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厚労省が「空間除菌」を認めた? 業界団体が誤情報を発信。専門家は改めて注意喚起

世界保健機関(WHO)と厚労省は、人体への懸念から、消毒剤を空中に噴霧する除菌方法を推奨していない。除菌に関する業界団体の誤った発信はなぜ行われているのだろうか。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、注目を集めた「空間除菌」。

世界保健機関(WHO)と厚労省は、人体への懸念から、消毒剤を空中に噴霧する除菌方法を推奨していない。

しかし、空間除菌に関連する団体や企業が相次いで、「厚労省から次亜塩素酸の空間噴霧を認める通達が出されました」と発信している。

何が起きているのか。

日本除菌連合「保健所も誤った指導は行えなくなります」

日本除菌連合

除菌技術を持つメーカーや業界によって組織されている日本除菌連合が公式サイトで「厚労省から次亜塩素酸の空間噴霧を認める通達が出されました」と発信したのは10月27日。

10月21日に厚労省が全国都道府県衛生主管局に出した事務連絡の内容をもとにしている。

次亜塩素酸水を狙い撃ちにした今までの「おススメしない」通達文は変更されました。 「空間噴霧をお勧めしないのは吸入により健康影響のおそれのある消毒薬や健康を害する類のものであり、次亜塩素酸水など個別の商品の選択についてはメーカーの取扱説明書や安全性の説明のもとに消費者が自己責任で使う」という事でQAにも「個々の製品の使用に当たり、その安全性情報や使用上の注意事項等を守って適切に使用することを妨げるものではありません」と記載されております。

次亜塩素酸水に対する根拠のない風評が流されこの1年間にわたって本来感染対策に大きな効果を持つ資材製品が封じられてきましたがこの通達を持って保健所も誤った指導は行えなくなります。

保健所の指導で超音波加湿器を止めてしまった自治体や施設はいますぐ倉庫から出して感染予防を再開してください。

(日本除菌連合, 「厚労省から次亜塩素酸の空間噴霧を認める通達が出されました」)

また、日本除菌連合に加盟している森友通商株式会社は10月22日、「厚労省が次亜塩素酸水の空間噴霧を認める通達を発布! 次亜塩素酸水『モーリス』直販サイトにて 各種キャンペーンを開始」と題したプレスリリースを発表した。

厚労省「空間噴霧は推奨しない」

時事通信

日本除菌連合や森友通商が行った発信の根拠としている事務連絡は、どんなものか。

厚労省新型コロナウイルス感染症対策推進本部が10月21日付で出した「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」という事務連絡には、以下のように記されている。

厚生労働省・経済産業省・消費者庁特設ページ「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」の「5.(補論)空間噴霧について」1の【参考情報3】において、「消毒効果を有する濃度の次亜塩素酸水を吸い込むことは、推奨できません。」と記載しております。

これは、消毒剤や、その他ウイルスの量を減少させる物質を空間噴霧して使用することは、眼や皮膚への付着や吸入による健康影響のおそれがあることから推奨しない、という趣旨ですので、個々の製品の使用に当たっては、その安全性情報や使用上の注意事項等を守って適切に使用してください。

なお、同ホームページの「5.(補論)空間噴霧について」における「消毒剤や、その他ウイルスの量を減少させる物質」に該当する製品が、健康影響のおそれがあるものかどうかについては、各製品の安全性情報や使用上の注意事項等を確認いただき、消費者に御判断いただくものと考えております。

これは「次亜塩素酸の空間噴霧を認める」通達なのか。

厚労省新型コロナ対策本部の担当者はBuzzFeed Newsの取材に対し、次のように語った。

「消毒効果を有する濃度の次亜塩素酸水を吸い込むことは推奨できないという基本的な姿勢は、今も変わっていません。WHOも同様に推奨していないという理解です」

人がいる環境においては「いかなる場合においても空間噴霧は推奨しない」という。

なお、製品の有効性・安全性を証明するデータがないことを根拠に、人がいない環境における空間噴霧についても「効果は定かではない」とした。

日本除菌連合が「厚労省から次亜塩素酸の空間噴霧を認める通達が出されました」と発信していることについては、担当者は「ミスリーディング」との見解を示した。

《個々の製品の使用に当たっては、その安全性情報や使用上の注意事項等を守って適切に使用してください》と通達することは、最終的な判断を消費者に委ねているようにも見える。

