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184時間勤務で手取りは月5万、全員解雇を決めた会社も。コロナでタクシー業界にも不安広がる

新型コロナウイルスの感染拡大でダメージを受けているのは飲食店や小売業などだけではない。タクシードライバーたちもまた、先行きの見えない中で生活への不安を抱えている。

新型コロナウイルスの感染が拡大する中で、経済的ダメージが大きなものとなっている。

政府は4月7日に東京をはじめとする7都府県に緊急事態宣言を発令、改めて不要不急の外出自粛を呼びかけた。

一方で、自粛の呼びかけばかりがなされる中で、具体的な補償策がいつになっても示されないことへの批判も多い。現状、主に提示されている救済策は貸付だ。1世帯30万円の給付金も様々な条件が設けられており、損失を受けた全員が無条件で受けられるものではない。

ダメージを受けているのは飲食店や小売業だけではない。タクシードライバーたちもまた、大きな打撃を受けている。

休業補償より失業手当を。全員解雇を決断の会社も

Charly Triballeau / AFP=時事

4月6日、東京都のタクシー会社、ロイヤルリムジン株式会社は社員を全員解雇することを決めた。ロイヤルリムジン株式会社が社員に宛てた文書には、以下のように記載されている。

《この度、政府より緊急事態宣言が出されることになりました。それに対し、当社は生き残りをかけ、一旦事業を休止することを決断しました。

具体的な方策は現場より説明いたしますが、混乱の中少しでも早く、皆様が円滑に失業手当をもらえるために決断した次第です。また、政府からの30万円の給付金もしかりです。

タクシー事業の休業補償は歩合給と残業の給与体系のため、失業手当より不利なためこの選択をしました。》

ロイヤルリムジン株式会社の担当者はBuzzFeed Newsの取材に対し、今回の休業は「新型コロナが終息するまで」のもので、期限は未定と回答した。

休業補償を使用した場合、「補償されるのは基本給の60%程度だ」とした上で、タクシードライバーの給与体系は歩合給と深夜料金を組み合わせたものであるため、基本給だけで計算すると低く見積もられてしまう問題があると語る。

そのため、休業および社員の解雇を行い、失業手当を受けられるようにしたとのことだ。なお、ロイヤルリムジン株式会社は事業再開後には社員を再雇用する方針だ。

担当者は「こうした対応を取るのはうちだけではありません。これから、もっと色んな会社で同様の対応がとられるはずです」と明かした。

休業は妥当な選択?

Charly Triballeau / AFP=時事

ある30代の男性タクシードライバーは政府が緊急事態宣言を出す方針を固めた4月6日からタクシー会社の休業を知らせる連絡が増えてきたと語る。

男性はタクシー会社に所属して、ドライバーをしている。現在まで、会社から休業などの通達はない。保証人を立てれば10万円の貸付をする、そんなアナウンスもあったと明かす。

ロイヤルリムジン株式会社の休業と全員解雇の知らせも、知り合いを通じて知ったという。だが、驚くそぶりは感じられない。

「緊急事態宣言が出るということが決まれば、休業するという話は聞かされていました。休業補償をもらうにしても、1日あたり大した金額にはならないんですよ」

だから、これは妥当な選択だと男性は言う。

「これは完全歩合給である以上は仕方のないことだってことはみんな理解はしてるんです。良いときは良い。でも、この給与体系がいまネックになってきてる」

時給400円〜500円の世界

2月、タクシードライバーたちが屋形船での宴会で集団感染をしたことが報じられた。当初はタクシー業界へのダメージが危惧された。だが、「ほとんど被害はなかった。いまの状況と比べたら微々たるものです」とつぶやく。

「まだ2月は人がいたんです。でも、じわじわと減ってきて。3月頭にはいつもの半分、それから3分の1になって、いまは4分の1から5分の1まで減りました」

「いまじゃ時給換算してしまうと400円から500円の世界。見切りをつけるのが早い人はすでに辞めはじめています」

男性の頭の中にも転職という選択肢がよぎる瞬間があるという。だが、独身であることもあって、「他の人よりは身軽です」と笑う。

「お子さんがいる人は、もっと大変ですよ」

「それなりに簡単なことではないとはわかっているんです」と前置きしながら、それでも「補償はお金が一番良い」と口にする。でも、「当てにもできない」。偽らざる本心だ。

「先行きは見えない。そんな中で、うろたえずに…辞めるべきタイミングでは辞められるよう覚悟はしています」

23日働いて手取り5万円の人も

Taro Karibe / AFPŽžŽ–

こうした影響は東京以外でも顕著だ。

兵庫県でタクシードライバーをしている50代の女性は「以前ならば夜勤務で40人以上を乗せていましたが、いまでは10人程度です」と話す。

女性の勤務するタクシー会社では補償策の提示はないと言う。

「先輩の中には月23日勤務(1日8時間勤務)で先月の手取りが5万円だった人もいます」「不安がありすぎて、睡眠がとれず、体力の限界を訴えるドライバーもいます」と苦しい現状を伝える。

例年のこの時期に比べると収入が半分以下と明かす同僚ドライバーたちもいる。

「ある程度、みんな1ヶ月でこれだけの金額は最低限必要だ!という生活レベルがあると思います。でも、家賃や光熱費、食費や学費、それにローンなど払っていけなくなってしまう不安があります」

「不要不急な外出は避けるようにと通達するなら、それによって収入がなくなる職種の人にいままでの生活を維持できる補償がほしい」

「今日も不安を抱えながら出勤します」

損失補償「現実的ではない」と首相が否定

時事通信

緊急事態宣言が発令され、東京都など7都府県の知事は具体的に休業要請する業種の検討を進めている。最終的にどのような業種に休業要請が出されるかは定かではない。

安倍首相は4月7日、緊急事態宣言発令前の衆議院議院運営委員会で営業休止を求められた事業者の損失を補償することは「現実的ではない」とし、否定している。

そんな中で、休業要請によるしわ寄せを受けるのは事業者、そしてそこで働く人々だ。

生活困窮者の支援団体は「生活困窮に至るまでにはタイムラグがある」と口々に語る。リーマンショック時には2ヶ月ほどのタイムラグを経て、人々が住まいを失い、貧困が可視化された。現場には、このままでは多くの人が住まいを失うという危機感が広がっている。

Contact Yuto Chiba at yuto.chiba@buzzfeed.com.

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