AIで防災はどう変わる?これからも赤と緑を使うの?経営統合したYahoo!とLINE。2人のCEOに質問をぶつけてみた

    合計すれば1億人を超えるユーザーを持つYahoo! JAPANとLINEが経営統合した。何を目指し、私たちの暮らしにはどんな変化があるのか。2人のCEOに取材した。

    by ,

    2人は、お揃いのネクタイを締めて取材場所に登場した。赤と緑のストライプだ。

    経営統合の発表から1年4ヶ月。3月1日に経営統合を果たしたYahoo! JAPANとLINEを率い、新生ZホールディングスのCo-CEO(共同最高経営責任者)となった、川邊健太郎氏と出澤剛氏だ。

    ともに8000万人を超えるユーザーを持つ大手2社の統合は、私たちの暮らしにどんな変化をもたらすのか。3.11から10年となったいま、災害大国・日本で新生Zホールディングスは何ができるのか。

    BuzzFeed Newsは2人に取材した。

    (ZホールディングスはBuzzFeed Japanに出資しています。この記事は、資本関係にかかわらず経営統合を社会に影響を与える重要なニュースと捉え、BuzzFeedの編集・倫理ガイドラインに基づいて取材・出稿しています)

    「あくまでユーザーファースト。主従は間違えてはいけない」

    Yuto Chiba / BuzzFeed

    出澤剛氏(左)と川邊健太郎氏(右)

    ーー1年4ヶ月前、経営統合が発表された時は誰もが驚きました。改めて、統合に至った背景を教えてください。

    川邊:端的に言えば、やれることを増やすためです。

    コロナ禍でもそうですが、ユーザーと向き合っていると、インターネットの力でもっとユーザーの生活の役に立つことができる、困っている時に助けることができると思うんです。

    サービスのラインナップが多彩であればあるほど、様々なポイントで社会のアップデートを支えることができるはずです。

    そういった感覚が両社にあった中で、何かできないかを模索した結果が今回の経営統合でした。

    我々はインタネットに多様な選択肢を残したい。そして、ユーザーに対してもっと便利なサービスを提供したい。それに尽きるかなと思います。

    出澤:そうですね。このコロナ禍で、ユーザーのペインポイントの輪郭が、よりはっきりしてきたと感じます。

    やはりユーザーにとって、今まではより安全な方法をとるためには多少不便でも仕方ないと思っていた部分があるのではないでしょうか。

    これまではオンラインよりも「対面」が重視されていました。お金にまつわること、医療にまつわること、行政にまつわることの課題が浮き彫りになった。

    お互いそれぞれの領域で頑張ってきましたが、これまで以上に便利なサービスを生み出すことが求められていると考えています。

    シナジーを活かすこと、そしてユーザー目線でサービスをつくることは、我々の全体戦略の根幹にあるものです。

    ーー国内には米GAFAへの対抗軸としての期待も高まっています。一方、新生ZHDは、あくまでその国固有の課題の解決を目指すという方針を示しています。

    川邊:自分たちがサービスを展開している地域の困りごとなどペインポイントに即時対応していくことが、ユーザーファーストを考える上でも、グローバルテックジャイアントと競争する上でも有効な策と考えています。

    ーーでは、米GAFAや中国BATに対抗しうる「第三極」として世界にドンと出ていくイメージではない?

    川邊:結果、そうなったら良いなとは思います。でも、第三極になろうとしてユーザーを軽視したら、そうはなれないでしょう。

    ユーザーの方を向いて一生懸命やっていたら、結果としてそうなったという未来はあり得ると思います。

    その主従は、間違えてはいけない。

    米・中の対立が深刻となった時に、我々のサービスがニュートラルなものとして利用されるようになるということも、結果的には起こり得るかもしれません。

    ただ、それは仕掛けるものでも、望むべきものでもないと思っています。

    日本だけでなく、アジアの地域全般にいる我々の目の前のユーザーに向き合っていった結果、多くの人にとって選択肢のひとつになるということは、あるかもしれません。

    巨大プラットフォーム誕生で「ニュース」はどうなる?

    Yuto Chiba / BuzzFeed

    ーーZOZOや一休など、これまでZHDが統合や買収をした事業は、ユーザー目線から見るとあまり変化はありません。今回の経営統合を経ても、PayPayとLINE PAYなど一部を除き、基本的には両社のサービスをそのまま使い続けることを想定しているのでしょうか?

