきなりとんでもない爆発的なヒットを出して、他の人よりも頭一つ抜きん出る必要はなくて。
ーー 一過性のヒットは意味がないと。
ヒカキン:結局、一回だけ人気を爆発させてもすぐに落ちてしまうことが多いので、全然効果はないと思いますね。
今、YouTuberって単語と一緒に、はじめしゃちょーと僕の名前を上げてくれることが多くて。
それってやっぱり、第一線でやってる期間が長かったからだと思うんですね。はじめしゃちょーでさえ、グッと伸びたのが2014年から2015年くらいです。
彼が活動を始めたのが2012年くらいだから、やっぱり3年ほどはかかってるわけです。
よく、YouTuberは「夏が大事」って言われます。
学生さんが夏休みの間、YouTuberたちはめちゃくちゃ気合いを入れて、投稿本数を増やしたりするんです。
そういう時期でも普通にいつものペースで動画を投稿できる人の方が、長い目で見ると強いと思います。
「たまに打つホームラン」じゃなくて、「常にヒットを打ち続ける人」が、3年後にはトップにいるんじゃないですかね。
YouTuberに必要とされる能力とは?

ーーバットを振り続けることが大事なんですね。今までを振り返ると、どうですか?
ヒカキン:僕は他のYouTuberが頑張ってることも知ってほしいので、あえて自分で言いますが、はっきり言ってめちゃくちゃハードな仕事だと思っています。
たとえるなら、小さい放送局みたいなもんで、全部を自分ひとりで運営しているみたいな感じなんです。
ネタを考えて、演者もして、編集して、それをアップロードして。で、また翌日のネタを考える。
「家で小さいビデオカメラを回してやってるだけじゃん」って思うかもしれないですけど、これが365日、しかも2年、3年やってるとじわじわくるんですよ……。
YouTuberは、かなり忍耐力のいる仕事だと思います。
ーーそれは想像を絶しますね……。YouTuberという仕事で、他に必要とされることはなんですか?
ヒカキン:冷静に、今の人気の傾向を分析することだと思います。
あの人の何が長けているのか。どうやって時代の波に合わせているかとか。
YouTuberの市場を冷静に客観的に分析して、かつ、そこにどうやって自分の得意なことを活かしていくのかを考えるというか。
ただがむしゃらに投稿しても、滅多に当たらないと思うんで。
トップクリエイターに通じるのは「分かりやすさ」

ーーたとえばヒカキンさんは今のYouTuberさんたちを見て、なにを分析していますか?
ヒカキン:いっぱいありすぎて、ちょっと待ってくださいね……。
(数分考え込み)うーん、ベタなところかもしれないですけど、はじめしゃちょーはカット割のテンポがとても気持ちよく見れる早さになってる。
フィッシャーズでいうと、やっぱり運動というジャンルの動画がありますよね。
身体能力の高いシルクくんたちがアスレチックで遊んでいる動画は、男心をくすぐる内容になっていると思います。
トップクリエイターに通じることは、誰が見ても「分かりやすい動画」になっていることと、「テンポがいい」ことですね。
それは見るだけで、すぐに分かると思います。
ーー「分かりやすい動画」って、簡単なようで難しいようにも感じます。ヒカキンさんは、どんなことを意識しているんですか?
ヒカキン:簡単なことから言っていくと、声をちゃんと張るとか、身内ネタは避けるとか。
あと、僕の場合は動画の最初に「今日はこれをやります!」「こうすることが目標です!」って言い切る。
その後に「さぁ、どうなったかな?」と、分かりやすい展開になるように意識していますね。
ーーたしかにヒカキンさんの動画って、目的が明確な気がします。
ヒカキン:僕の動画はもしかしたら大人が見たら「これはもうちょっとひねったほうがいいんじゃないか」とか「分かりづらいくらいの方が面白いんじゃないの?」と感じることがあるかもしれない。
でもそうしてしまうと、内容が分からない人も出てきちゃうんじゃないかなって思うんですよ。
ちょっと平凡で分かりやすすぎるくらいが、ちょうどいいんじゃないかなって考えるタイプです。
ーー分かりやすさを追求するほど、動画を理解してくれる人も増えますよね。
ヒカキン:そうですよね。どこか特定の層に突き刺さる動画を作る人もすごくかっこいいし、好きです。
けれど「誰が見ても分かる」のも、強みになると思います。
ヒカキンが体験した、衝撃的な出来事

ーー映画「シュガー・ラッシュ:オンライン」に登場するラルフというキャラクターは、何気なく投稿した1本の動画がヒットして人気者になります。
ヒカキン:ラルフみたいにTシャツ1枚に裸足というちょっとくたびれた格好をしていても、結果さえ残せば一発でスターになれる。
今のインターネットのリアル感が出ていてすごく好きです(笑)
あくまで僕はそういうタイプじゃないというだけで、今はスマホとインターネット環境があるだけでだれでもスターになれる時代ですからね。
正直、ちょっとだけ自分と重ねてしまった部分があるかもしれない。
ーーどんな点ですか?
ヒカキン:初めてGoogleさんのオフィスへ行った時の僕は、ラルフみたいな感じだったかもしれません。
東京タワーの見える六本木ヒルズのフロアから、すげー美味しいランチを食べながらミーティングをして…。
その時、衝撃だったんですよね。当時はスーパーの店員だったので、こんな俺が、こんな立派なところに来れたのかって。
平成に残せたものと、次世代に必要なこと

ーーハードな日々を送りながらも、ヒカキンさんはYouTubeでトップに立って、おそらくお金もめちゃくちゃ稼いでいて。
1つ動画を公開すれば、すぐに100万再生を超える。考えだだけで凄すぎるのですが、ヒカキンさんはこれから先、一体なにを目指していくんでしょうか?
ヒカキン:正直、自分でも分かんなくて。
来年で30になるんですけど、23歳くらいからこの6、7年はすごい景色を見てこられて、「逆に今やってないことってなんだろう?」って考えちゃうくらい、いい経験をさせてもらってきました。
ーー今年はテレビ番組やCMの出演も目立ちましたよね。
ヒカキン:できることは、やってきたよねとは感じています。
となると、またしっかりと面白い動画を作っていくことに戻ってくるんじゃないかと思うんです。
よく聞くのが、今年は「YouTuber」という言葉に対して、「なにそれ?」と言われることがなくなった年になったんじゃないかと。
平成最後の年に、YouTuberを定着させることができた。
そうなると、来年はもっとYouTuberの存在が特別ではなくて、「普通」という時代に突入すると思うので、また原点に戻って、動画の質や本当の面白さが問われてくるんじゃないかと。
YouTuberは続けた人が評価される世界。
いつまで続けられるかは分からないですが、これからも動画に対して絶対に手を抜かずに、しっかりとやっていきたいと思っています。