“YouTube”で勉強するのはアリ?学校の先生とYouTuberらが真剣議論

    「YouTube 教育クリエイターサミット 2020」の様子をレポートする。

    YouTubeにおける「学び」に関連する動画の需要が高まっている。特に、教育現場での活用が広がりつつあるという。

    11月28日、そんな教育とYouTubeの可能性に関するセミナー「YouTube 教育クリエイターサミット 2020」が行われた。

    文部科学省の職員や現場の教員、YouTuber、YouTube日本代表らがディスカッションした。

    ▲登壇者。当日はYouTube Liveによるオンラインで行われた

    ▲登壇者。当日はYouTube Liveによるオンラインで行われた。

    上段左:上妻真木さん(YouTubeコンテンツパートナーシップ Family & Learning Japan Lead、司会進行)

    上段真ん中:中川哲さん(⽂部科学省 初等中等教育局視学委員「未来の学びコンソーシアム」推進本部 本部⻑代理)

    上段右:葉一さん(YouTubeチャンネル「とある男が授業をしてみた」クリエイター)

    下段左:⼩林勇輔さん(湘南学園中学校⾼等学校 情報科 教員)

    下段右:仲條亮⼦さん(YouTube ⽇本代表)

    ※本記事では読みやすいように構成、言い回しを変えている

    YouTubeで学ぶことのメリット

    ▲イメージ / Marko Geber / Getty Images

    ーーYouTubeは学校の授業で使われたりなど、様々な使われ方があると思います。YouTubeを子供たちが扱うことのメリットはどういうところに感じていらっしゃいますか。

    小林:停止したり、早送りしたり、倍速で見たり。自分のタイミングで学べることでしょうか。

    (先生は)何回も何回も同じことを繰り返すのですが、どうしても1対40で授業をするので、拾いきれてないことが必ずあって。

    あと、YouTubeは「見る」ことに注目されがちなんですけど、クリエイター側の体験もできるんです。

    たとえばうちの入試でも90秒の動画提出を求めています。クラスで何かを発表する時に、動画で撮ってYouTubeにあげてみるのもいいと思うんです。

    子供たちより先にデバイス(スマートフォンなど)を持っていたり、知識がある我々だからこそ感じていることかもしれないですが。

    視聴だけじゃなくて、子供たちがクリエイター側になれると、また少し面白い変化が起きるんじゃないかと。

    中川:小林先生がおっしゃったのは大事なポイントです。今の社会は全員がスマートフォンなり、何かしらの機器を持っていて、いつでも(動画を)投稿できる。で、昨今は大人になって動画を投稿したら、やらかしちゃった、ということがよく起きます。

    そうならないように、学校の授業で動画を作って発表して、先生に情報リテラシーの部分を指導してもらう。

    修正するべき点を先生や友達と一緒にリフレクションしながら、社会に出た時にやらかさないようにする。

    アウトプットすることも重要だと思っています。

    コロナ禍の教育現場は

    ▲葉一さん / Via youtube.com

    ーー休校や外出自粛を余儀なくされた時に、YouTubeを使ったオンラインでの学びが注目を集めたと思います。現場の状況はいかがでしたか。

    小林:大変でしたね(笑)。先生たちも(オンライン授業について)何かをインプットしたり、勉強するのにYouTubeしかないという状況で。

    集まる機会が難しい中で、「オンライン授業ってどうやるの?」みたいなことを、先生たち一人ひとりがYouTubeを使って学んでいくんです。

    先生たち自身が、動画で学ぶということをちょっと体験できた。休校期間でよかったことの1つなんじゃないかな。

    こういう(学びの動画が)ものがいっぱいあるんだな、と知る機会になった気がします。

    ーーたしかに授業の動画だけでなく、オンライン授業のやり方のような動画もすごく流行りました。

    先生方も急にオンラインで授業せよ、と言われても、どうやったらいいかわからなかったと思います。葉一さんにはどんな問い合わせがきましたか?

    葉一:先生からの連絡はびっくりするぐらい増えましたね。その中で一番困っていらっしゃったのは、映像を作る、授業動画を作ること。

    学校の先生は教育のプロと認識していますが、個人的には、授業のプロと映像授業のプロは全く違うものだと思っています。だからそこは困ったと思うんですよね。

    たとえば前提として授業は45分やるもの、って思っていらっしゃる先生がすごく多くて。でも、映像授業にするんだったらもっとコンパクトにしたほうがいいですよ、とか。

    個々に返していたのもあるんですが、本当にたくさんいただいたので、最終的には動画でお答えする形を取らせていただきました。

    YouTubeがあるなら先生はいらない?

