人気YouTuber「フィッシャーズ」彼らが今、本気で頑張っていること

    メンバーであるンダホさんとぺけたんさんに話を聞いた。

    「土手に行くけど、一緒に遊ぶ人ー?」

    地元の友だち同士の、どうってことない何気ない集まり。

    今からちょうど10年前。この荒川河川敷で、とある15歳の中学生男子たちが遊んでいた。

    Yuya Yoshida / BuzzFeed

    学校が休みの土日に、鬼ごっこをしたり、川遊びをしたり。

    そのうち、この集まりに名前がついていた。 だれが最初に名付けたのかすらよく覚えていない。

    それくらい、気軽に集まっているだけだった。

    彼らの名は、フィッシャーズ。

    UUUM提供写真 / Via ▲フィッシャーズ/左からマサイさん、ぺけたんさん、ザカオさん、シルクロードさん、ダーマさん、モトキさん、ンダホさん

    今や、YouTubeのチャンネル登録者数は583万人。動画の総再生回数は80億を超え、日本でトップクラスのクリエイター集団だ。

    アスレチックに挑戦したり、心霊スポットを訪れたり。はたまたドッキリや独自のゲームで遊ぶ彼らの動画は、今のYouTuber人気の礎を築いてきた。

    しかし、そんな彼らのYouTubeチャンネルを覗いてみると、不思議なことに最も再生されている動画は、アスレチック動画でも心霊スポット動画でもない。

    オリジナル楽曲「虹」のMVだ。

    彼らは今、YouTuberとしての活動を飛び出して、「音楽」に力を注いでいる。

    フィッシャーズ、結成秘話

    Keiya Nakahara / BuzzFeed / Via ▲左からぺけたんさん、ンダホさん。2人はフィッシャーズとして「んだほ&ぺけたん from Fischer’s」の名義でも音楽活動をしている。

    10月のはじめ。彼らの地元・葛飾区にある荒川河川敷に、フィッシャーズの音楽活動を担うメンバーのンダホさんとぺけたんさんが現れた。

    フィッシャーズの音楽活動は、この2人によって始まった。

    ンダホさんはボーカルのほか、楽曲のほとんどの作詞を手がけ、代表曲「虹」などの作曲も担当。ぺけたんさんはメインボーカルとしてグループをリードし、時に作詞も務める。

    Yui Kashima / BuzzFeed / Via ライブの様子

    これまで7曲の配信シングルに、2枚のアルバムリリース。今年8月には、三大音楽フェスのひとつ「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」にも出演した。

    YouTuberとしてほぼ毎日、動画を投稿しているのに、どうしてここまでするのだろう?

    「フィッシャーズは、絶対に動画だけをやる存在でいなきゃいけないってわけではないと思っていて」

    黄色のTシャツに、縞模様の半パン。動画で見る彼とまったく変わらない、いつものンダホさんがフィッシャーズ結成時の思い出を交えながら話す。

    「それこそフィッシャーズが集まったきっかけは、YouTubeをやろうということで集まったチームじゃないんです。たまたま部活動が落ち着いた時期に、『土日暇だし、久々にみんなで遊ぼうぜ』ってリーダーのシルクが言い出して。そこに付いてきたのが今のメンバーでした」

    Keiya Nakahara / BuzzFeed

    「その遊びの集まりが何回かあって、3〜4回目くらいの時に、『これ(集まり)、名前あった方が分かりやすいし、面白くね?』ってなって。よく川遊びとかしてたんで、魚みたいだしフィッシャーズにしようって。シルクが言ったんだっけ……? 誰が言ったかも分からない」

    隣に座るぺけたんさんが、「ほんと、LINEグループの名前みたいなもんなんで」とつぶやく。

    Keiya Nakahara / BuzzFeed

    「各メンバーそれぞれに好きなことがあって、いままでずっと、メンバーの好きなことをみんなで動画の中でやってきました。でも、動画じゃなくてもたとえばテレビのお誘いをもらって、出たいメンバーがいればみんなで出るし、音楽をやろうと言われたらみんなでやる。フィッシャーズは、メンバーそれぞれが本当にやりたいことをみんなでやっているチームなんですよね」

    ンダホさんも言う。

    「やりたいことをやるのが、僕たちの信念というか。そうあるべきだと思います」

    フィッシャーズといえば、冒頭で述べたようにいわゆる王道YouTuberのイメージが強い。

    しかし、その始まりは至ってどこにでもいる中学生の集まりであり、「YouTuberになりたい」という意気込みがあるわけでもなかった。

    ただ、好きなことを「みんな」で遊ぶだけーー。

    2人の場合、本当にやりたいことは音楽だった。

    苦労したメンバーの理解

    Keiya Nakahara / BuzzFeed

    とはいえ、フィッシャーズは結成時から音楽をやっていたわけではなかった。

    ぺけたんさんはニコニコ動画の歌い手として個人で活動し、ンダホさんは幼少期からピアノなどの楽器に触れていたものの、特にメンバーには明かしていなかった。

    結成から5年が経った2015年。2人は「音楽がやりたい」とメンバーに打ち明けた。

    「最初はメンバーも大して協力してくれなかったもんね(笑)。やっぱり、当時はフィッシャーズが音楽をやるってイメージもなかったし、音楽で成功しているYouTuberさんもそんなにいなかったし」(ぺけたん)

    「僕たちもそういうこともあって、『虹』という初めてメンバーと一緒にMVを撮った曲は、1年半くらいゆっくり時間をかけて作っていきました。まず、メンバーを集めて撮るのが実はすごく大変だった(笑)」(ンダホ)