人体に悪影響が出る事例を防ぐためには、より踏み込んだ通達が必要ではないのか。

「あくまで規制当局として、この次亜塩素酸については規制をしていないのが現状です。次亜塩素酸は薬機法上、(厚労省が規制権限を持つ)医薬品ではなく、『雑品』に分類されています。そのため、これ以上のことについては言えないというのが現状です」

専門家「今回の事務連絡は空間除菌を推奨しない、というもの」

新型コロナやワクチンに関して正確な情報を発信する「こびナビ」の専門家は「大前提として、今回の事務連絡は空間除菌を推奨しない、というもの」と語る。

「事務連絡には『健康影響のおそれのある消毒剤や、その他ウイルスの量を減少させる物質について、人の眼や皮膚に付着したり、吸い込むおそれのある場所での空間噴霧をおすすめしない』と記載されています。おそらくほとんどの『空間除菌』に用いられる物質は『その他ウイルスの量を減少させる物質』に該当するでしょうから、厚生労働省としては『推奨しない』という立場であると言えます」

「その上で、『各製品の安全性情報や使用上の注意事項等を確認いただき、消費者に御判断いただく』とも書かれていますので、実際の判断は使用者に委ねられる形にもなっています。消費者が使用の是非を判断するのは難しいと思いますので、使用を呼びかけるのであれば、製造企業が責任を持って有効性と安全性を検証し、『メリットがデメリットを上回る』という明確なデータを提示すべきではないでしょうか」

業界団体は「世界初!次亜塩素酸水の空間噴霧の安全性が ヒトを用いた臨床試験で確認される」というプレスリリースも配信している。

この「臨床試験」は参加者20名を2つのグループ(各群10名)にわけ、1日8時間×28日間にわたって空間除菌製剤ないし水道水を噴霧したものを吸入し、その結果を血液検査や尿検査などを通じて比較、検証したものだ。

「こびナビ」の専門家は「まだ論文化されていないようなので、詳細な検討は困難」と前置きしつつ、「10名では安全性が確保されたと主張するにはサンプル数が少ないのでは」「ヒトが長期間吸い込むことによる肺などの呼吸器への影響も検証するべき」とした。

また、「いわゆる空間除菌によって、どれほど新型コロナウイルスの感染リスクが下がるのかは不明です」という。

「新型コロナウイルス感染症の主な感染経路は、咳やくしゃみ、声を出した際などに感染者から飛び散る粒子が、直接他の人の粘膜につくことによるものです。物の表面についたウイルスを触った手で自分の粘膜を触ることで起きる『接触感染』は、飛沫感染ほど重要ではないと考えられています

「次亜塩素酸水の空間噴霧に関して、国際的な学術誌に掲載された過去の報告は、物の表面にあるウイルスを不活性化できるかを調べたものが多く、実際の感染をどれくらい減らすことができるのかは分かっていません」

「現在でも物の表面に付着したウイルスによる接触感染を減らすために、物の表面の消毒や手洗いが広く行われています。表面を消毒する有効な製剤がすでにあるなか、有人空間で広い範囲に噴霧することのメリットとデメリットを比較し、メリットが上回ることが実証されたところで、初めて使用を検討する段階に入ります。なお、こうしたステップを踏むことが重要なのは、空間除菌・噴霧についてだけではありません。あらゆる医薬品・医療行為と同様の手順で安全性と有効性を確認すべきです」

除菌連合、厚労省の通知は「度重なる打ち合わせの結果」

日本除菌連合

除菌連合はBuzzFeed Newsの取材に対し、今回の厚労省の通知は「度重なる打ち合わせの結果」出されたものであると主張。

「次亜塩素酸水を活用した空間除菌が有効」であるとの考えを改めて示した。

除菌連合の回答の概要は、以下の通りだ。

《新型コロナウィルス(※原文ママ)感染対策としての次亜塩素酸水の活用については厚生労働省、経済産業省、消費者庁の代表と度重なる打ち合わせの結果今回の事務連絡の通達となっています。これから冬場の窓を開けての換気ができない季節に向けて感染予防のためには次亜塩素酸水を活用した空間除菌が有効です。その有効性と安全性についてはホームページに記載してありますので再度ご覧ください。

