【アップデートあり】
「牡蠣を食べるときは殻に口をつけてズルッとやらず、お箸などで貝柱を外してからパクッと食べた方があたりにくいらしい」という情報がTwitterで拡散されている。
しかし、この情報は不正確だ。
専門家「あたるときはあたります」

12月7日に投稿されたこの情報は9日午前の段階で2万5千回以上リツイートされている。
ツイートで、投稿者は「細菌の多くは牡蠣の“殻”にいる」と知り合いの漁師に教えてもらったとした上で、「私は一回もあたったことありません」と発信していた。
感染対策の専門家・坂本史衣さんはこのツイートを引用し、「ノロウイルス(細菌ではない)は牡蠣の中腸腺という器官に蓄積されているので、貝柱を外してパクッと食べてもあたるときはあたります」とTwitterで指摘している。
食品安全委員会の委員を務める堀口逸子さんも Twitterで「残念ながら、食品安全委員会としてそのようなことは一言も申しておりません」と言及している。
「あたらない」牡蠣の食べ方に関する情報は、今回のツイートが初出ではない。
ツイート以前からSNSやブログなどで拡散されており、もともと一定の範囲で知られている情報だった可能性が高い。
厚労省「重要なことは殻に口をつけるか・つけないかではなく…」

前提として、国内で流通する牡蠣は、細菌が厚生労働省の規格基準を下回るように処理することが義務付けられている。
BuzzFeed Newsの取材に対し、農林水産省消費・安全局食品安全政策課の担当者は「大腸菌などを一定程度低減する処理がされている」と回答。
「そういうものであれば、『口を殻につけないように食べないといけない』と過度に心配する必要はない」とした。
生食用か加熱用かを確認すること、加熱用の牡蠣を食べる際にはしっかりと火を通すことが重要だという。

また、厚生労働省食品監視安全課の担当者は「重要なことは殻に口をつけるか・つけないかではなく、事前の衛生管理」と語る。
「飲食店などで衛生管理が不十分で手についた細菌やウイルスが付着するということもありますし、食べる人の衛生管理が不十分で手についた細菌やウイルスが付着することもあります」
「そのため、殻に口をつけるか・つけないかだけでは、それほどリスクは下がりません」
あくまで重要なのは、国が定めた細菌の基準値を超える牡蠣については浄化すること、そして飲食店や食べる人の衛生管理だと強調した。
さらに、ノロウイルスに関しては「二枚貝の体内に海水から取り込まれて濃縮される」ため、「殻に口をつけないからといって、食中毒にならないということはない」と説明した。
「(ノロウイルスに)国の基準はなく、あくまで生産者の努力として対応している」「あたるリスクを完全に避けるには、加熱していただくしかない」と語った。
UPDATE
当初の記事では「厚労省食品安全課」としておりましたが、正しくは「厚労省食品監視安全課」でした。この点を修正いたしました。
*
ツイートの投稿者は12月10日午後、本件に関するnoteを公開した。
自身のツイートについては「細菌に対しては一定の効果を見込める可能性があります。しかし、ノロウイルス由来など、可食部の内臓に関連する食中毒については効果がありません。この点の説明が不十分なままツイートを拡散させてしまった点について、改めてお詫びします」と記した。
そのうえで、「ツイートがミスリード的であったという指摘については真摯に受け止めたいと思います」としている。
なお、問題となったツイートは削除されていない。
BuzzFeed JapanはNPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)のメディアパートナーとして、2019年7月からそのガイドラインに基づき、対象言説のレーティング(以下の通り)を実施しています。
ファクトチェック記事には、以下のレーティングを必ず記載します。ガイドラインはこちらからご覧ください。なお、今回の対象言説の一部は、FIJの共有システム「Claim Monitor」で覚知、参考にしました。
また、これまでBuzzFeed Japanが実施したファクトチェックや、関連記事はこちらからご覧ください。
- 正確 事実の誤りはなく、重要な要素が欠けていない。
- ほぼ正確 一部は不正確だが、主要な部分・根幹に誤りはない。
- ミスリード 一見事実と異なることは言っていないが、釣り見出しや重要な事実の欠落などにより、誤解の余地が大きい。
- 不正確 正確な部分と不正確な部分が混じっていて、全体として正確性が欠如している。
- 根拠不明 誤りと証明できないが、証拠・根拠がないか非常に乏しい。
- 誤り 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがある。
- 虚偽 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがあり、事実でないと知りながら伝えた疑いが濃厚である。
- 判定留保 真偽を証明することが困難。誤りの可能性が強くはないが、否定もできない。
- 検証対象外 意見や主観的な認識・評価に関することであり、真偽を証明・解明できる事柄ではない。