    苦労を感じるエピソードではあるが、メンバーを恨んでいるような口調ではなかった。仲のいい友だちとの昔話をするようだった。

    まずはメンバーに納得してもらうため、詳細を明かさずに2人だけで「虹」を完成させ、それから1年半の時間をかけてMVを作り上げていった。

    5600万再生の大ヒット、広がる人気

    2017年8月29日。夏休みの終わりに、「虹」のMVが公開された。

    YouTubeでこの動画を見る

    youtube.com

    「メンバーからは『まぁとりあえず出してみれば?』くらいであまり期待されてなかったんですけど、再生数がガッと上がって、一気に1000万再生になって。それから、メンバー内の空気もかなり変わりましたね。本当にまさかこんなに聞いてくれるとは全然思っていなくて」(ンダホ)

    「すごい反響で、音楽ってこんなにすごいんだって。みんなが一気に音楽に目を向けてくれた瞬間でした」(ぺけたん)

    「虹」のMVは、いまでは5600万再生。コメント数は11万件を超え、フィッシャーズの中でもっとも再生された動画になった。

    その人気は、YouTubeを超えて地上波のテレビ番組にまで届く。2018年4月、フィッシャーズは念願の音楽番組「ミュージックステーション」へ出演。

    それは同時に、フィッシャーズの音楽が、彼らのファン、YouTuberのファン以外の音楽好きにも知られるきっかけとなった。

    歌うことへの賛否

    Keiya Nakahara / BuzzFeed

    「いい意見も否定的な意見も、意見をもらえるほど多くの人の目に、耳に届いているからこそ言ってもらえるんだなって認識していて。もちろん、僕らはいい音楽を出しているつもりなんですが、それをどう捉えるかは届いた相手次第だし、僕らの実力次第だと思います。そこは努力するしかないし、否定的な意見でも、何もないよりうれしいというか」(ンダホ)

    「無関心がいちばん悲しいよね」(ぺけたん)

    YouTuberがYouTube以外の領域で活動すると、時に「なんでYouTuberが…」と、色眼鏡で見られることも少なくない。「ミュージックステーション」「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」の出演発表時、彼らに対してもそういった否定的な声が上がった。

    それでも自信はあった。ンダホさんは言葉に力を込める。

    「僕らの音楽歴はすごく短いかもしれません。だけど、その中で、じゃあ僕たちがいちばん長く続けてきたことってなんだろう?って考えると、それはメンバーである古くからの同級生と一緒に作ってきた思い出なんだと思います。僕たちの曲は、その思い出を曲にしているので、自信を持って出せるんじゃないかと」

    「思い出」ーー。

    取材中、ンダホさんとぺけたんさんは何度もこの言葉を力強く繰り返した。これが自分たちの一番の武器であると。

    Keiya Nakahara / BuzzFeed

    フィッシャーズは、自分たちのことを「思い出系ネットパフォーマー集団」と称している。

    その名の通り、彼らは中学の思い出として動画投稿を始めた。今でも、当時の思い出を楽しそうに話したり、遊んでいる動画もある。

    5000万以上もの再生数を叩き出した「虹」も、ンダホさんが学生時代に考えたメロディが元になっていて、歌詞も当時のメンバーとの思い出を描いている。

    「思い出」は、彼らがYouTubeで人気を獲得してきた大きなキーワードだ。それが、彼らの音楽にも十分に活かされている。

    YouTuberの可能性

    UUUM提供写真 / Via ▲「PARCO CITY」(沖縄県浦添市)で開催された2ndアルバムリリースイベントの様子

    彼らの音楽活動はこれからも続いていく。

    フィッシャーズは、メンバーひとり一人がやりたいことを叶えていくチームだからだ。

    この10月には2ndアルバム「New Challengers」をリリースし、11月にはワンマンライブも控えている。

    Keiya Nakahara / BuzzFeed

    ンダホさんは、自分たちの今後の可能性についてこう語る。

    「YouTubeの動画も別にYouTuberじゃなくたって、芸能人の方やアーティストさん、芸人さんだったり、それこそふつうの夫婦の方だったり。だれがやってもいいと思います」

    「YouTuberが音楽をやるってこと自体が、間違いなく新しいことではある。僕らができるだけ指標になって、『YouTubeも音楽もやってて、いいね!』『奴らができるんだったら、我々もやってみよう!』と思ってもらえるようなポジションを目指したいですね。それは普段の動画においても同じです」

    ぺけたんさんも続ける。

    「誰かしらがやらないと踏み出せないと思います。ネットで活動しているYouTuberが、表に出て音楽をやるってことは今まであまりなかったこと。でも、僕たちは好きなことをやれているYouTuberだからこそ、挑戦しやすいと思うんですよね」

    今でこそYouTuberといえば、派手な格好で商品紹介やドッキリ動画などのイメージが定着しているかもしれない。

    しかし、本来YouTuberとは何事にも縛られない、自由な存在だったはずだ。

    好きなことで生きていこうともがく彼らは、次々といろんなことに挑戦してきた。

    フィッシャーズは今、ようやく浸透してきたYouTuberのイメージを壊し、「音楽」で新しい領域へ進もうとしている。

    Keiya Nakahara / BuzzFeed / Via ▲左からぺけたんさん、ンダホさん

    フィッシャーズ〉スポーツマンからダンサー、歌い手、クリエイター、社会人までそれぞれの個性光る仲良し7人(シルクロード/マサイ/ンダホ/ぺけたん/ダーマ/ザカオ/モトキ)からなる思い出系ネットパフォーマンス集団。

    ンダホとぺけたんは、「んだほ&ぺけたん from Fischer’s」名義でも活動している。

    Contact Yuya Yoshida at yuya.yoshida@buzzfeed.com.

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