医療難民ゼロ、サナエノミクス、給付金… 自民党総裁選、4人の候補者の政策は何が違うの?

    総裁選には岸田文雄氏、高市早苗氏、河野太郎氏、野田聖子氏の4氏が立候補している。それぞれの候補者が掲げる政策とはどのようなものなのか。

    9月29日に投開票される自民党総裁選。

    立候補している河野太郎、岸田文雄、高市早苗、野田聖子の4氏は、党員と党所属議員を対象とする選挙で、何を訴えているのか。各候補者の主張を5つのポイントにまとめた。

    自民党総裁選とは?

    時事通信

    左から河野太郎、岸田文雄、高市早苗、野田聖子の各氏。届出順に並んでいる。

    いま行われているのは、自民党を率いる党総裁を選ぶ選挙だ。事実上、菅義偉氏の次の首相を選ぶ機会でもある。

    投票資格があるのは自民党員・党友と、党所属の国会議員。あくまで党のリーダーを決める手続きのため、公職選挙法は適用されない。

    投票プロセスは「党員票」と「議員票」の2段階に分かれる。

    自民党によると、投票資格を持つ党員・党友は110万4336人。まず党員・党友がそれぞれが9月28日までに投票する。各都道府県連がそれぞれの得票数を集計し、計382票をドント方式で各候補者に配分する。これは「党員票」と呼ばれる。

    さらに、382人の自民党国会議員が投票する。これが「議員票」だ。9月29日に都内のホテルで投票が行われ、その場で開票される。

    「党員票」(382票)、と議員票(382票)の計764票で、総裁を決める。

    最初の投票で過半数を得た候補者がいない場合、上位2人の決選投票を行う。決選投票では「国会議員票」(382票)と「都道府県連票」(47票)の合計で過半数を得た人が当選する。

    一票の重みは党員・党友と国会議員で全く異なる。国会議員の支持を集めることが勝負のカギを握ることになる。

    河野太郎氏(58、麻生派)

    時事通信

    外務相や行政改革担当相などを経て、現在はワクチン担当相を務めている。発信力には定評があるが、フォロワーを相次いでブロックすることに批判の声も。総裁選では、これまで使用してきたアカウントとは別のアカウントを運用している。衆院神奈川15区。

    総裁選のスローガンは「日本を前に進める」。

    エネルギー政策については、2050年までに温室効果ガス排出量の実質ゼロを実現すると宣言。

    かねて「脱原発」にこだわりを見せてきたが、脱炭素化に向け、再生可能エネルギーでは足りない部分をすでにある原発を再稼働することで補う姿勢も見せている。

    【1】コロナ対策:命と暮らしを守る

    政策集の1つ目のポイントに掲げたのが「命と暮らしを守る政治」。

    ワクチンの3回目接種(ブースター接種)の準備を進めることや、必要な時には思い切った人流抑制を行うこと、検疫強化で新たな変異ウイルスの流入を防ぐことや医療提供体制拡充など、コロナ対策に注力する姿勢を示している。

    【2】経済:企業の利益ではなく社員の賃金上昇を

    アベノミクスで企業の利益は大きくなったが、賃金に波及しなかったと指摘。

    「企業の利益から個人の所得に視点を移す」とし、社員への賃金を上げた企業の法人税を減税するなどインセンティブを設けることで賃上げを図る姿勢を見せた。

    【3】外交・安全保障:国を守り、世界をリード

    現実の脅威にあわせて、サイバー・宇宙・電磁波など新しい分野における自衛隊の防衛能力を向上させると表明。

    中国に対する対応について、「国際社会で立ち向かわなければならない」としており、尖閣諸島をめぐる問題については、「外交活動もしっかりやりながら、海上保安庁、何かあったときは自衛隊が対応できる態勢を維持したい」とした。

    靖国参拝については、「首相在任中は参拝しない」としている。

    【4】社会保障・子育て支援:「守るべきは将来の年金生活」

    「守るべきは年金制度ではない、守るべきは将来の年金生活」とし、年金制度そのものの改革の必要性を訴えている。

    「保険料を払わないとその分は年金を削減するという今の基礎年金は、本当に最低保障になっているのか」と問題提起し、最低保障年金を創設し、財源に消費税を充てる考えを示した。

