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NHKが報じなかったポンペオ国務長官のある発言。少数民族に対する迫害、なぜ明言を避けた?

日本を訪れたポンペオ長官がNHKのインタビューに語ったあることが、記事からに掲載されていないとTwitter上で話題となっている。それは2つの少数民族が中国国内で受けている迫害についてのコメントだ。

日本を訪れ、菅首相や茂木外相と会談を行ったアメリカのマイク・ポンペオ国務長官。

ポンペオ長官がNHKのインタビューに語ったあることが、記事に掲載されていないとTwitter上で話題となっている。

NHKが報じなかったこととは。

訪日の背景には「中国による脅威」?

ポンペオ長官は10月6日、日本を訪れ、オーストラリア、インド、日本の外相らと会談に臨んだ。

BBCはこの会談の背景には悪化の一途をたどる米中関係があると伝えている。中国が存在感を増す中で、中国の周囲にある同盟国と関係強化を図る狙いがあるとした。

トランプ政権には、11月のアメリカ大統領選に向けて、中国を攻撃することで有権者の支持を集めたいという狙いもあるとみられる。

そのような中、ポンペオ長官は6日午後、NHKの単独インタビューに応じ、その様子は「ポンペイオ長官 訪日のねらいは… インタビューで何を語ったか」という記事で配信されている。

新型コロナに感染したトランプ大統領の様子から、訪日の狙い、今後の日米関係や中国との関係性など話題は多岐にわたっている。

「世界はあまりにも長い間、中国による脅威にさらされてきた。いまこそ、この問題に真剣に対応しなければならない」とポンペオ国務長官が語る中で、NHKの記事はあることについて報じていない。

それが新疆ウイグル自治区、そして内モンゴル自治区で起きている問題についてポンペオ国務長官が語った言葉だ。

消えたのは少数民族が受けた被害について…

ポンペオ長官は東シナ海や南シナ海において中国が軍事行動を行っていることに触れ、「弱さを見せれば、つけこまれる。譲歩することは、威圧的で軍事的な手段を用いて問題を解決しようとする国を利することになる」とコメント。

その上で、「例えば、インドとの国境地帯や東シナ海や南シナ海、香港、カンボジア、台湾、新疆ウイグル自治地区、内モンゴル自治区の問題がある。中国に対抗するためにはこちらも力を持つこと、そして、日米のように価値観を共有する国々で連携していくことだ」と語ったとNHKは報じている。

だが、「新疆ウイグル自治地区、内モンゴル自治区の問題がある」と翻訳された箇所では、より具体的な問題についてポンペオ長官は言及している。

米国務省が公開したインタビュー記録によると、ポンペオ長官は以下のように語っている。

「The people inside China, too, are being treated very badly for the vast – the forced sterilization of women in Xinjiang or the inability of Mongolians inside of China to simply be who they want to be(新疆の女性への強制的な不妊手術や、中国国内のモンゴル人がなりたい自分になることができないなど、中国国内の人々もまた非常にひどい扱いを受けています)」

新疆ウイグル自治区は1000万人以上のイスラム少数系民族が暮らしている地域だ。

少数系民族の人々は時に拘束され、時に監視され、女性であれば強制的な不妊手術を受けさせられるなど様々な迫害を受けているとされている。

BuzzFeed Newsは収容されていた人々が強制的に不妊手術を受けさせられていたといった証言を紹介すると同時に衛星写真を分析し、2017年以降に強制収容所と見られる建物が260以上も同地区に建設されていると報じており、そのような迫害は今も続いていると見られる。

また、内モンゴル自治区では学校教育の中で中国語教育を強化する一方で、モンゴル語の授業が減りつつある。

そのような動きに反発する保護者らを中国政府は拘束するなど、締め付けを強めているとNHKは報じている

このような少数民族に対する中国語教育を強める動きは2017年以降、加速している。

ポンペオ長官がNHKのインタビューの中で語っていたのは、こうした中国国内で起きている少数民族に対する迫害だ。

だが、NHKはこの点について明言を避けた。

NHKの回答は?

今回、なぜ新疆ウイグル自治区、内モンゴル自治区の人々に対する迫害について、NHKは明言を避けたのか。

NHKの広報担当者はBuzzFeed Newsの取材に対し、「ご質問にあるアメリカのポンペイオ国務長官のインタビューについては、内容を確認した上で、発言全体の要旨として掲載しました」と回答した。

前提として、今回の記事はインタビューでポンペオ長官が語った言葉を一言一句伝える形式ではないため、要旨として掲載することは問題ない。

だが、中国政府が一部の少数民族に対して行っている迫害について結果的に言及を避けたことに疑問の声が上がった。