    川邊:すべてはユーザーから見た時に、もっとも良いユーザー体験を作るということに尽きます。無理をさせてはいけない。

    ですから、全部が「LINE」か「Yahoo!」の名前になるということはない。

    一方で、もともとZHDが持っていた金融サービスはほぼ「PayPay 〇〇」に名前を変えてきました。

    これらの根っこにあるのは、ユーザーからどう見えるのかという一点です。

    PayPayと連動性が高まっていくので、名前を変えようと判断したこともありましたが、すべてのサービスでそのような変更を加えてくということはありません。

    一事が万事、すべては「ユーザーにとってどうなのか」ということです。

    ーーYahoo!ニュースとLINE NEWSは統合する予定はないと、先日の会見で明言していました。ユーザー層の違いがその理由とのことですが、シナジーを発揮するために何か打ち出す予定などはあるのでしょうか?

    川邊:コンテンツの連携を積極的にやっていこうと思っていまして、その第一弾が「3.11」の特集です。

    LINE NEWS、Yaoo!ニュース、それから記者を抱える媒体と連携をし、良いコンテンツは両方で出そうと。

    あるいは、3.11の募金は両社で募った方がたくさん集まるからやりましょうと。

    社会的な責任をYahoo!ニュース、LINE NEWSともに負っていますので、社会に向けた啓発は大いに連携してやっていければと思います。

    ーー日本新聞協会は「経営統合に関する見解」という声明を出しています。巨大になるほど、公共性や経営の透明性などに懸念もあるという指摘です。声明はどのように受け止めていますか?

    川邊:声明がこのタイミングで出ること自体が、とても頼もしいことだと感じました。

    「引き続き記事は我々が書くから、ちゃんと届けなさいよ」というメッセージはパートナーとして非常に頼もしい。

    大いに記事提供元の各社さんとのお付き合いを深めたいと思いますし、その時に何か不透明なものを感じるならば、こちら側も是正をして開かれたものにしていきたいと考えています。

    きちんと取材をして記事を書く提供元さんと連携していくことが、結果的にフェイクニュースとかヘイトスピーチといったものへの対抗策としても最も有効でしょう。

    そのような公共性を、引き続き担っていくということに尽きます。

    Yuto Chiba / BuzzFeed

    出澤:私もまったく同じ考えです。

    我々が得意なのはニュースを届けるところで、ニュース記事を作るところはずっと長い間やられている提供元の皆さんがいるので、そこはパートナーシップで取り組むべきことだと思います。

    統合を経て、それをより強固にしていきたいというのが我々の思いです。

    声明については、私も心強く受け止めました。

    防災のためAIでできることは多い

    ーー東日本大震災から10年です。「防災」は新生ZHDの集中領域となっていますが、経営統合を経てどのような新しい価値を提供していきたいと考えているのか教えてください。

    川邊:我々自身は「AIテックカンパニーになる」と標榜していて、自分たちもAIの技術を様々なサービスを通じて研鑽していきたいと考えています。

    その最たるもののひとつが、防災・減災・復興になるのではないかと思っています。

    なぜかと言えば、現時点でのAIの技術は、何かを予測すること、あるいは個別最適化していくことに最も長じているからです。

    災害と言っても一括りにすることは難しく、その災害の大きさによっても必要となるものが異なります。被災した状況によって必要となる情報は変わります。

    ある程度、精度高く予測して、例えばそれぞれの形にあった避難ルートの提案や復旧や復興のメニューを提示するということが必要です。しかも、それは全体最適な選択肢を提示することが最も望ましい。

    避難ルートを提示する上でも、同じルートをその地域にいる人全員に伝えてしまっては、逆に道が混雑してしまいます。

    ここに何人、ここに何人と、どのルートを選択することが結果的に良いのかということの予測はAIが担える部分が多いと思いますし、まだ現在はほとんど活用することができていない点でもあると感じます。

    我々の技術を提供することで困った人を助け、かつ我々の技術も広げていきたいという思いがあります。

    また、LINEが得意としているタイ、インドネシア、台湾など、アジアの災害の内容は、ほぼ共通しています。火山、地震、台風といった災害が懸念されています。

    こうした点で、日本で研鑽を積んだサービスは広くアジアで提供できると思いますし、それによって多くの人の命を救うことも可能だと考えています。

    グローバルに展開していくという意味でも、非常に重要な領域です。

    Yuto Chiba / BuzzFeed

    ーーそれを、LINE上でも提供するかたちになるのでしょうか?

    川邊:開発も共同で行いますし、Yahoo!のサービスにもLINEのサービスにも届ける。ユーザーとの接点があるところには、なるべく多く出して、一人でも救える命を多く救いたいと考えています。

    ですから、「これ」というサービスに集約するというよりは、できればタッチポイント全部に共通のサービスを提供していきたい。

    ーー東日本大震災について、これからも取り組んでいくのでしょうか?

    川邊:だんだんと復興が進む中で、福島第一原子力発電所の廃炉の問題は、最後まで残ると思います。

    東北の他の地域が復興したとしても、福島が抱える問題は、まだ終わりませんよね。

    出社前提だとシナジーを出すための「議論も遅れかねない」

    Yuto Chiba / BuzzFeed

    ーー1年4ヶ月前、経営統合を発表した場では、「対等な立場で殴り合ってでもつくっていく」と宣言されてました。これまで、どのような点で「殴り合って」きたのでしょうか?