    「こども庁」創設に賛成。

    【5】選択的夫婦別姓・同性婚:賛成

    選択的夫婦別姓と同性婚に関しては、報道各社のインタビューに対し「いずれも賛成」と明言。

    「こういう価値観が問われる問題については、国会で党議拘束をやめて、広くご議論するのがよいのではないか」とも語っている。

    岸田文雄氏(64、岸田派)

    時事通信

    外相や防衛相、自民党政調会長など重要ポストを歴任。これまで4人の総理大臣を輩出してきた名門派閥「宏池会」の会長を2012年から務める。衆院広島1区。


    総裁選のスローガンは「声をかたちに。信頼ある政治」。

    岸田氏は「自民党改革」を行うとも主張しており、党役員に中堅若手を積極的に登用することや比例選挙区の73歳定年制を厳格に適用すること、「政治と金」の問題については丁寧な説明と透明性確保を行うことを明言している。

    【1】コロナ対策:「医療難民ゼロ」

    「医療難民ゼロ」を掲げ、臨時医療施設の開設や大規模宿泊施設の借り上げ、国公立病院のコロナ重点病院化などを宣言。

    他にも、家賃支援給付金・持続化給付金の再支給や困っている人々への給付金支給など数十兆円の経済対策や電子的ワクチン接種証明の活用と検査の無料化・拡充、「健康危機管理庁(仮)」創設を表明している。

    【2】経済:成長だけでなく分配を重視

    「新しい日本型の資本主義」を実現するとし、「成長なくして分配なし」だけではなく「分配なくして次の成長なし」と強調。「国民を幸福にする成長戦略」と「令和版所得倍増のための分配施策」を進めるとしている。

    子育て世帯の住居費や教育費の支援や看護師・介護士・幼稚園教諭・保育士などの報酬を増やすために、公的価格を見直すという。

    【3】外交・安全保障:「毅然とした対応が不可欠」

    「外交・安保には国益のために腹をくくり、毅然とした姿勢が不可欠だ」と語り、中国の人権問題を担当する首相補佐官を新たに設置する考えを示している。

    また、ミサイル防衛体制の整備にも取り組む考えだ。

    靖国参拝については「時期、状況を考えた上で、参拝を考えたい」としている。

    【4】社会保障・子育て支援:厚生年金の適用範囲を拡大

    「厚生年金を広げて多くの人を取り込む」という。

    これまでも厚労省はパート勤務など短時間労働をする人々へ厚生年金の適用を拡大してきた経緯があり、その取り組みを続けていく姿勢だ。

    「こども庁」については、「専任大臣を置くということも含め、しっかり進めていかなければならない」と語り、創設を目指す考え。

    【5】選択的夫婦別姓・同性婚:慎重な姿勢

    選択的夫婦別姓については慎重な姿勢。

    同性婚についてはテレビ番組で、「現状において(同性婚を)認めるということまではいたっておりません」と語った。

    高市早苗氏(60、無派閥)

    時事通信

    以前は自由党、新進党などに所属した。総務相や自民党政調会長などを歴任。目標とする政治家にはイギリスで初めての女性首相に就任したマーガレット・サッチャー氏をあげる。衆院奈良2区。

    総裁選のスローガンは「日本を守る。未来を拓く」。

    安倍晋三・前首相が支持を表明しており、政策の随所に安倍氏のカラーを踏襲する姿勢が見える。

    高市氏の支持者と見られるTwitterアカウントが他の候補者を誹謗中傷するような投稿をしていることが話題となると、「他候補への誹謗中傷や恫喝や脅迫によって確保される高市支持など私は要りません」と語った。

    【1】コロナ対策:重症者数、死亡者数を「極小化」

    重症者数、死亡者数を「極小化」することと自宅療養者数を減らすことを目指すとし、

    ・公共施設などを活用し、早めに治療薬を投与できる施設の整備
    ・海外に依存している軽症者用・中等症者用の治療薬を国内で生産する体制構築
    ・緊急時に新薬を迅速に実用化するための薬事承認制度の確立

