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「アナフィラキシー治療薬の在庫が足りず…」ワクチン接種めぐり誤情報が拡散

現在日本で承認されているのはファイザー社のワクチンのみ。また、エピネフリンとアドレナリンは同じものだ。

新型コロナワクチンの一部医療従事者への先行接種が進む中、Twiitterで「アナフィラキシー発作時の対応薬エピネフリンは全国在庫がなく、代わりにアドレナリンが用意されています」という情報が拡散された。

しかし、この情報は誤りだ。

エピネフリンとアドレナリンは呼び名は違うが同一のアドレナリン製剤であり、ワクチン接種の現場では緊急時にはエピネフリンに限らず使用可能なアドレナリン製剤を使うことで準備が進められている。

BuzzFeed Newsはファクトチェックを実施した。

拡散された匿名アカウントの発信

「看護師です。コロナワクチン私以外が全員打ちます。どの会社のものかさえ知らされません。アナフィラキシー発作時の対応薬エピネフリンは全国在庫がなく、代わりにアドレナリンが用意されています」

拡散されたのは、集中治療室(ICU)で働く看護師を自称する匿名アカウントによって3月21日に投稿された情報だ。

3月22日午後12時までに1000回以上リツイート、2000回以上「いいね」されるなっど、広がった。ツイートやアカウントはその後、削除されている。

この投稿には、3つの不正確または誤っている点がある。

まず、ワクチンについて「どの会社のものかさえ知らされません」という点。前提として、現在日本で承認されているのはファイザー社のワクチンだけだ。

また、「代わりにアドレナリンが用意されています」という点。エピネフリンの商品名はエピペンだが、アドレナリンは呼び方が違うだけであり、同じ薬だ。

さらに「エピネフリンは全国在庫がなく」としている点。メーカー側は公式にそのような発信はしておらず、また、厚労省も接種現場で適切な対応がとれるように供給についての対応を進めているという。

厚労省の見解は?

エピネフリンやアドレナリンはアナフィラキシー(重いアレルギー反応)が起きた際の救急対応として用いられる。

新型コロナワクチンを接種した際には、100万人中2〜5人程度の割合でアナフィラキシーを発症すると推定されている

ファイザー社のワクチンによるアナフィラキシーについては、イギリスで1万回あたり0.2回、アメリカでは1万回あたり0.047回という頻度で起きている。

いずれも適切な治療を受け回復しているが、その多くは接種後15分以内に起きる可能性が高いことから、日本では15分間の経過観察が呼びかけられている。

これに対応するために必要となるのが、アドレナリン製剤だ。

厚労省は2月25日の段階で「予防接種会場での救急対応に用いるアドレナリン製剤の供給等について」という通知を発出。

アドレナリン、エピペン、ボスミンの3種類が、アナフィラキシー発生時の救急対応では使用可能であるとした。

厚労省健康局健康課予防接種室の担当者はBuzzFeed Newsの取材に対し、「エピネフリンとアドレナリンは呼び方が違うだけで同じもの。そのため代用できる」と説明し、以下のように語った。

「先行接種を行うような医療機関にはアドレナリン製剤があり、基本的にはそちらを使っていただくことが多いと思います」

エピペンについては、メーカーが無償提供を申し出たことから、厚労省は希望する市町村に申請するよう呼びかけている

「エピペンが必要なのは集団接種会場や診療所などが想定されます。こちらについてはそれなりの量をメーカーから無償でご提供いただいているので、まずはそちらを配布していく予定です」

「今後はエピペンに限らず、アナフィラキシーに対応するため使用することのできるアドレナリン製剤をメーカーと引き続き協力しながら用意し、全体として適切な対応がとれるよう取り組みます」

なお、エピペンを製造販売するマイランEPD合同会社はBuzzFeed Newsの取材に対し、「供給状態に懸念があるとは公式に発信していない」と回答。

今後の増産などについては「社内で協議中」と説明した。


BuzzFeed JapanはNPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)のメディアパートナーとして、2019年7月からそのガイドラインに基づき、対象言説のレーティング(以下の通り)を実施しています。

ファクトチェック記事には、以下のレーティングを必ず記載します。ガイドラインはこちらからご覧ください。なお、今回の対象言説の一部は、FIJの共有システム「Claim Monitor」で覚知、参考にしました。

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