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「100年に1度の危機」「臨時のプレハブ施設でもいい」 尾身会長の危機感と政治家に求める覚悟

「今すでに救える命が救えなくなっている」政府分科会の尾身茂会長は、このように危機感を口にする。新型コロナという災害に対応するため、リーダーたちがすべきこととは。

首都圏から全国へ、新型コロナウイルスの感染拡大は今も続く。緊急事態宣言は延長されたものの、引き続き予断を許さない状況だ。

「今すでに救える命が救えなくなっている」
「現在は100年に1度の危機です」

政府分科会の尾身茂会長は、このように危機感を口にする。

「災害医療」へと転換する上ですべきことは何か。そして、リーダーたちに求められていることとは。話を聞いた。

※取材は8月19日午前に実施。情報はその時点のものに基づく。

全国的な感染爆発、今すべきこと

Yuto Chiba / BuzzFeed

ーー8月18日の厚労省の専門家助言組織(アドバイザリーボード)では、40の都道府県で「感染爆発」の状態にあるとの見解が発表されました。尾身先生は現状をどのように分析していますか?

状況はすでに「災害」レベル、この一言に尽きます。自宅で療養して亡くなる方が出るなど、救える命が救えなくなり始めている状況です。

様々な要因がありますが、一番大きなものはデルタ株の影響です。感染力も強くなる中で、急激な感染拡大が起きている。

こうした感染拡大を迎え撃つ医療提供体制は、この1年半弱でずいぶん強化されてきました。当初に比べれば2倍近くまで病床は増えた。しかし、感染拡大のスピードが非常に速いために、追いついていません。

ーーでは、どのような対策を講じる必要があるのでしょうか?

もちろん感染拡大を食い止めるための対策も引き続き重要です。同時に、医療提供体制の整備を早急に進めていく必要があります。

データを見れば明らかですが、一部の都道府県では自宅療養者や入院調整中の方が急速に増え続けている一方で、宿泊療養施設に入っている方々はほとんど増えていません。

緊急事態宣言が出ているということは、今この瞬間も特措法は適用されています。それが何を意味するのか。それは特措法下であればできることがまだあるということです。

たとえば宿泊療養施設や臨時の医療施設を新たに設置する。これはそれぞれの知事に権限があり、やろうと思えばできることの1つです。

もちろん、本来は宿泊療養ではなく入院できることがベストであるとは思います。しかし、病床が逼迫し、入院することがなかなか難しいのであれば、せめて宿泊療養の施設を整える。

あるいは臨時のプレハブ施設でも良いかもしれません。

おそらく今も様々な議論がなされているのだとは思います。しかし、なかなか具体的なアクションが見えてこない。いつまでに、何をやるのか、検討の上で早急に行動すべきだと思います。

また、同様に現行の法律でもできることとして、感染症法における医療機関への協力のお願いというものがあります。

すでに現場の医療従事者の方々に頑張っていただいているのは事実です。コロナ対応だけでなく、日々の一般診療なども疎かにすることはできませんので、様々な形でご尽力いただいています。

しかし、現在は災害時ですから。多少の選択と集中が必要になってくる。

個別にこれまで努力していただいてきたことはわかっていますが、さらにもう一歩、協力をお願いする必要があるのではないでしょうか。

まずは、「現在の法律でできることを最大限やる」

Pool / Getty Images

ーー都知事は酸素ステーションの設置を進めるといった方針を示しています。また、首相は抗体カクテル療法への期待を繰り返し示し、必要とする人へ届けるすべを模索しているようです。

もちろん、酸素ステーションや抗体カクテル療法などを整備していくこと自体は重要です。それらは確かにあった方が良いです。

ですが、酸素ステーションだけ、抗体カクテル療法だけ、といった一本足打法では困ります。

新型コロナとの戦いは総力戦でなければ勝てない。こうした現実をリーダーたちにはしっかりと認識してもらえたらと思います。

データを見ると、宿泊療養がなかなか進んでいない側面がある、というのはファクトです。現行法でまだまだできることがあるのですから、その余地をしっかりと認識して、対応に当たらなければ一般市民もなかなか納得できませんよね。

