消えた「改革」の文字。演説から見える岸田首相の特徴は?17回繰り返したのは…

    岸田首相と菅前首相の所信表明演説を比較すると、ある言葉が消えていた。岸田氏は所信表明演説でどんな言葉を多く使い、どんな話題に触れたのか。

    岸田文雄首相は10月8日午後、衆議院本会議で初めての所信表明演説を行った。

    岸田首相は新型コロナ対策が「喫緊かつ最優先の課題」であるとし、コロナで大きな影響を受ける人々を支援するため「速やかに経済対策を策定します」と強調。その上で、「新しい資本主義の実現」を目指すとしている。

    岸田首相と菅前首相の所信表明演説を比較すると、ある言葉が消えていた。

    岸田氏は所信表明演説でどんな言葉を多く使い、どんな話題に触れたのか。テキストマイニングの手法で比較した。

    消えた「改革」の言葉

    テキストマイニングとは、文章を単語レベルで分解し、「ワードクラウド」や単語の出現頻度などを分析するもの。

    分析には「ユーザーローカル」のツールを用いた。「ワードクラウド」では文章中でスコアが高い単語を複数選び出し、その値に応じた大きさで示される。

    頻出しているものが大きく、使用回数が少ないものが小さいとは限らない。品詞の種類で色分けされ青が名詞、赤が動詞、緑が形容詞、灰が感動詞を表す。

    菅前首相と岸田首相に共通して言えるのは、新型コロナ対策がどちらの演説においても中心に据えられているということだ。

    岸田首相は所信表明演説で「喫緊かつ最優先の課題である新型コロナ対応に万全を期します」と宣言し、「国民に納得感を持ってもらえる丁寧な説明を行うこと」と「常に最悪の事態を想定して対応すること」を基本とするとしている。

    一方で、存在感が薄れたのが「デジタル化」と「改革」という言葉だ。

    菅前首相は「デジタル庁」創設や様々な規制改革をひとつのアピールポイントとしていた。そのため、所信表明演説では「デジタル化」という言葉を7回、「改革」という言葉を16回使用していた。

    しかし、岸田首相は「デジタル化」と口にしたのは2回、「改革」という言葉にいたってはゼロだった。

    17回も繰り返したある言葉

    Charly Triballeau / AFP=時事

    岸田首相の演説で増えた言葉もある。「新しい」という単語だ。

    菅前首相は5回だったが、岸田首相が「新しい」と語ったのは17回。

    「新しい資本主義」「新しい社会」「新しい時代」とこれまでの路線からの転換を訴える言葉が多く並んだ。

    「私はこの国難を国民の皆さんと共に乗り越え、新しい時代を切り拓き、心豊かな日本を次の世代に引き継ぐために、全身全霊を捧げる覚悟です」

    「全ての人が生きがいを感じられる新しい社会をつくっていこうではありませんか」

    「新しい資本主義を実現していく車の両輪、これは成長戦略と分配戦略です」

    実際、演説ではこのように繰り返し訴えていた。

    「ワンチーム」呼びかけた岸田首相

    Charly Triballeau / AFP=時事

    演説の締めくくり方にも、それぞれの違いが見える。

    菅前首相は次のように語っていた。

    《これまでにお約束した改革については、できるものからすぐに着手し、結果を出して、成果を実感いただきたいと思います》

    《行政の縦割り、既得権益、そして、悪しき前例主義を打破し、規制改革を全力で進めます。「国民のために働く内閣」として改革を実現し、新しい時代を、つくり上げてまいります》

    一方、岸田首相はアフリカのことわざを引用しながら、以下のように演説を結んだ。

    《早く行きたければ1人で進め、遠くまで行きたければ、みんなで進め。1人であれば目的地に早く着くことができるかもしれません。しかし、仲間となら、もっと遠く、はるか遠くまで行くことができます。私は日本人の底力を信じています》

    《明けない夜はありません。国民の皆さんとともに手を取り合い、明日への一歩を踏み出します》

    菅前首相はあくまで改革実現の主体を「国民のために働く内閣」と位置付けている。他方で岸田首相は「みんなで前に進んでいくためのワンチームを作り上げます」と呼びかけている。

    ここからも2人の首相のキャラクターの違いは明確だ。

    岸田首相は総裁選やその後の記者会見を通じ、「特技は人の話をよく聞くこと」という言葉を繰り返してきた。

    所信表明演説でも「みんなで前に進む」と語り、人々の声に耳を傾ける姿勢を前面に打ち出している。

    しかし、首相に求められるのは傾聴力だけではない。時には難しい判断を迫られる場面もある。

    菅前首相は退任にあたり、最後の記者会見で官房長官と総理大臣の違いは最終的な判断を下す「決断の重み」であると振り返った。

    時事通信

    岸田首相は自民党総裁就任直後の会見で「決断力」について、次のように語っている。

    「トップダウンで結論を皆さんに飲んでもらうという決断もあれば、丁寧に多くの皆さんの声を聞き、最後は自分で決断するという方法もある。どちらが良いかではなく、必要な場面で必要なことを判断する」

    「できるだけ多くの皆さんの声を聞いた上で、決断する。こういった手法をできる限り大事にしたい」

    首相が掲げる「新しい資本主義」や「新しい社会」をいかに実現していくのか。その具体的な方策が問われている。

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