    などを掲げる。

    【2】経済:「サナエノミクス」

    「サナエノミクス(日本経済強靭化計画)」を掲げ、金融緩和や緊急時の機動的な財政出動などにより「物価安定目標の2%達成を目指す」としている。

    また、大規模災害や感染症など有事に備え、必要な物資を国内で生産・調達することを可能にすることをはじめとする「危機管理投資」の重要性を強調。薬を生産する力の強化、食料自給率の向上、食料輸出の強化に取り組む方針だ。

    【3】外交・安全保障:「国防力」強化に前向き

    サイバー攻撃が増加する中、サイバー防御体制の樹立と高度化を急ぐなど「経済安全保障」の体制強化が「日本の安全と世界の平和を守るために」必要と主張。

    「国防力」強化にも前向きな姿勢を見せており、中国の海洋進出に対応するために「海上保安庁法」の改正に取り組むことや、迅速な敵基地無力化を可能にするための法制度整備、防衛関連研究費の増額に注力するとしている。

    靖国参拝については、「参拝させていただく」と強調。

    【4】社会保障・子育て支援:生活困窮者に再び特別定額給付金

    生活困窮者に特別定額給付金10万円の再給付を提案。

    「こども庁」については必要性を認めつつ、法案の提出は「時期尚早」としている。

    また、ベビーシッターなどの国家資格を新たにつくり、利用料の一部を税額控除する考えを示している。

    【5】選択的夫婦別姓・同性婚:反対 / 慎重な姿勢

    選択的夫婦別姓には「残念ながら反対」とコメント。

    また、同性婚を認めるかどうかについては、「国民的な議論が必要」としている。

    野田聖子氏(61、無派閥)

    時事通信

    1998年には史上最年少の当時37歳で郵政相に就任。その後、総務相や女性活躍担当相、自民党の総務会長・幹事長代行などを歴任。衆院岐阜1区。


    総裁選のスローガンは「だれもが『わかる政治』を」。

    総裁選では一貫して子ども、女性、高齢者や障害者という社会的弱者、介護政策や貧困の格差や人口減少など「主役になれない人に向けた政策が十分ではない」と訴えている。

    なお、自身が日本初の女性総理となった場合には「閣僚の半分は女性を目指す」と宣言している。

    【1】コロナ対策:早期発見・早期治療の徹底

    (1)早期発見・早期治療の徹底、(2)働く人には一律給付、(3)安心安全の前の不安を国民から取り除く、という3点に集中投資すると説明。

    「自宅では早期発見、早期治療はできません」と語り、軽症患者を治療する臨時の医療施設「サブホスピタル」の設置を進める考えを示している。

    【2】経済:給付金を働く人に一律給付

    「サブホスピタル」の建設が完了するまでの間は、「ある程度の自粛も必要」という。

    その際には、「会社員はもちろん、パート、アルバイトなど、すべての働く人に現金の一律給付を行う」と主張する。

    【3】外交・安全保障:平和主義を守り抜き、「賢い交渉役」に

    中国に対しては、「日本は近隣諸国との衝突を避ける努力をしなければいけない」とし、平和主義を守り抜くと同時に世界に日本の発展モデルを発信する方針。

    米中を対立させるのではなく、「賢い交渉役」として対立を収めていく役回りを担うべきとも語っている。

    靖国参拝については、「首相、総裁という公職ではしない」としている。

    【4】社会保障・子育て支援

    「こども庁」設置のための法案を来年の通常国会に提出する方針で、「こども庁は単に産み育てるだけでなく、子どもの社会での問題を通じて、そこに関わる大人の社会を変えていく、大きなパラダイムシフトの一つだ」と訴えている。

    あわせて「こども国債」を新設し、資金調達をすることで教育費の負担を軽減する考え。

    【5】選択的夫婦別姓・同性婚:賛成

    選択的夫婦別姓については賛成の立場。

    同性婚についても、2019年3月の「結婚の自由をすべての人に」訴訟の応援イベントで支持を表明している。

    Contact Yuto Chiba at yuto.chiba@buzzfeed.com.

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