なお今回ご取材の趣旨である厚生労働省担当者が今回の事務連絡を認めていない発言をしているという点については、その取材先の方の所属とお名前をお知らせ下さい。省内での情報周知が徹底していないようなので、当方から厚労省代表者との交渉の経緯と発言の記録等お知らせします。国家公務員が公的な見解を述べるにあたって匿名である事はありえないと考えます。医官の方が科学的根拠に基づいて厚労省を代表する立場で発言をされているのならば公的な場で情報交換させていただくこともやぶさかではありません。

また専門家といわれる方のコメントもあるようですが、この方も社会的な地位のある方の責任ある発言であれば実名で発言なさるべきです。

次亜塩素酸水の活用におけるリスクとベネフィットにつきましては当然ベネフィットの方が勝っているというのが事実です。過去20年以上にわたり酪農業、農業、食品加工業、ホテル、介護施設、病院、学校、保育園、家庭などで使われてきた次亜塩素酸水は除菌消臭の効果で社会に貢献してきている一方で人命や健康に関わるリスクはほとんど報告がありません。

比較の例としては適切ではないかもしれませんが、新型コロナウィルスの感染による重症化を防ぐために接種するワクチン接種で1000人以上の方がお亡くなりになり多くの副反応が出ている中で、感染を予防する方策としての次亜塩素酸水の空間噴霧で亡くなった方も重症化した方も1人もいません。

専門家と言われる方が何の分野の専門家であるのか。次亜塩素酸水の安全性または危険性について研究されている方であるならばその方がお持ちの健康被害の研究についてぜひ情報提供いただきたいのでご所属とお名前を教えてください。こちらについても科学的な論拠のあるお話であれば公開の場で情報交換することもやぶさかではありません》

専門家「ワクチンとの比較は不適切」

除菌連合の主張は科学的に正確と言えるのか。BuzzFeed Newsはこの回答について、改めて専門家の見解を尋ねた。

「こびナビ」の専門家は次のように指摘した。

「感染予防のために次亜塩素酸水を活用した『空間除菌』のリスクとベネフィットについて『当然ベネフィットの方が勝っているのが事実』と主張するのであれば、その有効性と安全性を示した研究の対象と方法ならびに結果を検証可能な形で明らかにし、医薬品・医薬部外品の承認を得るべきです。新型コロナウイルスに対する感染予防の効果と安全性を示すには、空間除菌を使用した人と使用していない人とで感染者の数を比較した、査読付き医学論文を出版することが前提になります」

時事通信

また、《新型コロナウィルスの感染による重症化を防ぐために接種するワクチン接種で1000人以上の方がお亡くなりになり多くの副反応が出ている》という除菌連合の見解については「明確な誤り」だとした。

「新型コロナワクチンは重症予防効果のみならず、発症や感染そのものも予防する効果があることが十分に研究されています。また、(接種後に死亡したという)前後関係があることは、必ずしも(接種と死亡に)因果関係を意味するわけではなく、接種後に1000人以上の死亡が報告されていることは、接種が原因で死亡していることを意味しません」

「そもそも、使用後の有害事象報告が制度として医師などに課せられている新型コロナワクチンと、そのような体制のない市販製品を比較して『ワクチンの方が健康被害が多い』などと論じることは適切ではありません」

「2021年12月2日時点でアメリカの疾病対策センター(CDC)も厚労省もmRNAワクチンの接種と因果関係が示された死亡例を報告していません。これは個別の事例の因果関係がないことの証明ではありませんが、疫学研究において心筋炎以外に発症リスクの上昇が十分示された疾患はなく、ほとんどが対症療法で回復するもので頻度としても非常に稀です」

「このため、心筋炎以外が原因となった死亡例については、ワクチン接種と死亡時期が偶然に一致したと考える蓋然性が高く、全例がワクチンとの因果関係があるかのような書き方は明らかに誤りです」

「ヒトを対象に予防効果と高い安全性が確立している新型コロナワクチンと、ヒトや新型コロナウイルス感染症に対する研究が不十分な空間除菌を比較することは不適切ですし、ワクチンの安全性について誤った解釈をしていることも大きな問題です」


監修:こびナビ副代表・木下喬弘氏、千葉大学医学部附属病院臨床試験部助教・ 黑川 友哉氏、こびナビ 岡田玲緒奈氏、こびナビ 安川康介氏、こびナビ 峰宗太郎氏