しっかりと、現在の法律でできることを最大限やる。これが選挙で選ばれたリーダーたちの役目です。

人々に協力を求めるのであれば、なおさら、まずは自分たちが汗をかいて、できる限りのことをやっていると、行動で示さなければいけません。

緊急事態に対応するためには、リーダーシップが必要なんです。

ーー政府や自治体など、リーダーたちの行動が災害対応へとギアチェンジしていないようにも見えるのですが、どうでしょうか?

現在、人々は不安や不満を抱いていると思います。また、「もう我慢の限界だ」という思いもあるかもしれませんし、信頼感を損なってしまった部分もあるかもしれません。

政治家という立場に立つ人々は選挙で選ばれているわけです。だからこそ、様々な立場の人々の声に耳を傾け、様々な配慮のもとに動いているのだと思います。

そうした政治家ならではの事情について、理解はできます。ですが、現在は100年に1度の危機ですよ。

平時であれば、それぞれが重要だと考えているポイントに違いがあるかもしれませんが、目の前の危機に対応するためには普段の意識を超越してもらいたい。

今すでに救える命が救えなくなっているわけです。

そんな中では、しっかりと優先順位をつけて、リーダーが目の前の問題解決にエネルギーと時間を費やすということが求められていると思います。

「今やらずにいつやるのか? 私は政治家の方々に問いたい」

Yuto Chiba / BuzzFeed

ーー8月17日の分科会では、専門家から個人の行動制限についても検討を進めるよう求める声が上がったと報じられています。

現在、すでに多くの方々には感染対策に協力していただいている状況です。ですが、一部の方から協力を得られていないというのも現実です。

日本の場合、協力金などの支援策も講じながら、飲食店に対してかなり強い制限をかけてきました。飲食店などで働いている方々は、非常に大変な思いをしていると思います。

しかし、我々はこれまで常にある「ジレンマ」を感じてきました。

それは、飲食店など事業者には制限をかけることができるが、個人に対して感染リスクの高い行動を控えていただくよう制限することはできないというジレンマです。

事業者に支援策と同時に様々な制限を課すことは、現行法で可能です。ですが、個人に対して「お願い」以上のことは要請できません。

個人の行動を制限できるようにすべきかどうか、この点については様々な意見があると思います。当然、丁寧な議論が必要となるでしょう。

これまで、日本は人々の自主的な行動変容に頼るという対策を続けてきました。非常に民主的な方法でここまで来たと思います。

しかし、それだけでは非常に厳しい状況が見えてきた。

個人の自由や権利を最大限尊重しながらも、他方で感染拡大を抑制し、医療崩壊を防ぐために何をすべきか。

どのようにバランスをとっていくのか、私たちはどんな社会を生きていきたいのかが問われているのだと思います。

ーー「ロックダウン」を可能にする法整備を進めるべきなのでしょうか?

何が良いか、これについては広く議論すべきことでしょう。ですが、私は何をするにしても、「最小限の制限で最大限の効果を上げる」ということが最も重要だと思います。

その方法については、これから議論をする中で検討すべきポイントです。

法改正が必要なのかどうかも、何をするのか次第です。ですが、議論をした上でなければ、そうした法改正も選択肢には入ってきません。

今すべきことは、国民から選挙で選ばれた政治家が、法律を変えるかどうか、条例を変えるかどうかについて議論を始めることだと思います。

今やらずにいつやるのか? 私は政治家の方々に問いたい。

誤解しないでいただきたいのは、すぐに個人の行動を制限すべき、ロックダウンが可能な法整備をすべきと言っているのではないということです。あくまで、検討と議論を進めてほしいのです。

Contact Yuto Chiba at yuto.chiba@buzzfeed.com.

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