    川邊:殴り合ったというよりは、互いに議論をかわしてきたかどうかという意味で言えば、この1年4ヶ月は様々な制約があったために、そこまで至らなかったというのが正直なところです。

    コロナによって、調整すべきことも基本的にはリモートで進めてきましたが、そこまで深刻な何かがあったかと聞かれれば、基本的にはなかった。

    むしろ、リモートでやったことは結果的にはよかった。他の業務もほとんどがリモートになったために、アポの調整もしやすいですし、効率よく議論ができた。

    リアルでやるとなると、今回はZHDのオフィスでやったから、次はLINEのオフィスで、といった調整になりがちですが、そういったことも関係なく進められたので。

    出澤:議論の回数は本当に多く確保できましたね。

    川邊:リアルでやっていたら、たぶん半分くらいになったでしょうね。

    出澤:たぶん、そうですね。

    1年4ヶ月前の会見でも申し上げましたが、我々の根本的な志のようなところは非常に似ていて、共通するものがある。色々と話をしてみると、かなりコミュニケーションはスムーズにいきました。

    もちろん真剣な議論になる場面はありました。ありましたが、「考え方が違う」と平行線をたどるのではなくて、聞けば聞くほどにお互い同じところを見ていたんだなと感じた瞬間の方が多かったですね。

    それは個人的な発見でもありました。

    川邊:これからは種々の制約が取り払われますから、経営会議や「プロダクション委員会」で様々な議論を進めていきたいと考えています。

    おそらくは様々なサービスを互いに展開している中で、より集中領域のサービスにリソースを寄せるため、どう調整していくのかといった話になってくるでしょう。

    我々はそういった議論も、恐れずに大いにやっていきたいなと思います。

    ーーオンラインとリモートがベースで、必ずしも出社する必要はない。コロナ後もこの働き方は続けていきますか?

    川邊:そうですね、基本的に。特にLINEとシナジーを、ということで言えば、物理的に四谷と紀尾井町でオフィスは離れていますから、出社前提にするとむしろシナジーを出すための議論も遅れかねない。

    ですから、オンライン前提の方が場所にとらわれず、この1年のようにドンと時間をとって打ち合わせができる。その方が効率も良いはずです。

    Yahoo!、LINE以外の第3のブランド誕生も

    Yuto Chiba / BuzzFeed

    ーー「Yahoo! JAPAN」というブランドでは海外展開をすることが難しい中で、今後はLINEブランドを中心に使って伸びていくことを目指すのでしょうか。それとも新たなブランドで勝負するのでしょうか?

    川邊:まず、(米国発祥の)Yahoo!というブランドは、ライセンスの変更がない限りは、海外では使えません。

    じゃあ、海外展開はどうするか。すでにたくさんユーザーがいるLINEを広げていくのは当然ひとつの選択肢ですし、最も現実的でユーザーにも歓迎してただけるのではないかと思います。

    他方で、我々自身はインターネットやAIなどで世界中の人に使っていただけるようなサービスをどんどんと生み出すためのチャレンジをしたいと思いますので、そういった志のもとではブランドにとらわれず、新しいブランドで勝負していくこともあり得ます。

    ーーすでにアイディアは?

    川邊:今はまだ、さすがにありません。

    統合したので、まずは互いの価値の最大化やLINEとYahoo!の連携にプライオリティを置いて議論を進めています。

    ですが、この先、今までのYahoo!やLINE、PayPayにとらわれず勝負していくものも生み出していきたいと思っています。

    ーーこれからも、赤と緑をずっと使っていくのでしょうか?

    川邊:そうですね。色って、非常に象徴的ですから。

    サービスで言うと、LINEが緑、Yahoo!が赤。連携するときはストライプ。そうすると、わかりやすいですよね。

    何かサービスを使うときに、これはYahoo!が提供しているものなのか、LINEが提供しているものなのかと知っていただいた上で安心して使っていただけるのではないかなと。

    ーーちなみに、お二人は会見や取材ではいつも同じネクタイを付けているように見えますが。

    川邊:今はそうです。キャンペーン中ですから、1本をずっと使いまわしています(笑)。

    結構ね、社員も「今日は緑の服を着てきました」「赤の服を着てきました」って言ってくれたり、取材の記者さんとも話題になったりします。

    そういった話題にしていただけるだけでも、ありがたいなと思っています。

    Contact Yuto Chiba at yuto.chiba@buzzfeed.com.

    Contact Kando, Yoshihiro at yoshihiro.kando@buzzfeed.com.

    Got a confidential tip? Submit it here