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買い物のための外出は感染拡大に影響なし?年末年始休みを1月10日まで延長? 新型コロナ分科会で議論されたこと

歓楽街の感染分析や大学入学共通テストにおける新型コロナ対策などを議論した新型コロナ分科会。会合では、買い物のための外出は感染者数に影響しないといったデータが提示された。

新型コロナウイルス対策専門家分科会は、10月15日の第11回会合で、歓楽街の感染分析や大学入学共通テストにおける新型コロナ対策などを議論した。

現在の感染状況をどのように理解すべきかを、その背景と共に急遽、政府に対して提言を提出。リスクの高い行為 / 低い行為を広く国民に発信することを求めた。

今回の会合では、買い物のための外出は感染者数に影響しないといったデータが提示され、今後も歓楽街での感染対策に重点的に取り組んでいく方向性が示されている。

なぜ、すすきので感染者が減らないのか?見えたポイント

会見の冒頭、東京・歌舞伎町、大阪・ミナミ、名古屋・栄、福岡・中洲、札幌・すすきの、の5つの都市の歓楽街での人出・感染者数・重点的な検査数・休業要請などをまとめたグラフが提示された。

それらから見えてきたのは、どのような対応がどのような時期にとられることで新型コロナの感染者数を減らすことができるのを示唆するデータだ。

歌舞伎町、ミナミ、栄、中洲では7月から8月にかけて感染者数の減少率が高い。そのうち、歌舞伎町・ミナミでは重点的なPCR検査を行ったことが、栄・中洲では外出する人が減ったことが感染拡大を食い止めることに寄与したと西村康稔・新型コロナ担当大臣は語る。

その上で、すすきのは他4都市と比べ、感染者数の減少傾向が緩やかなことについて言及。「重点検査、人出の減少もない」ことが感染者数の減少に歯止めをかけているのではないかとの認識を示した。

「重点的なPCR検査には感染者を特定し、二次感染・三次感染を防ぐ効果があります。(すすきのにおいては)その件数が少なく、時間短縮営業の要請もなく、マイナスにならなかった。このことが、すすきので引き続き一定程度の陽性者が出ている原因ではないか」

西村大臣はこのように述べた。

スーパーなどへの人出、感染者数に影響なし

参考資料として、政府は「小売・娯楽での人出と感染者数との関係」と題したデータを提示し、スーパーやショッピングモールといった買い物・娯楽に関する人出が減少することと感染者数の減少に因果関係があると考えられるのかどうか発表した。

統計的な有意差を見出すことができたのは、2月15日から5月31日までの期間において新規感染者数が増えることで外出する人が減ったという因果関係のみ。

第1波(2月15日〜5月31日)と第2波(6月1日〜9月1日)どちらにおいても、スーパーやショッピングモールなどへの人出と感染者数の間には統計的な有意差を見出すことはできなかったとした。

また、第2波の際には第1波の際に確認されていた新規感染者数とスーパーやショッピングモールへと行く人の数の間に因果関係もなくなったことがわかっている。

こうしたデータについて、西村大臣は「マスクをして、消毒をして、手洗いすることを徹底していただいているから因果関係がないということだと思います」とコメント。日々の感染対策が効果を発揮していることによってこうした結果になったとしている。

一方でスーパーやショッピングモールといった小売・娯楽関係以外の歓楽街などでは「人出は関係ある」とし、改めて「夜の街」と専門家や政府が伝えてきた歓楽街で感染が広がったと強調した。

「名古屋・福岡は人出が減ったことが感染減につながった。歌舞伎町は重点低検査が効果をもった。小売と娯楽に関する人出と感染者数は基本的に関係がない」と総括し、今後は週単位でより詳細に分析し、検証を行うとした。

「どのタイミングで重点的PCR検査を行ったらいいか、時間短縮要請を行えばいいか。緊急事態宣言のように幅広く行うのではなく、ピンポイントでエリア・業種を絞り休業要請を行っていくことが大事です」

今後は休業要請などを行うタイミングについて、データに基づき判断するため分析を進めていくという。

「重点的にPCR検査をやることは有効であること、時短・休業要請をすることで人出が減ることもわかってきました。地域によって両方やる場合、どちらかで減少傾向になった場合もあります。できれば早く(感染拡大の予兆を)探知して、大きな感染拡大になる前に重点的検査やピンポイントに絞った時短などを要請することによって、拡大を防げないか」

西村大臣はこのように語り、参考となるエビデンスをもとに検討を行うと強調した。

今回提示されたデータを踏まれると、歓楽街以外のショッピングモールやデパート、娯楽施設などでは人出を制限しなくとも感染者を減らすことが可能であることを示唆している。

大学入試、濃厚接触者も無症状なら条件付きで受験可能に

今回の分科会では大学入学共通テストにおける感染対策についても議論がなされた。

大学入学者選抜における新型コロナ対策をまとめたガイドラインでは受験者同士の距離を十分に確保することや体調不良者のための別室確保、マスク着用の義務付けや1つの試験科目が終わるごとに換気を行うこと、昼食は自席で取ることを求めるといった項目が定められている。