    イメージ / Xavierarnau / Getty Images

    ーーYouTubeの使い方って本当に色々あると思います。中川さんは以前、先生側のYouTubeにおけるノウハウの蓄積も大事だとお話しされていました。先生がYouTubeを使うことについて、どのように考えているか教えていただけますか。

    中川:YouTuberの優良で分かりやすいコンテンツがあるなら、先生はいらないんじゃないかと言う人がいるんですが、我々はまったく思っていなくて。

    学校の先生のパワーというのは、子供たちと毎日接していることだと思うんですね。子供たちにとっても身近な存在の先生が教えることは、すごく大事で。

    そんな子供に寄り添っている先生が、子供との距離感をしっかりと保ちながらYouTube上でも授業をやることはすごくいいと思います。

    ただ、先生ってface to faceのプロなんですね。ある学者によると、先生は子供達の顔を見ながら2分に1回、意思決定をしていると言われています。「反応が薄いからちょっと言い方を変えてみよう」とか。

    でも、YouTubeの動画だと子供たちの反応が見えない。反応がない状態で授業をすることはきっと別のスキルで。そのスキルはYouTuberのみなさんがお持ちなので、そういったYouTubeで授業をやることの心構えも共有されるといいと思います。

    そうすれば、もし第3波、第4波がきて子供たちと会えなくなっても、YouTubeをもっとうまく活用できるようになるのかなと。

    先生YouTuber化における課題

    YouTubeでこの動画を見る

    youtube.com

    ーー私も授業動画がもっと広がればいいなと思っています。

    たとえばオーストラリアのエディ・ウーという先生が、YouTubeチャンネルを持っていらして。その方は現役の学校の先生なんですけれど、学校関係者、保護者の許諾を取って、固定カメラで撮った自分の授業を世界に配信されています。

    この方はコロナ禍の中でチャンネル登録者数100万人を達成されました。英語のチャンネルということもあって、オーストラリアだけでなく、様々な英語圏で子供たちの学びをサポートしているんです。

    葉一さんはよく、「先生は教えるプロだから、ぜひ先生に授業を作ってほしい」とおっしゃっていますが、そのあたりはいかがでしょうか?

    葉一:日本にも、ウーさんのような先生が出てきてくれることを本当に願っていて。でも多分、日本ではまだ、YouTubeに対する社会的に偏ったイメージを持たれている方がいると思います。

    今の状態で学校の先生がYouTubeに出ていくと、出る杭は打たれるじゃないですけど、そういった状況になりかねない。

    ただ、そうは思いつつも、もしお一人でもとびきりの授業動画を投稿して、人気の先生が出てきてくれたら変わると思います。その人が群馬の先生だとして、自分の生徒だけじゃなく、全然違う都道府県の生徒にも見られるという状況が起きる。そしたら、すごく変化していくと思うんですよね。

    YouTubeでいろんな先生が増えていったら、子供たちにとって学びの選択肢が増える。子供たちの人生が豊かになる可能性が高くなる。

    そのために、授業を撮りたい先生が動きやすい環境を、早く作らなきゃいけないよな、とは感じています。

    ▲イメージ / PIXTA

    ーー小林先生は現場にいる身としてどのように感じますか。

    おっしゃるようにいろんな人が授業動画を投稿することで、子供たちの選択肢が増えるのはすごく大事なことだと思っていて。学ぶときに選べるって、すごく大きいことだと思っているんですよ。

    それと、瞬間って結構大事で。子供たちが「今、学びたい」って時に(YouTubeは)すぐにアクセスできる。

    よく学校で見るんですけど、子供たちは「今日から頑張ります」ってよく言うんですよ。子供たちの「今日から頑張ります」は、実は結構ピュアで純粋なんです。その「頑張る」瞬間に、アクセスできる選択肢が増えるのはすごく大事だと感じています。

    だから、僕もどちらかというと授業動画をあげてみたい気持ちはあるんです。ただ、どうしても権利的な問題が不安で一歩踏み出せない。

    権利関係がクリアになれば、もっと間口が広がるんじゃないかって気はしています。中川さん、どうですか?

    中川:そうですね。日本の学校教育、特に義務教育は教科書が無償で寄付されていて。当然、国が税金で補填しています。その裏には、教科書著作権者がいて、もっというと教科書の中にある金閣寺の写真は、その金閣寺の写真を撮った方、もしくは金閣寺さんそのものが原著作権者でいらっしゃって……という、教科書は著作物の塊なんですよね。

    YouTubeのような公衆配信を行う場合は、そういった部分に配慮する必要があって。

    ただ、YouTubeで授業をやりたい先生のお気持ちを削がない方が絶対にいいわけです。だから我々文部科学省は、制度が邪魔しないように、上手にクリアするための仕組みを考えていかないといけないですね。

    私もこれから、そういう仕事を進めていこうと思っています。


    YouTubeでは13歳未満を対象とした公式アプリ「YouTube Kids」を配信している。

    YouTube

    YouTube上のコンテンツから独自のフィルターを通し、家族向けに適した動画のみが視聴できるアプリだ。9月末には、文部科学省から小学校国語の学習支援コンテンツとしても推奨されている

    また2月末には、休校対策キャンペーン「#学びを止めない未来の教室」に葉一さんの教育YouTubeチャンネル「とある男が授業をしてみた」が採用されている。