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緊急事態宣言を全面解除するのに、時短営業は継続? 要請の法的根拠は? 菅首相が“最後の首相会見”で語ったこと

菅首相は「ウイルスへの高い警戒は保ちながら、飲食などの制限について段階的に緩和をする」と語った。

政府は9月28日、全国19の都道府県に発出していた緊急事態宣言および8県に派出していたまん延防止等重点措置について、9月30日の期限をもって、すべて解除することを決めた。

今年に入り、4月4日以降は常にどこかの地域に対して宣言もしくは重点措置が適用されてきた。全面解除は約半年ぶりとなる。

菅義偉首相が在任中最後の記者会見で語ったこととは。

「ウイルスへの高い警戒は保ちながら…」

菅首相は冒頭、「医療・介護関係者、飲食関係者、国民お一人おひとりにご協力いただきながら、医療体制構築、感染対策、ワクチン接種を懸命に進めてまいりました」とコメント。

全国の新規感染者数が9月27日には1128人まで減少したこと、病床利用率が全ての都道府県で50%を下回ったこと、重症者数も減少傾向にあることなどを強調し、「専門家から示された宣言解除の基準を満たしている」として解除を判断したと語った。

今後については「ウイルスへの高い警戒は保ちながら、飲食などの制限について段階的に緩和をする」「これから新型コロナとの戦いは新たな段階を迎えます」とした。

その根拠として示したのは、累積の新規感染者数に対する死者数の割合だ。

今年1月から3月にかけては、2.4%だったものが、4月から6月にかけては1.7%に、7月から9月にかけては0.3%となっている。

こうした数字をもとに、菅首相は「今後はウイルスの存在を前提とし、社会全体の対応力を高めながら次の波に備え、日常大切と感染対策を両立させていくことが重要」としている。

ワクチン接種の功績を改めてアピール

今後必要なコロナ対策については、3つの方針を示した。

(1)さらなる医療提供体制の整備

(2)着実なワクチン接種の継続

(3)日常生活の回復

自身が特に力を注いできたワクチン接種については、総接種回数が1億6000万回を突破したことをアピールし、「背中が数ヶ月前には見えなかったアメリカの接種率を抜きました」とコメント。

「ワクチンの効果により、今回の感染拡大では65歳以上の感染者を10万人、死亡者を8000人減らすことができたという厚労省の試算もある」と話した。

現在、注目が集まる3回目の接種(ブースター接種)については、「審議会の意見を踏まえ、年内にも3回目接種を開始できるよう準備を進める」としている。

あわせて、ワクチン接種の結果、「社会経済活動の正常化」も見えてきたと語り、アクリル板の設置など認証を受けている飲食店においては都道府県知事の判断を踏まえながら、21時まで営業することを可能にする方針を示した。

イベントについても、これまでは収容率の50%以内かつ上限5000人という制限を課してきたが、今後は収容率の50%以内かつ上限1万人へと緩和される。

総裁選の投開票を29日に控え、最後の首相会見に臨んだ菅首相は「総理に就任してから1年あまり、新型コロナとの戦いに明け暮れた日々でした」とこれまでの歩みを振り返る。

悩み抜いた日々の中でたどり着いたのが「ワクチンと治療薬」であったとし、そうした取り組みの成果として、「新型コロナとの長い戦いにもはっきりとした明かりが見えてきている」「明かりは輝きを増している」とした。

全面解除後も時短営業の要請はできるのか?

段階的な制限緩和の方針を示した政府に対し、フリーランスの江川紹子さんは全面解除ではなく、まん延防止等重点措置に移行しない理由を質問した。

菅首相は地方自治体と連携しながら対応を決める中で、「まん延防止(重点措置の適用)をどうしても、というところは結果的になかった」とその理由を説明している。

また、江川さんは宣言や重点措置を全面解除した場合に時短営業などの要請は法律上可能なのか、個人の自由を制限するための法律づくりの必要性についての認識も尋ねた。

菅首相は「今の法律の中でも(全面解除後も)要請はできる」との見解を示している。

政府分科会の尾身茂会長は基本的対処方針等分科会の中でも、全面解除ではなく重点措置への移行を求める意見もあったことを認めた上で、その理由は主に2つあったと説明した。

まず、重点措置を適用した方が実効性が担保できるという考え方だ。

これについて尾身会長は「確かにそのような側面はあるが、特措法24条9項を使えば、知事が実情に合わせて(重点措置と)ほぼ同じことをできる仕組み」であると述べた。

二つ目は、全面解除が「間違ったメッセージ」になるという懸念だ。「ガードを下げていいんだというメッセージだけは絶対にやめてください」と政府に求めたという。

尾身会長は市民および政府や自治体、それぞれにお願いがあるという。

市民に対しては、基本的感染対策を続けること、自由意志を尊重しつつワクチン接種率を上げることを求めている。

また、政府や自治体に対しては特措法24条9項などを活用しながら、制限の緩和は段階的に少しずつ行うこと、ワクチン・検査・Co2モニターなど科学技術を総合的に使うこと、医療提供体制の拡充、リバウンドが起きた場合には素早く強い対策を講じることを要望した。