当日朝に受験者は自身で検温するだけでなく、試験会場で37.5度以上の熱があることが確認された場合には別室での受験や追試の形で対応する。

そうしたガイドラインをベースに専門家は感染予防対策案を策定している。

仮に受験前の14日間の間に無症状の濃厚接触者となった場合はどうなるのか。

専門家は自治体などでのPCRの検査結果が陰性であること、受験当日も無症状であること、公共交通機関を利用せず、人が密集する場所を避けて試験会場へということ、別室での受験などを条件に受験を認めるとの方針を示した。

「無症状であっても当日になって症状が出ることもあり得ますので、トイレなどは濃厚接触者と分けるべきとのご意見をいただきました。こうした指摘を踏まえ、文科省でしっかりと対応し、実施していきます」

西村大臣はこのように語った。

感染状況を一言で表すと…

尾身茂・分科会会長は現在の感染状況を「一言でどのように言い表すのか」、分科会で議論がなされたと説明し、分科会後に急遽取りまとめた「現在の感染状況に対する分科会から政府への提言」を発表した。

分科会の結論として、現在の感染状況は「感染の『増加要因』と『減少要因』が拮抗」している。そのため、「多くの都道府県で大幅な増加がみられない一方で、急激な減少もみられない状況が続いている」としている。

「増加要因は何か。一言で簡単に言えば、連休中の人の移動が見られるように今は社会経済との両立もあって、なるべく普通の生活に戻りたいという気持ちが多くの人に共有されていて、人々の活動が活発化していることがある」

「そうした中で、クラスター発生場面が3密であることは変わりませんが、場面が多様になっています」

尾身会長は増加要因をこのように分析する。一方、感染者数が増加することが抑制されている背景には感染リスクが高い場面が例示され、人々がそうしたリスクを避けるよう行動してることがあるとした。

また、クラスター発生時に関係者が迅速に対応することが可能となっていることも、減少要因だと指摘する。

その上で、政府に対して行った提言は以下の2つだ。

(1)クラスターがどのような状況で発生するか徐々に分析が進んできたが、さらに専門家としても詳細な分析を進めるので、政府はそうした分析を踏まえて、どのような具体的な行動がリスクが高いか / 低いかを国民にわかりやすく説明していただきたい。関係者にはクラスター発生時に早期に適切な対応を求めたい。

(2)感染状況は地域によって異なるので、各地域の感染状況のステージ等の状況を考慮して、各都道府県は国と協力し、地域の実情に応じた効果的な対策をとっていただきたい。

また、尾身会長は分科会が以前から提案している時期・場所を分散させる小規模分散型旅行の推進が急務であるとの認識を示している。

年末年始が近づく中で、「数日の休みの中で帰省等々をしますと感染拡大のリスクがあります」と説明し、分科会として何らかの提言を出すことを示唆した。

「前から申し上げてるようにGo To キャンペーンのクーポンの事務作業的にできるかはわかりませんが」と前置きしつつ、「年末年始を1月10日とかまでズラす。少し幅を持ち、みんなが結果的に分散して小規模に年末年始を過ごせないか。次回の分科会で議論したい」

10月30日〜11月1日に神奈川で実証実験を実施

会見では10月30日から11月1日の3日間、神奈川県の横浜スタジアムでイベント開催制限の緩和を検討するための実証実験が行われると発表された。

神奈川県、横浜市といった自治体と横浜DeNAベイスターズなどが協力し、スタジアムの収容率を上げた場合にも感染リスクがコントロール可能かどうかを検証する。

実証過程では10月30日に収容率の上限を80%、10月31日に90%、11月1日に100%と徐々に上げていくとしている。

なお、実証の途中で感染リスクのコントロールに懸念が生じた場合には上限引き上げが見送られる可能性もある。

実証実験では高精細カメラを用いて、スタジアム内のマスク着用率や物販エリアに人が密集しないか等を計測する。また、カメラでの撮影が難しいトイレなどではLINEのビーコンなどを活用し、人と人との距離を測る試みも行われる。

尾身会長は、スタジアムの周辺住民に多数が集まることに懸念を抱く人もいるだろうと理解を示した上で、社会経済活動と感染対策を両立させていくためには「一般市民の努力、協力が大事」とした上で、Withコロナでやっていくためにはテクノロジーの活用が不可欠であると強調した。

第1波襲来時には、西浦博・京都大学教授らの数理モデルが感染対策を下支えした。

次は新たな技術で感染対策を充実させていくべきと、尾身会長は言う。

「今までの伝統的な感染対策にはなかったことです。(感染対策の)常識と科学技術を使ってやることで、経済と感染対策をより国民に負担をかけないでできる。万が一、感染が広がった時には当然対策もとる。そういう風にして、理解を得られたら良いのではないかと私も思ってます」