Updated on 2020年7月6日. Posted on 2020年7月1日

    「差別に中立は存在しない」「これは日本人の問題です」 川崎市で刑事罰を伴うヘイト禁止条例が施行

    差別を受けた当事者への質問が相次ぐ中、苦言を呈す一幕も。条例の施行はあくまで、スタートラインに過ぎない。

    ヘイトスピーチなどを繰り返した人物に刑事罰を科す「ヘイト禁止条例」が7月1日、川崎市で完全施行された。

    日本には2016年に成立した「ヘイトスピーチ対策法」があるものの、理念法であるために罰則規定はない。そのため、この条例は戦前戦後を通じて「差別的言動に刑事罰を科す」初めての法令となる。

    同日、ヘイトスピーチに対する抗議活動を2015年から続けてきた「ヘイトスピーチを許さないかわさき市民ネットワーク」のメンバーが会見を開き「差別に中立は存在しない」と訴えた。

    施行はあくまでスタートライン

    Yuto Chiba / BuzzFeed

    「ヘイトスピーチを許さないかわさき市民ネットワーク」の関田寛雄代表

    「ヘイトスピーチを許さないかわさき市民ネットワーク」の関田寛雄代表は会見でこの条例はオール川崎で取り組んだことによる成果と強調。条例の完全施行に伴い、「実質化するための責任が生じる」と語った。

    「在日コリアンの問題と言われますけどね、それは逆であって、日本人の問題なんです。日本社会を変革していくためにね、コリアンマイノリティが一生懸命頑張っているんですよ」

    「これまで、(日本人は)無責任に眺めてきた。差別に中立は存在しません。被差別者と連帯する以外に道はありません」

    今回の条例ではインターネット上のヘイトスピーチは対象外となっている。この点について、関田代表は今後の課題であるとの認識を示した。

    4年半におよぶはたらきかけの末に実現した今回のヘイト禁止条例の完全施行はあくまで、スタートラインだ。

    「差別が犯罪として罰せられるという社会正義が示された川崎の宝、日本の宝」

    Yuto Chiba / BuzzFeed

    ヘイトスピーチ、誹謗中傷の被害を受けてきた崔江以子さん

    Twitterの匿名アカウントによる名指しのヘイトスピーチ、誹謗中傷の被害を受けてきた崔江以子(チェ・カンイジャ)さんは、完全施行を受けて、今の思いを打ち明けた。

    「助けてくださいと被害(の声)を届けてきました。胸を開いて、心の傷を届けても策がないとして救済されないで、その傷を何度もえぐられてきました。ネット上では、『偽被害者』『差別の当たり屋』『黙れ』『出て行け』『いなくなれ』、そういう風に攻撃をされてきました」

    「今回の川崎の条例は差別を犯罪として犯罪の被害から市が市民を守るんだという風に宣言をしました。差別を禁止するために、その実効性を行政刑罰を設けて、確保し、私たち市民の代表である議会においても全会一致で成立しました。差別を許さないだけでなく、差別が犯罪として罰せられるという社会正義が示された川崎の宝、日本の宝の条例だと思っています」

    当事者の思いを尋ねる前に

    「完全施行の日を迎えて、ご家族はどのような思いでしょうか?」
    「全面施行を受けて、当事者としての思いをもう少し」
    「横浜中華街でのヘイトスピーチには何を思いますか?」
    「非当事者にはどのように寄り添って欲しいと考えますか?」

    会見では、崔さんに差別を受けた当事者として語ることを求める質問が相次いだ。

    Yuto Chiba / BuzzFeed

    社会福祉法人青丘社理事長の裵重度さん

    この状況に苦言を呈したのが、社会福祉法人青丘社理事長の裵重度さんだ。裵さんは、ヘイトデモが相次いで起きていた桜本地区で、長年、差別のない町づくりを進めてきた。

    「そういう質問というのは、よく発せられている。私たちは聞かれてきたんです。『当事者としてどう思うのか』『当事者はどういう風に声を上げていくのか』。その前に、そういうことに日本人の側が気づいて欲しい。そういう思いがものすごくあるんですよ」

    裵さんは自身の体験を交えて語る。

    「私も幼少の頃に、『朝鮮人、朝鮮帰れ』って言われた時に、本当に言い返す言葉はなかったんです」

    「まさに、日本人からそういう質問が出ないように。日本人自らが差別の問題を自分たちの生き様の中で考えていくというものになっていかないと。日本人も差別にあう当事者も苦しんでいくわけですよ。そこのところに気づきを置いて欲しい」

    自分たちの社会、生活にも差別がある

    Yuto Chiba / BuzzFeed

    崔さんは「海の向こうの人の命が失われたことに大変多くの関心が集まっていることを実感しています」と語った。その上で、当事者以外の人々がどのような行動を求めるのか問われているとして、日本における差別にも関心を向けて欲しいと訴えた。

    「海の向こうにだけあるのでなくて、自分たちの社会にも、自分たちの生活にも差別があり、それが許されない犯罪として川崎の条例では示されました」

    「差別のない人権尊重のまちづくりというのは、行政だけ、議会だけ、あるいは当事者だけで作られるものではなく、皆がその主人公として、自分事として、自分が生きる社会について見つめて、役割を果たしていく。関心を持って、差別のない社会を実現する当事者である自分を見つめながら、そういう風な社会が実現できたらいいなと思います」

    「ヘイトスピーチを許さないかわさき市民ネットワーク」はより多くの自治体でこうしたヘイトを禁止する条例が制定されることを目指しているといい、今後は神奈川県知事への要望も予定しているとした。

    Contact Yuto Chiba at yuto.chiba@buzzfeed.com.

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