10万円の再給付は? コロナ対策はどうなる? 分科会解散の可能性は? 岸田首相が会見で語ったこと

    コロナ対策が最優先であるとしつつ、その先に見据える「新しい資本主義」とは。

    岸田文雄首相は10月4日、首相として初の記者会見に臨んだ。

    コロナ対策が「喫緊かつ最優先の課題」だとした上で、コロナとの共存の先に「新しい資本主義」の実現を目指すという。

    会見で語ったこととは。

    コロナ対応で重視するのは…

    岸田首相は新型コロナ対策が「喫緊かつ最優先の課題」だとし、「国民に納得感を持ってもらえる丁寧な説明を行うこと、そして常に最悪の事態を想定して対応することを基本とする」と語った。

    全国の感染状況は現在、落ち着きを見せている。しかし、まだ予断を許さぬ状況だと強調し、次のように語った。

    「国民の皆さんの不安に応えるためにワクチン接種、医療体制の確保、検査の拡充、こうした取り組みの強化について、様々な事態を想定した対応策の全体像を早急に国民の皆さんにお示しすることができるよう、本日、山際大臣、そして後藤大臣、そして堀内大臣、この3大臣に指示をいたしました」

    「合わせて国民の協力を得られるよう、経済支援をしっかりと行い、通常に近い経済、社会、活動を1日も早く取り戻すことを目指してまいります。また、これまでの対応を徹底的に分析し、何が危機対応のボトルネックになっていたのかを検証して、その内容を踏まえて緊急時における人流抑制や病床確保のための法整備、また、危機管理の司令塔機能の強化など、危機対応を抜本的に強化してまいります」

    新型コロナ対応で中心的な役割を担う厚労相、経済再生担当相、ワクチン担当相は全員、組閣で入れ替わった。

    新たに就任した後藤茂之厚労相、山際大志郎経済再生担当相、堀内詔子ワクチン担当相について、岸田首相は「それぞれの分野で活躍をしてきた有能な人材」と期待を示し、「担当大臣がいかに上手く連携していくかが重要」とした。

    岸田首相は総裁選で、「危機管理庁(仮)」の創設をはじめ、危機管理能力の向上を公約として掲げていた。会見でも「できるだけ早急に、危機管理の司令塔機能をしっかり作る取り組みを進めていきたい」と述べた。

    これまで新型コロナ対策の骨格づくりを担ってきた政府分科会については、「今の分科会を解散し、新たな分科会を設定するといったことは一度も申し上げておりません」と述べた。安倍政権、菅政権においても「政府に貢献いただいている」と語った。

    その上で、新型コロナウイルス対応を進め、新型コロナと共存する「Withコロナ」の未来が訪れたタイミングで社会経済活動の活発化に向けたアイディアを集めるための別の会議体を新たに設けるとした。

    この会議体では、観光をはじめ様々な分野の専門家の力を借りる必要があるという認識を示した。

    現金給付はあるの?

    岸田首相はまず、新型コロナによって大きな影響を受けている人々への支援を最優先するという。

    個人への現金給付については、「コロナ禍で大変苦しんでおられる弱い立場の方々、女性や非正規、学生の皆さんといった弱い立場の方々に個別に現金給付を行うことは考えていきたい」と語った。

    なお、具体的な金額などについては、「しっかりと検討した上で確定していきたい」と述べるにとどめた。

    新型コロナで苦しい状況にある人々への支援を行なった上で、岸田首相が打ち出すのが「新しい資本主義」の実現だ。岸田首相は経済再生および「新しい資本主義」実現に向けた順序について、以下のように話した。

    「今は、コロナとの戦いの真っ只中にある。国民の皆さんの協力を得るために、しっかりとした経済対策が求められると思います。その先に、コロナとの共存、できるだけ通常に近い社会経済、日常生活を取り戻すことができた上で新しい資本主義をしっかり回していく。この順番であると認識をしています」

    総裁選中から、「成長」だけでなく「分配」が重要だと主張してきた。

    「成長は引き続き極めて重要な政策テーマです。しかし、成長だけで、その果実がしっかりと分配されなければ、消費や需要は盛り上がらず次の成長も望めません。分配なくして、次の成長はなしです」

    成長戦略としては、

    (1)科学技術立国の実現のための研究開発への大胆な投資

    (2)デジタル田園都市実現による地方と都市の格差是正

    (3)経済安全保障による自律的な経済構造の実現

    (4)働き方に中立的な社会保障や税制整理などによる人生100年時代の不安解消

    を掲げる。

    また、分配戦略としては、

    (1)働く人への分配機能の強化

    (2)中間層の拡大・少子化対策

    (3)保育士や看護師など公的な仕事に就く人々の所得向上に向けた抜本的見直し

    (4)財政の単年度主義の是正

    に取り組むとしている。

    衆議院選は10月31日投開票に。その理由は?

    会見で岸田氏は10月21日に任期満了を迎える衆議院選挙についても触れ、「一刻も早く大型で思い切ったコロナ対策、そして経済対策を実現したい。そのためには、国民の皆様にこの岸田にお任せいただけるのかどうかご判断をいただき、可能であるならば国民の信任を背景に、信頼と共感の政治を全面的に動かしていきたい」と語った。

    上記の理由から、臨時国会の会期末である10月14日に衆議院を解散。19日に公示を行い、31日に投開票を行うことを決めたと発表した。

    「新時代共創内閣」に込めた思い

    岸田首相は新たな内閣は「新時代共創内閣」だと述べた。

    「新しい時代というのは、コロナとの戦いを戦い抜いて、できるだけ通常に近い社会経済活動を取り戻す。その先に新しい経済、新しい日常、時代を作っていかなければならない。共に努力していきましょう、こういった思いを込めました」

    「コロナ禍においてバラバラになりかけている国民の心をひとつにして課題を乗り越えていく。そうした思いを『共に創る』という言葉に込めさせていただいた次第です」

    信頼と共感を得る政治を実現するために重要だと繰り返したのが「説明」だ。

    「政治家あるいは政府の立場から説明する際に、結果のみならず、その必要性ですとか、結論に至る様々なプロセスなどをしっかり説明する。結果に対して、背景と言えるような要素についてもしっかり説明するということは大変重要な姿勢であると認識をいたします」

    「これまでも政府において様々な説明の努力が行われてきたと存じますが、ぜひ今後もいま言った観点から、より丁寧な説明を行うべく、政府でも不断の努力を続けていかなければなりません」